幸せの方程式!?あなたは否定?肯定?

下記のような話を皆さん信じられますか?
・花粉症の人は完全主義者。直すには“よいかげん”が大切。
・“ありがとう”の力でがん細胞がなくなる。
・人生の出来事を否定的にとらえる人は病気になりやすい。
(すべての出来事を肯定的に捉える人には神様は微笑む)
・熱が39度以上でも解熱剤を飲んではいけない。高熱はがん細胞を一掃する。
・“笑い”によって免疫力を高めることが出来る。
(神経痛、リューマチの人の共通項は”笑わない人“。)

まずは、“なぜ”と聞きたくなりませんか?
「宇宙を味方にする方程式」(小林正観著・2016.12月・第29刷発行、致知出版社)を致知メルマガで“「うれしい」「楽しい」「幸せ」の本、肩の凝らない本“として紹介されていたので興味半分で読んだ。小林氏は、年間10万kmを移動、300回講演や茶話会に呼ばれる人気者らしい。小林氏の人生論は

目の前にあるものをただ黙って(肯定的に)受け入れて、愚痴や泣き言を言わないで淡々と笑顔で乗り越えていく。それが人生のテーマ」

ということ。冒頭の話に関して「なぜ」と聞く人は「どこかに否定をする気持ちがあるのでは」、「否定してもそこから何も生まれない」と。自分の人生のすべての出来事を否定的に論証し、否定的に評価している人は、「生きているのがそんなにつらいんだったら早く死んじゃいましょうね」と体が反応するのだと言う。

もう一つ、“なぜ”と聞きたくなる宇宙の法則、「トイレを綺麗にする人はお金に困らない」。そして「お金と仕事の問題は、“掃除”をしていればなくなってしまう。体と健康の問題は“笑って”いればいい。人間関係については、感謝、”ありがとう“を言っておればいい」、「本当の幸せの極というのは、何事も起きないこと。特別なことが何も起きていないというのが、ものすごく特別なこと」。

さて皆さん、「そんなこと信じられない」と言うか、「そうだ、常に笑いと感謝の心をもって生きていこう」と肯定的に捉えるか、どちらを選びますか?

逃げられない世代(現20~30歳代)

元通産官僚で現在30歳後半の宇佐美典也氏が「逃げられない世代」(新潮新書、2018.6刊)を出版している。サブタイトルは「日本型”先送り”システムの限界」で帯封には“2036年完全崩壊(年金、保険、財政赤字から安全保障まで)”とのショッキングな文言が気になり、購入した。
イデオロギーに偏ることなく、中立的に今の日本を見て、将来の日本を考えたいが、書店に並ぶのはどちらかに偏向する本ばかりなのが、この本を出版した理由だとか。そして、先送りした財政問題など、にっちもさっちもいかない状態になるのが2036年、その時に最も被害を受けるのが現在の20~30代で、宇佐美氏も当事者ということで、切実な問題ととらえ、出版の動機となった由。
社会保障と安全保障の2大課題に関して、現状の先送り政治構造を分析し、今のままでは2036年に問題が顕在化、先送り不可となり、その時現役世帯である現在20~30代の人が老後に向けて被害を直接受けることになるとの問題提起だ。その上で、問題を政治に求めるのではなく自らのものと捉え、「我々はどのようなスタンスでキャリア形成を考え社会に参画するのか」考えていかなければならないと提言している。

政治の世界は、「選挙でいかに勝つか、勝てるか」が第一義のため、中長期的な課題に関してなかなか手が打てない。代表例として「消費税」や「税と社会保障の一体改革」に見られるように先送り構造が当たり前となり、今後ともこの先送りシステムが解消する見込みもない。「シルバー・デモクラシー」との言葉があるように、選挙の勝ち負けを大きく左右する高齢者への気配りで社会保障にも手が付けられない状態は続く。宇佐美氏は「低金利環境が財政赤字を許容し、社会保障関係費の膨張が財政赤字を拡大させ、拡大しきった財政赤字を金融緩和が呑み込む、という三位一体の関係で社会保障制度の問題解決を先送りしていく構図だと言う。社会保障制度は国民が相互に支えあうシステムであり、人口構成の変化が制度改革に直結する。現在は、高齢化した団塊世代(1947~1951生まれ1028万人)を、団塊ジュニア世代(1971~1975生まれ984万人)が支えてくれているが、団塊ジュニアが高齢化した際、次の世代に人口の塊がなく、問題の先送りが出来なくなる。国債残高、政府債務、社会保障費の伸びなどを考えれば、限界点は20年後に来ると宇佐美氏は言う。金利上昇に伴う利払い増や、株価ダウンによるGPIF運用の年金予備費の減少などが起これば、もっと早く限界が来る。
安全保障に関しても、今はGDPでも世界3位で存在感はあるが、中国がいずれ突出し、インド、インドネシア、ブラジルなどが猛追してくる。エネルギー、食材などの自給率の低い日本は自由貿易体制を堅持することが生命線だが、世界における日本のプレゼンスが弱くなると、世界に対する指導力の衰えが懸念される。さらにはアジアでのポジションが変わり、米国が日本との同盟関係を解消する可能性にも言及する。

