日経ビジネスオンラインの記事に目が止まった(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121019/238290/?rt=nocnt)。小林製薬が中国、米国で「使い捨てカイロ」を普及させる戦略が、まさに中国にはブルーオーシャン戦略、米国ではレッドオーシャン戦略と言える戦略で販路を拡大し、わずか10年で世界シェアトップになったという話だ。もともと日本で、ニッチな市場を狙って成長した小林製薬は、新たな商品で新たな市場を開拓するまさに「ブルーオーシャン戦略(市場創造戦略)」で事業を拡大した典型的な企業だ。
10年前に、それまで全く扱っていなかった「使い捨てカイロ」を海外事業の重点品と位置付け、大阪の桐灰化学を買収(2001年)。日本では普及しているが、当時は中国ではほとんど知られていない、まさにブルーオーシャンが広がっている状況だった。そのような中で、2003年に中国に一番乗りし、「暖宝宝(ヌァンバオバオ)」のブランドで展開をスタート。現地生産をし、店頭でのデモンストレーション、テレビCMなどで大々的にアピール。今では上海では「暖宝宝」の認知度は90%だとか。中国全土の市場はまだ日本の五分の一程度(60億円)だが、もともと寒冷地が多い中国でのビジネスチャンスは非常に大きいと思われ、これまで沿岸部の大都市に展開していたが、今は内陸部への展開もはじめているそうだ。ブルーオーシャンの中国では自社で展開しているのが特徴だ。
一方米国では、カイロ市場は既に存在するレッドオーシャン(競合市場)。日本の三分の一程度の市場(100億)であるが、既に数社がカイロを扱っていた。そのため、中国とは戦略を違え、ドラッグストアや量販店を主な販路としている企業や、スポーツ系の販路に強い企業を買収し、今ではシェア5割程度のトップ企業となっている。スポーツやキャンプなど特別な使用形態を、「普段使い」に誘導し、市場を拡大する手も打ちつつあるそうだ。レッドオーシャンの米国では、既に展開している企業を買収して、拡大している。
今では、米中の他、英国、韓国、台湾など20か国・地域で展開している。10年前まで全く扱っていなかった製品を、海外に展開しシェアを伸ばした小林製薬は、「日本の当たり前が、海外ではまだまだ通用する」ことを教えてくれると同時に、市場によって戦略を使い分けることの有効性を示してくれている。