米農家に加えて町の本屋、銭湯も激減!

今回、備蓄米の放出でコメの暴騰を抑える緊急手段が講じられた。一時的な効果はあり、人気政策として評判もいいが、本質的なコメ農家の減少に対する施策は後回しだ。今年2月の当ブログでもコメ問題を論じた(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9841)。

今回は別のテーマで日本の現在の状況を論じたい。

まずは書店が大きく減少している実態の中で、この10年で直営店の数が2倍(現在57店舗)となり、30年増収を記録している大垣書店の話だ。「致知6月号」のテーマ”読書立国“の中の記事だ。日本の書店の数も年々減り、書店のない市町村は全自体の4分の1を上回った(出版文化産業振興財団2024年3月発表)そうだ。確かに私も姫路に帰ると長年お世話になった駅前の書店がなくなっているのに寂しさを感じた。そのような中で京都に根を張りつつ(2023年麻布台ヒルズにも進出)、直営店を2倍に増やし、30年増収という大垣書店。「書店文化を守れ!」とのテーマで大垣守弘会長が記事を寄せている。なぜ大垣書店が成長を続けているか?今までの書店の根本問題は“人材教育の不足”と言い切る。地方から都市への人口流出、インターネット・電子書籍の台頭による雑誌の休廃刊の増(回転の速い雑誌に合わせて発売日が近い本を同梱することで、流通コストの効率化を図っていた)、取次会社の配本に伴うルーテイン業務主体の書店員の力不足などが書店衰退の理由と言う。このような状況下で、「わくわく感のある店づくり」を目指し、店構えを変えるとともに、自ら選書眼を磨き、書店員が工夫し続ける「書店人」に変わり、来客に寄り添える書店を目指してこられたことで今がある。「思いがけない発見ができる店」をテーマにカフェや雑貨、土産コーナーなども併設。京都では、有名ジャズクラブのブルーノート・ジャパンと提携したり、既存の枠にとらわれず業界外の方に賛同、支援いただける仕組みにも挑戦されている。今では、直営店の他、広島の廣文館や多摩地域のブックス・タマなどの経営再建にも取り組んでおられる。若い人が本を読まなくなっていることにも危機感を持たれ、近くの本屋が無くなることに警鐘を鳴らされている。

6月10日の朝日新聞夕刊に「銭湯 第2章へ」の特集記事があった。銭湯もピーク時の1968年の約1万8000軒から減り続け今年4月1日現在で約1500軒と12分の1ほどになり、昨年だけでも約100軒が廃業していると言う。廃業した銭湯を生き返らせる試みが各地で行われており、カフェや居酒屋に変わる銭湯もあるが、当記事では、入浴するという本来の機能を生かし、福祉の分野で活用しようと取り組む団体を紹介している。

長野県松本市の「バラの湯」・施設の老朽化で2021年廃業。これをリノベーションしてデイサービスを始めたのが「カミールハウス」。壁いっぱいの赤富士の下で、元は洗い場だった場所でお年寄りがテレビを見ながら談笑。隣の浴場では80代の男性が職員に体を洗われ湯船につかっている。廃業した銭湯を医療機関が経営を引き継いだ例もある。大阪市住之江区の寿楽温泉(1963~2001)。2023年に南陽病院を運営母体として、「昭和の建物を守りたい」と再開。高齢者の体操、障碍児の薪入れや風呂体験など、他のデイサービスなどと連携した多彩な活動を展開している。入浴習慣や温泉医学を研究する医師東京都市大学早坂信哉教授は「銭湯は老若男女関係なく自然と人が集まり、コミュニケーションが生まれる。地域社会の醸成にもつながっていて、福祉との相性はぴったりだ」と話す。

特に地域社会にとって意味ある本屋や銭湯が無くなっていくことは、地域社会がますます貧することにつながることが危惧される。米農家の問題も早急に検討すべき課題と思うが、本屋、銭湯の問題が政治の世界では話題にもなっていないように思われるが・・・。