第3回JASIPA経営者サロン(6月28日)

この4月にJASIPA会員向けに何か意味あることを始めようと言うことで、仮称「若手経営者懇談会」を開始したことを報告した(http://jasipa.jp/blog-entry/7483)。5月に実施した第2回も当ブログで報告した(http://jasipa.jp/blog-entry/7566)。世話役を買って出てくれたBSC林社長の提言で、参加者の評判・意見も踏まえ、今後は正式に「JASIPA経営者サロン」という名称にし(若手に絞るのではなく、広くJASIPA会員から募る)、7月23日に実施予定の第4回から参加者を公募することにしている。

第3回が昨夜(28日)飯田橋のJSIPA事務所で開催された。今回は2部制で、1部は先輩会員の生々しい成功体験、失敗体験談を聞くこととし、SAC阿部理事から「事業規模拡大について」話を伺い、意見交換した。パイロットの夢を持ちながら、SEの道を歩んだ阿部氏の入社した会社で、図らずも若くして社長に抜擢され、その後、30名の壁、50名の壁、100名の壁にぶつかりながら規模を拡大し、その間一度も赤字を出さなかった阿部氏の歩みは、規模拡大の夢を持ちながら、なかなか踏み切れない経営者に「思い」と「覚悟」の必要性を説き、参加者にとっても大いに参考になり、力になる話になったのではないかと思う。

2部では、第1回、第2回と同じく、私の方からテーマを提供し、意見交換を行った。今回のテーマは、阿部氏の事業規模拡大の話につながる話として、「尊敬されるリーダーになるには」とした。松下幸之助氏や稲盛氏など、名だたる経営者も最初は数名の企業からスタートしている。小さな会社を世の中に認められ、社員も満足する相応の規模の会社に育て上げるには、社長と一緒になって頑張れる社員を育て上げなければならない。そのためには「さすがうちの社長は!」「この社長のもとで頑張ろう!」と言ってくれる社員がいることである。前稿「全員経営」(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/)を進めるにあたっても必要なことだ。私も自戒の意味も込めて、当テーマを選んだが、参加者の皆さんにとっても耳の痛い話になったかも知れない。が皆さん、このテーマに関して「今後意識をして取り組まねば」と思ってくれたものと考える。

次回から公募することになったが、出来るだけ幅広い方のご参加をいただき、この会がますます活性化し、JASIPAの目玉サロンになることを目指したい。これまでのサロンの様子は、これまでの参加者の方にお聞きいただきたい(参加者は堀事務長、幹事の林さんにお聞きください)。

「全員経営」のすすめ

PHP Business Review「松下幸之助塾7・8月号が昨日届いた。5.6月号に関してはその一部を5月3日(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/3)、5月5日(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/5)に紹介した。今回の特集は「全員経営の凄み」。そのリード文を紹介しておく。

「‘全員経営’――この言葉が近年マスコミ上に頻出し、多くの企業の課題として問われている。その背景には、‘全員経営’ではない経営、すなわちトップの経営判断だけに頼る経営ではこのグローバル化の時代、スピードに劣り、とても乗り切れないからという危機感がうかがえる。そしてまたそれは一人ひとりのビジネスパーソンの尊厳を考える上でも、必然となってきたようだ。社員全員が目標を共有しつつ、経営者感覚を持ち、機能すれば、いったいどれだけ高度な経営ができるのであろう。一流経営者たちが求める‘全員経営’のための哲学と方法を探る。」

成功事例として「ヤマダ電機」やブラジルのコングロマリット「セムコ社」が紹介され、大手外資系(シェル石油、ジョンソン&ジョンソン、フィリップスなど)のトップを歴任された経営のプロフェッショナル新将命(あたらしまさみ)氏が「全員経営を根づかせるために必要な仕組みつくりとは」を提言されている。新将命氏は「経営の教科書」などの本も出版されており、私もこの本を読んで同氏に興味を持ち、講演会でお話を伺ったが、経験に裏付けされて経営論に感銘を受けた。新氏の今回の提言の一部を下記に紹介する。

ワンマン経営では、ワンマンの能力以上の成長、発展は望めない。あるレベルまで大きくなった会社がそれ以上伸びない原因は、そのトップにある。その壁を突破するためには、社員の衆知を集めた全員経営が必要。その全員経営を実行するためのポイントは

