「顧客サービス2011」カテゴリーアーカイブ

既存客を失った映画館???

メルマガ(日経MJ兵法経営2011.11.1)に経営の失敗事例が載っていました。東宝シネマズの7地方都市で今春から試験実施していた映画鑑賞料金の値下げを11月末で打ち切ると発表した途端、入場者数が減ったという話です。一般入場券は値下げ〔1800円→1500円〕したが、レディースデイ割引(水曜日1000円)やレイトショー割引(20時以降1200円)を中止するという内容だ。要は、レディースデイやレイトショーを活用する映画大好き人間にとっては値上げになったと言うことなのだろう。

「新規顧客を増やしたいために一般料金を値下げする」というのは、経営者としての思いとしては理解できる。しかし、その施策として、利用料金の上げ下げだけでは、うまくない。映画館独自のサービス(付加価値)を如何にあげるか、既存顧客にも納得的な施策も合わせて行わなければ、これまで割引料金を利用してきた熱烈な映画ファン客を失うことになる。私も「シニア割引(1000円)」を利用して、東宝シネマズなどを時々利用させてもらっているが、映画館が常にサービス向上に努力している姿は見えてこない。ビデオ店などとの競争はますます激しくなると思われるが・・・。

ともかく、既存顧客に対して、現状のサービスレベル(付加価値)を上げずに価格を上げると逃げられる。新規顧客に対しても、競争の激しい〔レッドオーシャン〕世界では、提供するサービスの価値で勝ち抜く覚悟がなければ、思い通りにはいかないと考えるべきではなかろうか。

折角既存顧客の信頼を得た数少ない社員を、新規顧客を取りたいがために、その顧客からはがすような事はしていないだろうか?顧客の信頼を得る社員を増やし、万全の体制を作るのが最も重要な事で、そうすれば配置変えの自由度も増すことになる。「顧客第一」と言いながら、実行できていない会社が多いと聞く。注意せねば・・・。

いいね!こんなサービスビジネスモデル

昨日の日本経済新聞朝刊1面「膨らむシングル経済(中)」の記事に、急速に事業を伸ばしている牛乳宅配便企業ミルズが紹介されていた。新潟県長岡市で2000年から始めたこの事業を、従来の「早朝に玄関先のボックスに入れる」方式から「昼間に手渡しで配達」方式に変えたそうだ。一人住まいの多い高齢者の見守り役として人気を呼び、今では1都6県で約3万2000人の顧客を抱えているそうだ。今後ますます進む高齢化社会の中で、特に都会ではさらに広がるビジネスモデルと思われる。着想がいいね!

ミルズのホームページを見た。若い社長です。「すべてはお客様のありがとうのために」下記のような「顧客満足度10原則」を設定しています。

  • 1.「お客様への感謝の気持ちを忘れない」
  • 2.「約束を必ず守ること」
  • 3.「礼儀を持って人と接する」
  • 4.「清潔感のある身だしなみであること」
  • 5.「笑顔で明るく元気な挨拶をすること」
  • 6.「出発前に必ずコールレポートを確認」
  • 7.「お届けは一声かけて黙って置いていかないこと」
  • 8.「冷蔵庫から客先まで品質維持、保冷剤100%使用する」
  • 9.「保冷ボックスは100%清潔にすること」
  • 10.「配達車内は完全禁煙すること」

お客様指向サービス経営事例(ホンダ販売店)

本田の販売店「ホンダカーズ中央神奈川」はここ13年間、全国のホンダ販売店の中で顧客満足度日本一に輝いている。昭和44年にホンダを退職して創業した相澤賢二氏は、黙っていても売れた高度成長期を経験したが、ある時期から不眠に悩まされたそうです。「お客様が急に他店にいってしまうのでは・・・」と。悩みぬいて行きついたのは、「お客様のことを良く知らないがためにこんな不安に駆られる」と。お客様が不満を持っているのか、満足されているのか分からない事だった。それで思い立ったのは「葉書アンケート」だった。これを始めて以来13年ホンダ販売店顧客満足度ナンバーワン継続中とのこと。

経営の最重点指針を「お客様から如何に褒められるか」(販売台数ではなく)とした。社員の評価もアンケート結果。頂いたアンケートには社長自らかならず返事を出す。「不満足」と書かれたお客様には飛んでいきお詫びする。葉書の回収率は34%(通常は数%)。

この様な活動で分ったこと。

  • 1:お客様は「自分で決めたい」。営業マンは押しつけではなくアドバイザーとしてお客様が決めるお手伝いをする役目。
  • 2:お客様は「人で決めたい」。笑顔が良くて、人柄が良くて、店内のスタッフの人間関係が何とも良くて、きびきびしていて、・・・。
  • 3:商品知識を100%求めていない。10個中2個程度は答えられなくていい。答えられないものはすぐ調べて、すぐ回答する。その誠意が伝わり、「お客様のお陰で勉強させていただきました」と伝える。「あの営業マンは俺が育ててやった」となれば、一生モノになっていく。

ロイヤリティ(継続的な利用意向)戦略の要は、商品以上に「人」ですね。商品がいくら立派でも、一生モノのお客様にするには「人」しかない!

(チームの底力!ホンダカーズ中央神奈川の「最高のサービスを生む組織の作り方」相澤賢二著、PHP研究所、2011.6.8発行)より