「組織・風土改革2012」カテゴリーアーカイブ

「不易流行」を考えてみよう

「致知2013.1号」のテーマは“不易流行”だ。総リード文からその意味を考えてみる。

「不易」とは時代がいくら変わっても不変なもの、「流行」とは時と共に移り変わっていくもの。ちなみに日本には200年以上続く会社が3000社あるそうだ。韓国はゼロ、中国は9社と言う。当号にも室町時代、京都の地で発祥し、5百年近い歴史を刻んできた「裏千家」前家元と「虎屋」社長の対談記事がある。リード文では、「何百年も続く老舗には共通のものがあるように思える。一つは「創業の理念」を大事にしていること。その時代その時代のトップが常に理念に命を吹き込み、その理念を核に時代の変化を先取りしている。二つは情熱である。永続企業は社長から社員の末端までが目標に向け、情熱を共有している。三つは謙虚。慢心、傲慢こそ企業発展の妨げになることを熟知し、きつく戒めている。四つは誠実。誠のない企業が発展したためしはない。いずれも不易の基を成すものである。その不易を順守していくところに生命の維持発展がある。」

さらに、「ローマは質実剛健の風や信仰心、勇気、礼節、婦徳といったローマたらしめているものを守ろうとする意識が薄れて滅びたと言う。日本はどうか。日本を日本たらしめている不易を守ろうとしているだろうか」と問題提起をする。

日本を日本たらしめている「日本の誇り」「日本人の誇り」とは何か?東日本大震災で世界から評価された日本人の美質もさることながら、近現代史における日本人の活躍など、もっと教育に取り入れていくべきではないだろうか。当ブログでも、今後とも「日本人の誇り」と言える話題は積極的に掲載していきたいと思う。

企業においても、なんでも流行に飛びつくのではなく、「不易」と「流行」を切り分け、「不易」なもの(企業理念・文化・風土)を情熱を持って守り抜くことが、グローバル時代に生き続ける鍵になるものと思う。

主人は無理を言うものと知れ(豊臣秀吉)

以前当ブログでも紹介(http://jasipa.jp/blog-entry/7389#t)した元トリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長吉越浩一郎氏が、また本を出版された。“必ず「頭角を現す社員」45のルール”(三笠書房)だ。「残業ゼロ」や、「がんばるタイム(毎日2時間は私語やオフィス内立ち歩き禁止)」、「毎日早朝会議(課題をもち寄り、即断即決)」などの施策を社内で徹底され、19年間増収増益を達成された実績が吉越氏の主張に大きな重みを付けている。社長退任後も、講演などで大活躍中だ(ご本人は講演依頼があまり来ないように1講演100万円強の値をつけたが効果なしとも云われていた)。

興味ある話として、例えば「毎日早朝会議」の徹底に関する苦労話があった。「早朝会議」の導入を決めたとする。しかし、定時の9時ではなく8時に出勤してくださいと言っても、社員が素直に従うわけがないと言う。課長以上で実施するにしても不満タラタラ。トリンプで早朝会議を軌道に乗せるのに丸1年かかったそうだ。大抵の場合そこに至る前にやめてしまう。トリンプの早朝会議を見習いたいと1000人以上に方が見学に来られたが、実際に導入された例はほんの数えるほど。やり遂げられなかった数々の会社は、おそらくどこかの段階で一息つき、羽根を休めていたところで抵抗勢力に押し切られたのだろうと言う。仕事も、もちろん会社風土の改革も、とどまることがなく、絶え間なく続くもので、一息つけるものではないと吉越氏は言う。トップの強い意志と信念に基づく継続的な行動が無ければ風土は変わらない。

「プロの誇り」より「プロの自覚」を持てとも言う。プロは結果を出すこと。結果がでなければ何もしなかったのと同じ。「自分はこんなに努力したが結果が出なかった」と努力を誇示する人もいるが、これは言い訳に過ぎない。

「がんばるタイム」など、仕事に集中できる環境つくりに精を出された吉越氏は、「問答無用で朝型人間になれ」と言う。そして「残業は、三流の社員がやること」とバッサリ斬り捨てる。

「いい上司の条件」として、‘部下に好かれようとしない’、‘部下に無理難題を押し付ける’、‘常に挑戦し、成功して結果を出す’を挙げる。上司は無化に無理を言う。部下を育てようとするからだ。部下は其の無理を何とかやり遂げて見せ、その先に成功がついてくるから、努力が報われ、上司を尊敬する。結果として「好かれる上司」になる。織田信長に無理難題を言い渡され、それに見事に応えてきた秀吉が、時を経て無理難題をいう立場になった時「主人は無理を言うものと知れ」といったそうだ。

上司と部下の関係において、規律のある、緊張感ある関係を作り上げ、「部下は上司の命令を完全にやりきる」ことで、自分も成長でき、上司との信頼関係も深まる。そして、このような関係の元、継続的な取り組みによって、組織風土改革も可能となるということだろう。

客があふれかえる居酒屋!!!

日経ビジネス(インターネット)の記事で、こんなタイトルの記事があった(http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121019/238306/)。ここ数年、居酒屋のデフレぶりがすさまじく、つぶれていく居酒屋も多い中で、一人あたりの単価が通常の倍以上(4000円前後)で、しかも客であふれている居酒屋チェーンがあるとの出だしだ。その名は、宮崎産地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」を使用した料理をメインに提供する居酒屋“塚田農場”だ。私も新宿の店に行ったことがあり、印象深かったため、一気に記事を読んだ。

社長は、まだ40歳を超したばかりの米山久氏。2004年に八王子に「じとっこ」を使う「我が家」を開店。2006年には、宮崎県日南市に自社養鶏場を開設。現在様々なブランドで128店舗を運営。運営の基本は「生産者の気持ちと苦労を消費者に伝え、お金儲けではなく、事業に関わる全ての人たちをハッピーにすること」と言う。生産者と消費者をつなげる、これが“塚田農場”のビジネスモデルだ。生産者のリアルを感ずるために、新人はもちろん、役員、事業部長、店長も現場に送り込み、生産者との交流を図ることとしている。掴んだリアルがパート主体の店員にも浸透していく。それが店舗でのサプライズにつながっていく。

この店では、アルバイトスタッフの裁量で、客一人当たり400円まで自由にサービスしてよいとのルールがあるそうだ。例えば「じとっこ炭火焼」を食べ終わったら、「炭火焼の脂がおいしく、その脂で焼き飯作っちゃいました」と、持ってくる。ゆっくり炭火焼を食べていると「冷めちゃいましたね。ポン酢をつけると冷めても、タタキ風においしく食べられますよ」とポン酢を持ってくる。こんな風なサービスを受けると、お客はリピーターになるのも分かる。リピーター率50~70%とか。

接客店員の7割がアルバイトだそうだ。研修制度も充実しているが、研修では「お客様と生産者のためのお店であり、それが世の中のためになる」との基本を教え、自ら考える研修だそうだ。100%満足に出来ているのは錦糸町店だけだが、他の店でも他店との差別化は出来ている。たしかに、新宿店に行った時、気軽に接客スタッフが話しかけ、雰囲気が良かったとの記憶がある。

先日「新幹線お掃除の天使たち(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/11/3)」を紹介したが、パートの方やアルバイトの方々も、明確な企業方針の元で「喜び」や「感動」に生きがいを感ずれば、いい仕事が出来、結果として、処遇も含めていい循環が出来ることを示してくれている。社員が仕事に生きがいを持って働くことが出来ないはずがないと思うが如何?