「顧客サービス」カテゴリーアーカイブ

第12回JASIPA経営者サロン実施(28日)

昨年4月から始めた「JASIPA経営者サロン」も12回目を迎えることが出来た。林研修委員長はじめ理事の皆さん方のご協力、忙しい中お時間を割いてご出席いただいた会員の皆さんのご支援のお蔭と心より感謝申し上げたい。欲を言えば、もう少し参加者の広がりが欲しいと思うが、来年度以降、内容を工夫・充実させながら会員の皆様のご期待に沿えるよう頑張りたい。

さて、第12回経営者サロンは、年度末の多忙な時期と重なったせいか、2人のドタキャンもあったが、8名のご参加を頂いた。今回は、私の方から㈱小宮コンサルタンツの小宮一慶社長著作の『社長のための「お客さま第一」の会社のつくり方(2003.1.31刊)』の紹介と、意見交換会を行った。これまでの経営サロンでも何回か議論させて頂いている「顧客満足度」、「お客さま第一」の考え方に関して、小宮氏の豊富なコンサル経験に基づく「お客さま第一」の社風・風土創りをテーマにさせて頂いた。

「お客さま第一」を言葉は違っても企業理念や、会社の方針で掲げている企業は多い。しかし、小宮氏は「真にお客さま視点での商品開発、サービス」になっているか疑問視する。「お客さま第一」と言いながら、内部では「売上至上主義、利益至上主義」管理を第一義にしている。お客様の声を聴くよりも、内部管理に時間をとられる。一人でもお客さまの信頼を裏切る行為があれば、そのお客さまだけではなく多くのお客さまとの取引がなくなる危険性もある中で、如何に日常的に「お客さま第一の風土」を創っていくか。小宮氏は、「電話は3コール以内で取る」「笑顔で挨拶する」「お客様が帰られるときは玄関先までお見送りする」など小さな行動から徹底することを薦める。しかも、経営者が率先して、小さな行動を実践ずる。もちろん、経営トップが、信念を持って「お客様第一」の考え方を社員に納得させる努力をしなければならない。お客様の案件をバーストさせることなどもってのほかだ。

小宮氏は、クレーム対応で会社の価値が決まるとも言う。クレーム対応の3原則として、「直ちに対応する」「上司に報告する」「自分が思っているより100倍大変なことと思って対応する」を挙げる。クレームの重要性を自分で判断するのはもってのほか。プロジェクトの中だけで対応させる(責任を取らせる)ことを基本にするのもダメ。組織全体で精一杯の対応をすることで、クレームをチャンスと出来る。

ほとんどの企業で、「真のお客さま第一の風土」が出来ていないとすると、他社との差別化になる。議論の中でも「会社全体を変えるのは難しい」との意見も出たが、だからこそ、早く取り組み、いち早く風土を創り上げた企業は、お客様の信頼を絶対的なものにできる。JASIPA会員のような中小規模の方がやりやすいとも言える。大規模企業ではより難しい。自動ドアの設置、保守を行っている神奈川ナプコは、毎月の行動計画表に、売り上げ目標ではなく、お客さま第一の行動目標を書かせ、フォローする制度がある。自動ドアの保守を終えた後、周辺の掃除を行うのは当たり前。迅速な行動と丁寧な対応でお客様に感動を与え、お客様が広告塔になってくれていると言う。

後半の意見交換会でも、活発な意見交換が出来た。これからも「お客さま第一」を言い続けたい。

「日本でいちばん大切にしたい会社」著者講演会

1月30日アルカディア市ヶ谷でNN構想首都圏地域会 LLP、東京経営塾共催の講演会が開かれた。ベストセラーになった「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの著者坂本光司法政大学大学院教授の話が勉強になった。一度聞きたいと思っていたら、JASIPA定期交流会(23日)で東京経営塾の田中渉代表取締役にお会いし、たまたま坂本氏の講演があることを教えて頂き、招待して頂き喜んでお邪魔させて頂いた。主催者が開催しておられる「後継者育成塾」の第3回目開設記念大会だった。

坂本教授は、研究室の学生などと、全国の企業調査をされ、これまで7000社に及ぶ企業を訪問調査されていると言う。その成果を学生と一緒に本として出版されている。年に3冊以上は出されている。今年も「なぜ、この会社には人材が殺到するのか(仮名)」(2月下旬)、「さらば下請け企業(仮名)」(4月)、日本でいちばん大切にした会社№4」(6月)、「さらば、価格競争(仮名)」(6月)の出版予定が有るそうだ。3人採用なのに1万人の応募があったり、50数人の会社なのに6割以上が東大院出身の会社などもある。万年筆やメガネ製造販売会社で、高価と思われる商品を扱っているが、ファンが多く利益を継続的に(何十年も)挙げている企業も地方含めて数多くある。坂本教授曰く、「好況・不況に関わらず元気な会社」、「好況時はいいが不況になると利益が出ない会社」、「好況でも不況でも利益が出ない会社」を比率で表すと、以前は2:6:2だったが、最近は2:2:6の比率に変わってきていると言う。最初の2割の元気な会社は、なかなか表には出てこない。農業界でも農協に入っていない会社が元気で、このような人たちは行政に物申すパワーも、必要性もなく、政治に反映されるのは最後の6割の意見(TPPが典型的)が多いと言われる。坂本教授は最初の2割の企業を本や講演会で紹介することによって、他の企業の活性化、ひいては日本の底上げにつなげたいとの思いを持たれている。

