「鏡に映る自分が分かる魚」がいるってほんと⁈


京都にいる友人から、こんな話を教えてもらいました。大阪市立大学の幸田正典教授の研究グループが、ドイツの研究所などとの共同研究で明らかにしたとの事。2月8日に米国の科学専門誌「PLOSBIOLOGY」のオンライン版に掲載され、以降NHKはじめ各局がニュースで報じられている。「鏡像自己認知」はこれまで、人以外では、チンパンジー、イルカ、象、カラスの仲間などで知られてきたが、今回は魚でははじめて「ホンソメワケベラ」で確認された。「ホンソメワケベラ」は昨年6月「NHKのダーウインが来た」で放映され、「魚でも生きるための顧客戦略が?!」とのタイトルで私のブログで報じた魚だ(HTTPS://JASIPA.JP/OKINAKA/ARCHIVES/8534)。

ホンソメワケベラの実験は、ホンソメワケベラの体についた寄生虫を何かにこすりつけて取ろうとする特性を利用した実験だ。自分では気づかない体の一部分(喉のあたり)に寄生虫に似た茶色の印をつける。そしてそれを水槽の中に立てた鏡で見せ、どんな行動をするか観察した(同じような鏡像認知テストは、チンパンジーや、象、カラスでも実施されているそうだ)。喉に印をつけないとき、透明な印をつけたとき、茶色の印をつけたが鏡がないときは、喉をこする動作はなく、茶色印を鏡で見たときだけ自分の喉を水槽の底にこすりつける動作をするとのことだ(8個体中7個体でこの現象が起きるが、他の場合は全く起きない)。水槽の底でこすった後、鏡でとれたかどうかを確認する行為もするらしい。

魚類の記憶力や認知能力は低いと考えられてきたが、これらの認知の過程はチンパンジー、ゾウ、カラスの仲間の場合と大変よく似ていることから、鏡像認知の様式もこれらほ乳類や鳥類と似ていると考えられ、この類似性は、物事の判断や思考プロセスが脊椎動物で共通していることを示唆しているのではないかと言う。寺田先生の研究室では、相手の考えを理解する能力、さらに共感性といったこれまでは想像もされなかった能力も次々と魚類で明らかにされつつあるそうだ。NHKの“ダーウィンが来た”でのホンソメワケベラの顧客戦略に驚いたが、当研究結果を聞き、合点がいった。
当報告書の詳しい内容については、大阪市立大学の広報、「“鏡に映る自分”が分かる魚を初めて確認!~世界の常識を覆す大発見」(https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2018/190208-1)をご覧ください。

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