  • ① 方向性
  • ② 関与
  • ③ フィードバック

この3つのキーワードを会社の中にしっかりと根づかせることと言う。筆者はいろんな会社から企業研修を依頼され、毎週のように幹部や部課長クラスの研修を実施されている。その中で頻繁に出てくる言葉が「疲労感」「疲弊感」そして「閉塞感」だそうだ。目先の売上高や利益の確保、新規顧客の開拓などで、朝から晩まで鞭を振り回され、部課長はそれに応えんと遮二無二働いている。部課長にこの3つを感じたことがあるかと聞くと、「強くまたはある程度感じる」と答えたのが90%で、「全く感じない」は0%だったそうだ。

これを解決するためには、「方向性=理念+目標+戦略」を社員の納得性の元に作ることがまず重要と言える。トンネルの先に光が見えれば、今の疲れは我慢でき、頑張れる。部課に目標を与えるとき、一方的に与えるのではなく、目標設定に部下も参画させ、納得性のあるものにする。会社の理念や戦略を作る過程においても参加させることも意味がある。これが2番目のキーワード「関与」である。目標が決まれば、その結果が出たときに、きちんとフィードバックすること。目標の立てっぱなしは逆効果で、部下に対する無関心を表わし、部下のモチベーションを下げてしまう。この3つが、きちんと定着すれば、社員のやる気に火をつけられる可能性が大きくなり、経営に対する関心も惹起し、当事者意識も湧き上がる。「関与」によって部下のやる気は3倍になると筆者は言う。このような風土が出来れば、「自責の企業文化」(何か問題が起こった時、他者に責任を求めず、自分の責任で考える)の定着も可能となる。

松下電器は松下幸之助氏の「全員経営」の発想で大きくなった。新氏は、グローバル企業のトップを数社経験してきた中で、「全員経営」は、企業経営の普遍的な要諦であると言う。より大きく成長するためにも、「全員経営」は一考の価値あると思うがいかが・・・。

ホンダの哲学「自立、信頼、平等」

本田技術研究所でSRSエアバッグの開発、量産、市販に成功され、現在中央大学の客員教授をされている小林三郎氏が日経電子版に投稿されている記事に、ホンダの企業理念に基づく風土、文化の定着度の素晴らしさが掲載されている(http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK14027_U2A610C1000000/)。

ホンダのホームページにも見ることが出来るが、ホンダの基本理念として、下記「人間尊重」の考え方が記されている。

●自立
自立とは、既成概念にとらわれず自由に発想し、自らの信念にもとづき主体性をもって行動し、その結果について責任を持つことです。
●平等
平等とは、お互いに個人の違いを認め合い尊重することです。また、意欲のある人には個人属性(国籍、性別、学歴など)に関わりなく、等しく機会が与えられることでもあります。
●信頼
信頼とは、一人ひとりがお互いを認め合い、足らざるところを補い合い、誠意を尽くして自らの役割を果たすことから生まれます。ホンダは、ともに働く一人ひとりが常にお互いを信頼しあえる関係でありたいと考えます。

‘自立’の事例として、他業種との研究員の交換留学を実施した際、ホンダに来た他社の研究員は「指示が曖昧で何をやっていいか分からない」、他社に行ったホンダの研究員は「あれをやれ、これをやれとやたらと指示が細かくて仕事にならない」と。1週間でこの制度は廃止になったとか。上司の指示通りやって失敗した際の言い訳に「上司の指示通りやったため」と言うと、怒鳴られる。「俺が死ねといったら、お前は死ぬのか」と。要は常に自分で考え、自分で判断せよと言うことだ。フラットな組織で、役員といえども、社員が集まるワイガヤ(3日3晩の合宿討議)に参加し、みんなと議論を戦わせる風土があるから、言えることなのだ。

そう言えば、何かの記事を読んだ記憶があるが、青山にあるホンダの本社ビルの各フロアの窓には、幅約1.5mのバルコニーを巡らせてある。これは、創業者本田宗一郎氏の考え方で、「もし、大地震で窓ガラスが割れ、地上にでも落下したら…、そんな危険な事態が起きた時、割れ落ちたガラスの受け皿になり、地上の歩行者の安全を確保する」ために作ったバルコニーなのだ。またフロアごとに3ヵ所の避難階段があるそうだ。どこで火災が発生しても、ふた方向以上の避難路の確保のためだとか。また、車の運転中の見通しを考えて、ビルの角を丸くし、ビル自体を奥へひっこめている。

「人間尊重」の理念を徹底的に追及する姿勢を見ることが出来る。元社員の記事だけに、本田イズムの素晴らしさを実感できる。