総じて、元気のない会社は言い訳が多い。景気・業種・規模・ロケーションなどを言い訳に使うが、その反証事例は数多くあるとして具体的な事例を挙げて説明される。東北の木材会社ではごみ箱が5000~10000円で売れている。豊岡(兵庫)のハンガーメーカーでは1個最低3000円で経営している。元気な会社の共通項として、下記のようなことを挙げられる。

  • 1.正しい経営・人本経営:人を大切にする経営、目の前にいるお客を幸せにする経営
  • 2.非価格競争経営:社員のしつけを大切にする、下請けを大事にする、障害者を大事にする、エコに配慮する・・・。メーカーズシャツ鎌倉、豊橋のスーパー、羽村市のスーパー福島屋・・・。
  • 3.製販一体経営:農業は、自給率が危険領域だから未来のある産業。青森の無農薬リンゴで有名な木村氏は1個250円のリンゴが瞬く間に売り切れる。千葉県香取市の農家では、月4000万円輸出。いずれも農協とは独立。

以下、感動経営、業種分類不可能経営、製販一体経営、社会貢献経営、人財重視経営などを挙げられるが、詳細は坂本教授の本を一度読んで欲しい。「この会社に学べ」といくつかの企業の紹介があったが、香川県さぬき市のシューズメーカー徳武産業、札幌の富士メガネや、当ブログでも紹介した伊奈食品http://jasipa.jp/blog-entry/8368、長野中央タクシーhttp://jasipa.jp/blog-entry/6343、でんかのヤマグチhttp://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/2/22も出された。坂本教授のお話は、理論先行ではなく、実際に訪問されて調査された実績がベースになっているので、迫力もあり、経営者にとっても非常に参考になる話だ。

JR九州が元気だ!

平成24年3月期JR九州は、営業収入対前期比12%増(3328億円)、経常利益対前期比2.3倍の202億円と元気だ。昨年3月3日に新博多駅ビル「JR博多シティ」開業、東日本大震災の直後の3月12日に九州新幹線全線開通など、脚光を浴びる存在になっている。国鉄民営化後25年経った今、民営化後の軌跡を現会長の石原進氏が語っている(致知2012.10)。

面白いと言うか、やっぱりそうだったのかと思ったのは、石原氏がズバリ言う「国鉄時代を反面教師として、国鉄の頃やらなかったことをすべてやってきた」との発言。「国鉄時代はいつも労使問題に追われ、政治家とお役所ばかり見てお客様の存在がほとんど視界に入ってなかった」と言う。経営管理、総務畑を歩んだ方の発言だ。

石原氏が社長に就任したのが10年前。その頃は九州にも縦断道、横断道が完成し、時間・価格面で高速道路との競争が激しく、JR九州としても危機的な状況にあったそうだ。そこで、鉄道のスピードアップや、車両の改善などのハード面に加えて、サービス強化の取り組みを強化した。「新・感・動・作戦」と称した、お客様への感謝の気持ちをベースにしたサービスの提供と、お客さまの声を商品や施策に反映する二点に重点を置いた活動の展開だ。サービスの事象はすべて現場で起こることを念頭に、現場からの意見が社内LANを通じて挙げられ、改善スピードが上がる施策をうった。自分が出した提案が即座に実施されると、良い循環で次々に提案が上がってくるようになる。先に「クロネコヤマトのDNA」をブログにUPした(http://jasipa.jp/blog-entry/7953)が、現場主義を貫き通す姿勢は同じだ。

石原氏は「社員の意識を高め、創意工夫の湧き出る職場にすることが,会社を伸ばすことに繋がる」と断言する。さらに、「根底で人に対する思いやりや愛情がなければ、ビジョンに対する支持も得にくく、リーダーに対する尊敬、信頼は得られない。リーダーは常に心を養い、高めていく努力が求められる」と言う。「社員を認めて、任せて、褒める」ことが、人の育成にとって一番大事」とも言う。吉田松陰の「至誠通天(誠実な心を持って、最後まで貫けば絶対に世の中は動く)」を座右の銘とする石原氏らしい発言だ。

現社長の唐池恒二氏が「世界から集客!JR九州・唐池恒二のお客さまをわくわくさせる発想術」という本を昨年出版している。全国からお客さまを呼ぶための観光列車・デザイン列車の企画にいち早く着手、鉄道ビジネスの新たな成長分野を、常にお客さま目線で発想、実現し続けてきた過程が良くわかる本のようだ。「蒸気機関車“あそBOY”の復活」、」、「全国に知れ渡った優雅な観光列車“ゆふいんの森”の発案」、「高速船“ビートル”が走る、博多釜山の国際航路の開拓」、「東京・赤坂で超繁盛中の居酒屋新業態“うまや”ブランドの開発」や「九州一周豪華列車」などなど、お客さまを喜ばせ続けるアイデアを次から次へと打ち出している。

民営化前は26000人いた職員が、事業の多角化でグループ会社34社を持つ今のグループで9500人となり、しかも1000億の赤字が、今は200億の黒字。経営次第で、会社はこんなにも変われるものなんだと認識を新たにした。頑張れ!JR九州!