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「ほめ達」(ほめる達人検定)

今年の1月に当ブログでも紹介(http://jasipa.jp/blog-entry/7178)した「ほめる達人検定」の話が今朝の日経1面コラム「春秋」にも掲載されていた(前回も同じく日経の連載記事「C世代に駆ける」より)。

「一般的には短所と見られる以下の言葉を、長所に言い換えてみてください。気が弱い、空気が読めない、ケチ、決断力がない、わがまま、でしゃばり、気まぐれ。ある資格検定試験で実際に出された問題だと」から始まる。この資格検定が、2年前から大阪の会社C’sの西村貴好社長が始めた「ほめる達人検定」。4300名以上がすでに合格したそうだ。今では、大阪府(橋下知事時代)からの調査依頼や、全国の商工会議所、生損保会社などの企業、子育て関連団体など多数から講演依頼があるとか。前記の答えは、このコラムにはないが、西村さんの回答例として下記のような答えがあった。

  • 気が弱い→心がやさしい、思いやりがある、周りの人の気持ちがよくわかる
  • 空気が読めない→場の空気をガラッと変えられる、自分の中に強さを持っている、信念がある
  • 優柔不断→常に最善の策を考え続ける、発想がやわらかい、色々な場面に対応できる
  • 中年太り→優しさのタンクを持っている、人にも優しい(自分に厳しくないので)
  • ケチ→自分にとって何が大切かわかっている、
  • でしゃばり→世話好き、リーダーシップがある

心にもない「ほめ言葉」、つまり「お世辞」は、相手に簡単に見抜かれる。「ほめる」ことは、相手の良い点を発見し、正しく評価することから始まる。それが〝自分を見てくれている〟という信頼になる

発達脳科学の権威、医学博士の大井静雄先生は、脳の働きの解説を

「大脳辺縁系というのは感情をコントロールする場所で、ほめることが作用して回路をより活発に、効果的にまわすようになる。 ほめられて快感を受け取ると、もう一度感じるための行動を起こすように回路が出来ていく。特に3歳くらいまでに繰り返すと、脳がどんどん発達しやる気を育てることになる。 また、ほめられながら記憶したことは忘れにくい。成長してからでもほめる効果は大きい。子供は発達し、大人は成熟する。」と言う。7歳の男の子で特技は英語、小学一年生にして英検3級、スピーチもスラスラという実例があるそうだ。この家庭では、英語に触れる環境つくりもあるが、それ以上に褒めることを心がけているとのこと。

西村氏は、ほめる言葉「3S」を提案する。「すごい」「さすが」「素晴らしい」。人の長所をみつめる〝眼〟を開き、自然にほめ言葉が口をつくようでありたい。「ほめる人」が「育てる人」、この言葉も、「ほめる」に心がこもれば、真実ではないだろうか。

日経「春秋」では、NHKの討論版組で一人の参加者からでた「ポジだし」という造語も紹介されている。

非難やあら探しなど「ダメだし」が幅を利かせる議論はやめ、皆でポジティブ、つまり前向きな改善策に知恵を絞り、行動する方が大事との発想だ。新入社員たちがオフィス街を集い歩く季節が来た。右肩上がりの時代に比べ若い人たちの危機感は強い。その発想や意欲を前向きに生かすのは年長者の役目だろう。若手の「ポジ出し」に、前例がないからとダメ出しで応ずるのは論外。「ほめるとは人の価値を発見すること」。先の検定の主催者は語る。

政治の世界は救いようのない状況ではあるが、これを他山の石にして、社内、家庭で「ポジだし」を実行してみませんか。

例えば、奥さんの誕生日を忘れて帰宅した時、奥さんから

「あなたが私の誕生日を忘れるなんて大丈夫?働きすぎて疲れるんじゃない?」

とやさしく言われたら、あなたは・・・。

褒めて育てる!

前回紹介の日経新聞の連載「C世代 駆ける」(№9)に「褒める達人検定」の話が載っていた。記事には「高度経済成長を知らず成功体験の乏しい若手のやる気をどう引き出すか。悩める管理職が取得に懸命になっている資格がある。相手の長所を見つけ、ほめる技術を1~3級で認定する「褒める達人検定」。褒め言葉の語彙を増やし、短所も前向きにとらえる極意を磨く。09年の開始以来、セミナー受講者はのべ1万5000人にのぼる。主催会社シーズ(大阪市)が大企業の社員1000人を調べると、褒める上司のもとで働く社員の方がより多く企画を提案するなど仕事への意欲が高い事がわかった。35歳以下と若いほどその傾向が強い。怒られながら育った先輩社員たちは戸惑いながらも世代間の溝を埋めようともがく。」とある。

叱った方がいいのか、褒めたほうがいいのか?脳科学者の茂木健一郎氏は、多くのプロフェッショナルの話などで検証しながら、「叱る、褒める」の問題以上に「上司と部下の信頼関係が出来ている、上司が自分を全面的に受け入れてくれる存在である」なら、叱ることも受け入れることが出来ると言う。「部下の成長=自分の喜び」という考え方が肝心で「部下の成長=自分の苦労」というメッセージでは、部下の自発性の芽は育めない。しかし、脳には、うれしくないことや、苦しい事を逃げようとする働きがあるため、叱る際には、最初に褒めてやると、脳が受け止める態勢になり、そのあとの苦言も比較的すんなり受け入れられると言う。(「プロフェッショナルたちの脳活用法2〔NHK出版〕」より)

以前何かに書いてあったが、有るテーマを3組にやらせた。1組目はどんな成果が出ても叱り続け、2組目は逆にほめつづけ、3組目は無視し続けた。すると2日目は1組目が高い生産性を挙げたが、2日目以降は2組目が最も生産性が高くなった。3組目は常に最下位だった。すなわち叱ることは、短期的には効果はあるが、褒めることの方が高いモチベーションを維持・継続できるということだそうだ。

叱る材料はみつけやすいが、褒める材料はなかなか見つからない(本人を常日頃からよく知る努力が必要)。部下の育成のためにも、真剣に考えたい。