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防衛省でもワクチン接種予約システムでトラブル!

これまで多数のシステムを担当してきたのものとして信じられないことが起きる。「コロナワクチンの接種を加速せよ」との総理の突然の指示に対して、東京・大阪に大規模接種会場を設定することになり、5月24日に接種開始するための予約システムに関することだ。

朝日新聞と毎日新聞は、実在しない接種券番号でも予約できることを、実際に予約して試した記事(すぐ予約キャンセル)を掲載し、岸防衛大臣は「悪質な行為で、極めて遺憾だ」として厳重に抗議した。安倍前総理も「妨害愉快犯だ」と厳しく非難したという。

防衛省は、接種時に各個人に配布された接種券と照合するので問題はないと言っているらしい。そしてこの件でのシステム改修はしないと言っていると聞く。間違いに気づかず会場に行って接種できずに帰らざるを得ない人にどう対処するのだろう。特に高齢者対象のため心配になる。

発注者は防衛省、受注者はIT企業。一般的には、発注仕様に書かれていない時は防衛省責任だが、IT企業にも常識的なことには一部責任を負うのが一般的だ(仕様に問題があれば発注者に確認する)。しかし、「防衛省は仕様には間違いがなく、間違って入力しても仕方ない」と言っているに等しい。しかし、その場合でも、迷惑を被る人がいるのだから、予約開始の際に対処方法を一般に告知すべきであろう。朝日、毎日の記事がでてから、「入力には注意」を告知しているが、あまり重大事とは思っていなかったということかもしれない。

毎日、朝日新聞はシステムチェックの結果、架空の接種番号でも入力できることを確認し記事にした。いち早く国民に注意を喚起する意味で報道することには意味があったのではとも思う。防衛相も、毎日、朝日新聞に抗議するより前に、すでに予約が進んでいる最中のことでもあり、国民に注意を促すことを優先すべきだったと思う。朝日新聞。毎日新聞の抗議に対する回答に防衛省の反応は今の所聞かれない。

受注したIT企業の立場で考えると、接種開始されてから大騒ぎになるより、いち早く問題が明らかになり、ほっとしているのではと思う。

自治体との連携が出来ず、気付いていながらチェックが出来なかったのか、全く気付いていなかったのか、前者であれば、事前通告すると思うが、後者であれば、お粗末すぎると言われても仕方がない。デジタル庁創設で、早期にこのような汚名を回復できることを切に願う。

以上は昨日書いたものだが、今朝のTVワイドショーで中山副大臣が登板し下記のようなことを言われていた。

・昨日ニュースとなった、正常に地区と接種券番号、誕生日を入力しても受け付けない問題が東京23区で何件か発覚し、東京新聞が報道したが、メディアの指摘に関しては真摯に受け止め対処する(渋谷区の女性は地区名を変えて入力すれば予約できたそうだが、会場で受け付けられなかったらと困惑)。

・架空の接種兼番号でも登録されてしまう件に関しては、サイバー攻撃による個人情報流出を避けるために致し方ないことでシステム改修はしない。

世界に比して遅れているワクチン接種加速のための突貫工事でやむを得ない面もあると思うが、政争・論争に持ち込まず、素直に国民に向けた発信を行い、国民の納得のもと大規模接種がいち早く正常に行われることを期待したい。

孫、ひ孫時代まで日本であり続けられるか?

スウェーデンの16歳の女子高校生グレタ・トゥンベリさんの地球温暖化に対する行動が話題となっている。先日の、国連「気候行動サミット」での発言は多くの反響を呼んでいる(トランプやプーチンは批判めいた発言をしているが)。1年前にたった1人で「Fridays For Future」と名付けた運動を始め、気候変動への緊急対策を求め、毎週金曜日に学校を休み国会議事堂の前に座り込んだ。その呼びかけが、世界中の若者へと広がり、金曜に学校へ行く代わりにデモに参加する学生が増え続けている。そして9月の国連演説当日、150か国・地域で400万人以上の若者がデモに参加したとのことだ(日本の若者は5000人以下)。グレタさんは、スピーチで “How dare you!”(よくもそんなことを!)という表現を繰り返し用いて、各国の首脳らに温暖化対策の行動に出るよう強く訴えた。

