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ソチパラリンピック、国内の盛り上がりが今ひとつ?

オリンピックに続いて7日からソチにてパラリンピックが始まった。開会式は、オリンピック同様大きな盛り上がりを見せ、会場は4000人の観客で埋まったと報じている。しかし、日本国内では、2月のオリンピックの時に比して盛り上がり方が少ないのではないだろうか。メディアの扱いも大違いで、テレビもLIVE中継はBSスカパー(有料)しかない。東京開催に向けてもっと盛り上がってもいいと思うのだが。

聖火リレーに参加した佐藤真海さんは「パラリンピックの聖火はパラリンピックムーブメントのシンボルで、全ての選手の努力、そしてパラリンピックの価値である決断力、勇気、平等、インスピレーションを表しています。今回、私が聖火ランナーとして走らせて頂いたことで、より多くの人がソチパラリンピックに関心を持ち、その流れが2016年リオ大会、2018年平昌大会、そして2020年東京大会へパラリンピックムーブメントとして広がることを期待したいと思います。」と言っている。恐らく、東京招致に大きく貢献した佐藤真海さんにとって、東京でのパラリンピックが心配なのだろう(http://jasipa.jp/blog-entry/9205)。

初日に、金1個、銅2個を取る華々しいスタートを切った日本選手団。恐らく、今回もたった20人の選手団でオリンピック以上のメダル(目標11個以上)を獲得することになると思われる。昨晩、安倍総理は金メダルを取った加納選手に電話をされた(羽生選手への電話はニュースでも大きく取り上げられたが今回は新聞の片隅に掲載されただけ?)ことである意味ほっとしたところがある。しかし、羽生選手の金メダルの時とは、その盛り上がり方は全く違う。ところで、パラリンピックに関して「‘20何時間以上も時間かけてまた行くのかな’と思うと、ほんとに暗いですね」と言った例の森喜朗東京五輪委員長は行ったのだろうか?

テレビ局もオリンピックに比して視聴率が低いことも有って、無理して放映権をとらなかったと推測されるが、6年後の東京開催をロンドン開催に負けない盛り上がり(イギリスでは全ての競技生放送で放映)を見せるためには、テレビを含むメディアが逆に障害者競技に国民が目を向けるよう導いていくことも必要だと思うがいかがなものだろうか?選手の掘り出し、育成課題が言われ始めているが、国民の関心度を挙げる施策もより重要と思う。佐藤真海さんの懸念を払しょくさせるために国ももっと考えてもいいのではなかろうか?森さんに任せていて大丈夫かな?

ともかく、頑張れ!ソチパラリンピック選手団!

ソチ冬季オリンピック、多くの感動ありがとう!!!

2月7日から23日までの17日間、ソチで開かれた冬季オリンピックも閉会式を迎えた。日本は長野オリンピックを超えるメダル獲得10個以上を目指したが、残念ながら8個に終わった。しかし、今回のオリンピックで、感動の数はメダルの数だけではないことを多くの方が感じたのではなかろうか。確かにメダル獲得者では、スノボ男子ハーフパイプで見事な技で銀、銅を獲得した平野、平岡君の10代ペア(特に15歳最年少メダルの平野君)に感動をもらい、ジャンプ男子ノーマルヒルでの最年長葛西の銀メダルには日本国中歓喜の渦が沸き起こったものと思う。フィギュア男子の羽生君の前評判通りの金メダル、それも19歳と言う若さで極めた頂点、ノルディック複合の日本の伝統を復活させた渡部選手、種目で初のメダルを獲得した竹内、小野塚選手、いずれもメダル獲得に向けての刻苦精励、私のような凡人には想像もつかない努力も含めて感動をもらった。

しかし、スキー女子ジャンプの高梨沙羅選手、誰もが金メダル間違いなしと思っていたが、4位となった。しかし、日本中の皆さんは沙羅ちゃんの大健闘に大きな拍手を送った。微妙な風の影響もあったそうだが、気丈に「たくさんの方々に応援していただけたのに、ベストを尽くせず、結果を残すことができなかったので、今は申し訳ない気持ちでいっぱい」、「技術はもちろん、精神面も磨いて、もっともっと練習して、レベルアップしたい」と語る17歳の姿に、ほとんどの方は涙し「よく頑張った」と褒めたたえた事と思う。

特筆すべきは浅田真央ちゃんだ。ショートプログラムで誰もが信じられない16位。私も、フリーはショートの成績を引きづり、期待できないのかなと思っていたが、それを見事に裏切り、自己ベストの演技を行った。この凄さに、日本だけではなく世界が驚き、賞賛の言葉を贈った。可憐な少女が、なぜこんな芸当が出来るのか?「今回の演技を最高レベルで終える」との思いと、それに向かっての過酷で不断の努力による自分に対する信頼感、そして一夜にして前を向くしかないと決断し、まさに心をそのように持って行った、その精神力に脱帽だ。観戦していた高橋大輔も、演技を終えた浅田を見て号泣したと言う。浅田の苦しさを思い、それを見事に克服した姿に神を見たのかも知れない。

