これまで何回かにわたって、部下を育てるには「弱みより強みを育てること」が重要だと言ってきた。そして、人の長所を見抜く達人“吉田松陰”(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2547、http://okinaka.jasipa.jp/archives/2531)、「弱みより強みを磨こう」と言うコマツの坂根氏(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1917)、「組織として結果を出せないマネジャーの多くは、部下の弱みに目を奪われて、彼らの創造性を引き出せないでいます。」と言うドラッカー(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2515)などを紹介してきた。
「致知2015.4」にも複数の方が、同じことを言っている。まず、「鉄のパイオニア」と謳われ、先進的な取り組みで日本の高度経済成長を牽引した立役者の一人川崎製鉄(現JFEスチール)の初代社長・西山弥太郎に関する作家黒木亮氏の記事。多くの人の反対を押し切って千葉に一貫製鉄所を作った西山氏だが、社員や工員からも慕われ、誰もが一緒に仕事が出来た事を誇りに思う社長でもあったと言う。その西山氏の最期の言葉、
あなたがいつか人を使う立場になるだろう。いろんな人がいるが、その人のいい所だけをみて使ってゆきなさい。
7mしか泳げなかった子が1000m以上泳げるように、マット運動が出来なかった子が体操で九州4位になったなど、福岡県春日市立春日東中学校体育教師下野六太先生の指導を受けた生徒たちが、次々と苦手な体育を克服し、大きな成長を果たしている。その下野先生の考え方、
生徒たちは、本来“宝”です。もう本当に“宝”に見えます。我々教育者は、いかにして生徒たちの中に眠っている“宝”を引っ張り出すことが出来るか。
最近の子どもたちは自尊感情が薄い。そのため、子供たちに「自分にも価値があるんだ」と言うことを実感させる。そのためには、如何に達成感を味わわせるか?そのための指導法を常に考え抜く。水泳では自分の過去の経験に基づいて「リラックス」「毎回息継ぎ」「バタ足ではなくパタ足」の三つを徹底的に指導すると思わぬ成果が出た。これを「ビフォーアフタービデオ」にとって子供たちに見せる。ますます、やる気を出して見る見る距離は伸びていく。
本田宗一郎氏も松下幸之助氏も、社員は”宝“と考え慕われた。そして人は育った。下野先生の「生徒たちは宝」との発想での行動が、学校、会社などに普及すれば素晴らしい世の中になるのではなかろうか。人の弱みを責めるだけでは人は育たない。