10月2日の日経朝刊19面のコラム「大機小機」で「How Dare You!」のタイトルでグレタさんの活動を紹介している。その中で日本の取り組み姿勢に懸念を表している。国連でも、アメリカと並んで登壇できず、77か国が2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると約束したが日本はその中に含まれていない。コラム氏は言う。「我が国の政府も経済界も、地球環境維持に必要な経済構造転換への痛みに立ち向かう勇気がないのだろう」と。私も最近知ったことだが、知り合いの経営者の胸元のSDG‘sの17色のリングからなるピンバッジが目についた。SDG’sは15年9月の国連総会会議で定められ、17の目標を30年までに達成することになっているが、その13番目は「気候変動とその影響に立ち向かうため緊急対策をとる」だ。コラムでは「最近訪英した日本の経済団体は、参加者がみなこのピンバッジをしていた。先方から”かって日本人は眼鏡をかけて首からカメラをぶら下げていたが、今では具体的行動はなにもしないのにSDG’sのピンバッジをファッションのようにつけている“と皮肉られた」と言う。コラムの最後に「このような日本の若者にグレタさんは”自分たちの子孫が絶滅の淵にいることがわからないの?“と聞くだろう」で締めている。
日本では臨時国会が始まり、首相の施政方針演説があったが、海洋プラスチックごみの話はあったが、気候温暖化に関する言及はなかった。
最近、本屋の棚には、日本の将来を心配する本が並んでいる。その中で、米国の投資家ジム・ロジャーズの「日本への警告」(2019,7刊、講談社+α文庫)とゴールドマン・サックス出身で現在小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソンの「国運の分岐点」(2019刊、講談社+α文庫)を読んだ。いずれも、数十年後には日本は中国の属国になると言い切っている。世界でも最も急激な人口減少の中で強気の経済優先主義で、財政危機を抱えている日本に、昨年8月日本株をすべて引き上げたジム・ロジャーズは、「私が日本に住む10歳の子供であれば、一刻も早く日本に飛び出すことを考える」と言う。アトキンソンは、かなりの確度で来ると言われる東京直下地震、南海トラフ地震が実際に来れば、家屋の倒壊やインフラ損壊などの直接被害額が220兆円(政府見積もり)、間接被害も含めると地震発生後20年間で2200兆円近く(公益社団法人土木学会試算)に達すると言う。こうなると借金漬けの日本独自での復興は不可能で、海外に頼るしかなく、助けられる国はアメリカファーストの米国ではなく中国しかないのではと危惧する。
両氏が危惧するのは、50年後、100年後の日本のグランドデザインの欠如だ。政治の世界では、体制維持が第一義のため、選挙対策としての近未来しか議論せず、将来を考えた抜本的な改革は議論も含めて先送り状態だ。国会議論で首相の「今後10年間、消費税UPは必要ない」の根拠を問うも、根拠の説明は当然できない。1党多弱の安定政権の今こそ、100年後のグランドデザインに関する真剣な議論が必要だと思うが・・・。両氏の「日本の中国の属国化」を笑い飛ばすのではく、日本を愛する両氏の警告と受け止め、孫、ひ孫の時代も日本のままでいられるのか、問題先送りの政治を変えねばならないと強く思う。

逃げられない世代(現20~30歳代)

元通産官僚で現在30歳後半の宇佐美典也氏が「逃げられない世代」(新潮新書、2018.6刊)を出版している。サブタイトルは「日本型”先送り”システムの限界」で帯封には“2036年完全崩壊(年金、保険、財政赤字から安全保障まで)”とのショッキングな文言が気になり、購入した。
イデオロギーに偏ることなく、中立的に今の日本を見て、将来の日本を考えたいが、書店に並ぶのはどちらかに偏向する本ばかりなのが、この本を出版した理由だとか。そして、先送りした財政問題など、にっちもさっちもいかない状態になるのが2036年、その時に最も被害を受けるのが現在の20~30代で、宇佐美氏も当事者ということで、切実な問題ととらえ、出版の動機となった由。
社会保障と安全保障の2大課題に関して、現状の先送り政治構造を分析し、今のままでは2036年に問題が顕在化、先送り不可となり、その時現役世帯である現在20~30代の人が老後に向けて被害を直接受けることになるとの問題提起だ。その上で、問題を政治に求めるのではなく自らのものと捉え、「我々はどのようなスタンスでキャリア形成を考え社会に参画するのか」考えていかなければならないと提言している。

政治の世界は、「選挙でいかに勝つか、勝てるか」が第一義のため、中長期的な課題に関してなかなか手が打てない。代表例として「消費税」や「税と社会保障の一体改革」に見られるように先送り構造が当たり前となり、今後ともこの先送りシステムが解消する見込みもない。「シルバー・デモクラシー」との言葉があるように、選挙の勝ち負けを大きく左右する高齢者への気配りで社会保障にも手が付けられない状態は続く。宇佐美氏は「低金利環境が財政赤字を許容し、社会保障関係費の膨張が財政赤字を拡大させ、拡大しきった財政赤字を金融緩和が呑み込む、という三位一体の関係で社会保障制度の問題解決を先送りしていく構図だと言う。社会保障制度は国民が相互に支えあうシステムであり、人口構成の変化が制度改革に直結する。現在は、高齢化した団塊世代(1947~1951生まれ1028万人)を、団塊ジュニア世代(1971~1975生まれ984万人)が支えてくれているが、団塊ジュニアが高齢化した際、次の世代に人口の塊がなく、問題の先送りが出来なくなる。国債残高、政府債務、社会保障費の伸びなどを考えれば、限界点は20年後に来ると宇佐美氏は言う。金利上昇に伴う利払い増や、株価ダウンによるGPIF運用の年金予備費の減少などが起これば、もっと早く限界が来る。
安全保障に関しても、今はGDPでも世界3位で存在感はあるが、中国がいずれ突出し、インド、インドネシア、ブラジルなどが猛追してくる。エネルギー、食材などの自給率の低い日本は自由貿易体制を堅持することが生命線だが、世界における日本のプレゼンスが弱くなると、世界に対する指導力の衰えが懸念される。さらにはアジアでのポジションが変わり、米国が日本との同盟関係を解消する可能性にも言及する。

金融緩和の出口論議はまだ時期早尚とのことで議論されていない(議論することさえ怖い?)が、いずれ出口が来るのは必定。完完全崩壊が2036年か、それとももっと早いのか、遅いのかは分からないが、宇佐美氏の分析は非常に分かりやすい。平均寿命が今以上に伸びることを考えると親も国も会社も積極的に守ってくれない65歳~74歳の期間の生き方を考えねばならないと宇佐美氏は言う。人生のステップが「教育→労働→引退(老後)」から「教育→労働→自活→引退」とならざるを得ず、現在30歳代以前の若い人たちは、65歳~74歳の間“自活”できるよう、若いときからスキル、ブランドを磨くことを忘れてはならないと説く。20年後世の中は予想もできない変革が起こる可能性は大きい。孫の時代が心配だ。