ともかく、オリンピックは選手にとっても最高の場でもあり、特別な場でもある。何が起こるかわからない怖さがあると思うが、全力でプレーに取り組む姿にほんとに元気をもらう。すべての選手に大きな拍手を送るとともに、「感動をありがとう!」と言いたい。

3月7日から16日はパラリンピックだ。前回バンクーバーでは42人の選手で11個のメダル(金3、銀3、銅5)を獲得し、今回のソチでは出場選手は20人と縮小されたが目標メダル数はバンクーバー以上に置いている。壮行会での安倍総理の発言「今までのさまざまな困難を乗り越えてきたものを、ソチパラリンピックの舞台で、大きな成果を出していただきたいと思います。日本中で皆さんの活躍を応援しています。日本から送る声援と熱意を力に変えて頑張ってほしいと思います。」とかく、メディアでの取り上げ方もオリンピックと比して静かに成りがちだが、2020年東京大会に向けて、みんなで応援し、大会を今まで以上に盛り上げたいものだ。ロンドンパラリンピック以上の盛り上がりを2020東京でも見せられるように(ブログhttp://jasipa.jp/blog-entry/9205「車椅子だったら日本に住みたくない~佐藤真海~」参照ください)。

車いすだったら、日本に住みたくない(佐藤真海)

日経ビジネスの11月25日のインターネット記事(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131120/256090/?n_cid=nbpnbo_mlp&rt=nocnt)に表題の記事があった。副題は「五輪招致の顔、佐藤真海氏が語る7年後の東京」だ。佐藤さんは前稿のレーナ・マリアさんとは違って早稲田大学在学中に骨肉種を発症し、2002年から義足での生活を余儀なくされている。リハビリを兼ねて陸上競技を始め、驚くことに2004年にアテネパラリンピックに出場し、その後続いて北京、ロンドにも出場した。健常者から急に障害者になったショックは大きかったと思うが、義足生活2年でパラリンピック出場とは驚く。その精神が、五輪招致の際のプレゼンで、地元気仙沼を襲った東日本大震災を振り返り「大切なのは、私が持っているものであって、私が失ったものではない」との言葉に表れていると思う。まさに前稿のレーナ・マリアさんの「悲しんだり、落ち込んだりしたことは一度もない」と自分に出来ることに邁進した姿勢と相通じるものがある(http://jasipa.jp/blog-entry/9193)。

その佐藤さんが10年間世界各国を回る中で、「世界との違い」に何度も愕然とし、東京でのパラリンピック開催に向けて「まだ」を何個つけても足りないくらいやることがあると言う。例えば、日本における障害者のスポーツトレーニング環境。「味の素ナショナルトレーニングセンター」はオリンピック選手専用、コーチや競技団体も健常者と障害者は別々。ロンドンでは健常者と障害者が同じフィールドで練習することも珍しくなく、リハビリ施設の横にはスタジアムや体育館が作られ、現役パラリンピック選手が指導する。障害者がスポーツに取り組むハードルは日本に比べて極めて低いと言う。

さらにはスポンサー企業の違いにも触れる。ロンドンでは大手企業がパラリンピックを精力的に盛り上げた。大手スーパーマーケットチェーンのセインズベリーは「1ミリオン・キッズ・チャレンジ」と題して数年前から子供にパラリンピック競技に関心を持ってもらうために100万人の子どもに競技を経験してもらうプログラムを実施した。そのキャンペーンのアンバサダーがあのベッカム選手だったそうだ。そのような活動の結果として、ロンドンでのパラリンピックは、朝の部も夜の部もいつも満員、スタジアムが期間中ずっと8万人の観客であふれかえるほど盛り上がったとのことだ。その頃には日本は、オリンピック選手の凱旋パレードが実施され、テレビでもパラリンピックはほんの一部しか放映されなかった。ロンドンでは朝から晩まで生中継で、パラリンピック盛り上げのための選手登場のCMも大きな評判になった。

ロンドンでの障害者に対する接し方も自然体で、日本のように障害者を特別扱いしない。電車に乗ろうとすれば「お手伝いを必要とされているお客さんがいます」と注目され、仰々しく専用エレベーターに乗せられる。佐藤さんは「障害者に対してと言う目線ではなく、全ての人に対しては思慮の視点を持つ」事を提言する。足が不自由なお年寄りもいる。すべての人に対して、子供も大人も自然体で「おもてなし」の心で接することが出来るような社会に日本がなって欲しいと。

「おもてなし」を日本古来の慣習と言うが、「現在の日本社会におもてなしの心や文化があると思うのは幻想」(日経夕刊11.9・青木保国立新美術館館長)と言う方もいる。7年後のオリンピック・パラリンピックを、日本をアピールできる場にするには、障害者・健常者、そして外国人の区別なく、同じ視線でおもてなしが出来るハード・ソフト面での環境つくりが大きな課題となる。