金融緩和の出口論議はまだ時期早尚とのことで議論されていない(議論することさえ怖い?)が、いずれ出口が来るのは必定。完完全崩壊が2036年か、それとももっと早いのか、遅いのかは分からないが、宇佐美氏の分析は非常に分かりやすい。平均寿命が今以上に伸びることを考えると親も国も会社も積極的に守ってくれない65歳~74歳の期間の生き方を考えねばならないと宇佐美氏は言う。人生のステップが「教育→労働→引退(老後)」から「教育→労働→自活→引退」とならざるを得ず、現在30歳代以前の若い人たちは、65歳~74歳の間“自活”できるよう、若いときからスキル、ブランドを磨くことを忘れてはならないと説く。20年後世の中は予想もできない変革が起こる可能性は大きい。孫の時代が心配だ。

 

名刺にFAX番号は日本だけ!?

日本は「デジタル技術・革命」で遅れが目立つとの記事が最近とみに目立つ。16日の日経5面コラム「経営の視点」では“AI時代の事業変革”(編集委員関口和一)と題して、日本の遅れが指摘されている。企業の国際戦略を研究するグローバルビジネス学会(丹羽宇一郎会長)がこの7月に開いたシンポジウムでもAIを経営に生かせない日本企業の課題が浮き彫りになったという。AIが遅ればせながら日本で大きな話題になったのは2年ほど前から。日経に“AI”の文字が登場した回数で言うと、2015年約230件、16年は約1300件、17年は約2200件、今年は3000件を超す勢いとなっているそうだ。アマゾンやグーグルのAIの広がりに加えて、16年度に政府が制定した「第五期科学技術基本計画」で初めてAIやロボットを戦略分野に掲げたことでメディアも取り上げるようになったと分析している(2013年制定の第四期計画では、IPS細胞などを重点分野に挙げ。”AI”のAの字も考えていなかった。40年前の第五世代コンピューターや、10年前の情報大航海プロジェクトなどの国策の失敗の影響でAIはタブー視?)。ところが、世界ではこの間にクラウドやスマートフォン、画像センサー、自動運転技術などの技術が急速に進化し、それら技術を上手に取り入れたのが米IT企業だった。そしてAIの広がりは米国にとどまらず、フランスでのAIベンチャーの育成、イスラエルでのスタートアップ企業年間800社の誕生、ノルウェーでは原油の掘削や流通をビッグデータで効率化する取り組みが進む。
関口編集委員は、日本の遅れは、アナログ時代の成功体験が新しい挑戦に消極的にさせているのではと指摘する。経営者が、身近な仕事の仕方から改め、タブーに挑戦することから始めることを進める。身近な例では、現場ではFAXできた情報の手入力が今も続く。海外の先進企業の名刺にはファックス番号はなく、先進国で使っているのはもはや日本くらいだと言う。ソーシャルメディアを伝達ツールにしている企業もまれだとの意見にもうなずける。
確かに最近、新聞にも毎日のようにAI関連の記事が目立つようになってきた。18日の日経1面には、「AI依存どこまで」の記事で、香港のベンチャーのAIシステムが米国FRB議長のパウエル氏の記者会見をにらみ、パウエル氏の発言に対し、その表情から嫌悪、怒り、驚き、中立を読み取る実験を紹介している。経済予測に役立つこのような情報はヘッジファンドに高く売れるそうだ。野村證券も黒田日銀総裁の表情を分析しているという。これが実用化されれば、うそ発見器以上の効果を示すものとなると思われるが、怖さも感じる。例えば国会で使えば大混乱になる?
同じ日の朝日新聞では、「日本のロボット・AI研究開発はジェンダーバイアスを助長している。なぜ社会は問題視しないのか」との指摘がEUや米国の専門家から出ていることを国立情報学研究所の新井紀子教授が述べている。彼らがその例として挙げたのが「受付嬢ロボット」。東京オリンピック・パラリンピックを目指して官・民・学こぞって「おもてなし」ロボットの開発に力を注ぐが、「受付という労働を担う人=従順そうで美しい風貌の若い女性」というステレオタイプを許容し、ジェンダーバイアスを助長しているという。AIに学習させる場合にこのようなバイアスが入ると、多様な人々が互いに違いを受け入れ、共に生きる「包摂型社会」を目座す上では容認しがたいとの考え方だ。22日の日経1面でも「五輪が変える日本」で、警備システムの精度や、交通機関の混雑解消などの利便性向上、外国語など多方面にわたってAIを活用し、日本社会の変化に向けた意識改革、意識付けを行い、金額には換算できない未来へのレガシーになることを期待している。北京では配車システムの普及で流しのタクシーを探すのに苦労していると聞く。キャッシュレス化では日本は周回遅れと言われる。失敗・トラブルに対する過敏な対応など文化の違いはあるにしても変化に対する挑戦をしないと生産性向上競争でも世界の進歩に取り残される。官民学一体となった積極的な取り組みを期待したい。

冲中一郎