「経営計画3」カテゴリーアーカイブ

常識を逸した「丸見え経営」で成功の眼鏡店(株式会社21)

タイトルは「“丸見え経営”が価値観の共有を生んだ―管理職も部署もなくした“人事破壊”が意味するもの」。「PHP Business Review松下幸之助塾2013年9・10月号」の特集「打てば響く組織への挑戦」の中の記事だ。大手眼鏡店に勤めていた先輩社員などと27年前に広島市で㈱メガネの21(現㈱21)を設立し、今では関東以西で120店舗を展開する中堅メガネ店の現相談役平本清氏の記事だ。その記事のリード文をまず紹介する。

どんなに実績を挙げようとも、年収の上限は一定。昇給は30歳でストップ。自分の給与やボーナスの額を社員全員が知っている。何年勤めても、絶対に店長にもなれなければ部長にも慣れない。そんな理不尽な会社にも拘わらず、5年間の入社3年以内退職者がわずか一人だと言う。家族経営の零細企業の話ではない。社員170名強、店舗数120を数える企業である。社員が意欲を持って働き、画期的な商品を提案し続けるチェーン店「メガネ21(トゥーワン)」。

平本氏曰く「非常識な会社」。肩書もなく、部署もなく、ノルマもなく、出勤時間はフレックスで自由。しかし、みんなコマネズミのように働いているかと言うとそうでもなく、ぐうたら社員も皆無。かつ、世の中にない独創的なメガネを世に出しているのでも有名。つるなしメガネや、鼻の上に浮くメガネ、補聴機能付き聴こえるメガネ(「ガイアの夜明け」でも紹介された)などを格安で提供している。

あらゆる情報を”丸見え”に

会社の財務状況や店舗の損益、出店計画の進捗などに加えて、取引先とのやりとりなども社内ネットでオープンにしている。いろんな提案もネットで行い、反対がなければ提案者が実行することになっているため、稟議書もなく、会議も必要なし。経営方針でも誰でも意見を書き込める。

全員の給与や賞与も“丸見え”

各人の評価もオープン。文句があればだれでも疑義を呈することが可能であり、その疑義もオープンにされる。これらの情報を前向きにとらえれば、ごく自然に全社員が自分の実力を高めるために自主的に考え働くようになる。「どうしたら儲けることが出来るか」皆が考え、経営感覚を磨く。社員が自立し、かつ自律しながら働くため、社員を管理する管理職が不要。平本氏は“丸見え経営”は超フラット型の、超効率的経営を実現する画期的手法と言う。

利益はすべて社員とお客さまに還元

「利益を残さず、内部留保もつくらない」のが基本方針だと言う。給与の上限は1000万円(配偶者控除の限界)としているため、その範囲内で利益を賞与で配分し、残れば商品の値引きの原資とする。社長の年収も、前年の社員最高年収としている。

社員がオーナー経営者

運転資金は、社員の出資で賄っている。その代り比較的利息は高くしている。しかし、ある時、利息が高いのを当たり前の風潮と捉える傾向を感じたため、わざと商品を値下げして業績を悪化させ賞与や利率を下げることでカンフル剤を打ったことも有る。結果的にその半年後にリーマンショックが起こり、人件費を下げていたお蔭で「良い商品を安く提供」でき、お客様に喜ばれて繁盛する結果となった。

平本氏は、「当社は優秀な社員に我慢を強いる不公平会社だ」と言いつつ、「従業員みんなが幸せになった方がよほど楽しい」との価値観を全員で共有化している会社だと言う。マスコミでも時折取り上げられているそうだが、正直こんな経営もあるのだと驚かされる。何事も徹底してやるのが、経営の神髄か?

“自立した個”が強いチームを作る(広島・安芸南高校)

「PHP Business Review松下幸之助塾2013年9/10月号№13」の特集テーマは~「打てば響く組織」への挑戦~だ。小笹芳央氏の記事は後程紹介するにして、今回はスポーツエリートでもない普通の高校サッカー部を強豪校に育て上げた公立高校の監督の記事を紹介する。

記事のリード文は「組織を強くする方法―それは「優秀な人材」を集めて、トップダウンで徹底的に鍛え上げることだろうか。近年高校サッカー界で、従来の方法に捉われない画期的な指導法で成果を挙げ、注目を集める指導者がいる。プレー自体の指導よりむしろ「人間力」向上の指導に力を注ぎ、メンバーひとりひとりに“みずから考えさせる”指導を徹底して続けることによって、弱小チームをスポーツエリート集団に勝利するチームに育て上げている。徹底したボトムアップでインターハイ優勝、と言う事実がその指導法の正しさを証明する。その教諭は、順天堂大学時代、U-20日本代表に、そしてソウルオリンピック代表候補になったが、腰椎ヘルニアを発症し代表辞退した往年の名選手畑喜美夫氏だ。畑氏のサッカー選手としての原点は、広島の「大河FC(木村和司、森島寛晃など往年の名選手を数多く生んだクラブ)」の指導者(浜本敏勝)の指導方針だ。「勝利至上主義」からは程遠く、ピッチ上で「さまざまな状況を感じること」「味方選手を思いやること」「相手選手を敬う事」だけを徹底し、子供たちの人間的成長に力を注いだ。畑氏はここで、上から指示命令されることのない自由な雰囲気の中で「自主性を持ってプレーすること」を学び、「自立した個」としてチームに貢献する姿勢を身に付けたと語る。

畑氏はサッカー界で名もない観音高校をインターハイで優勝するまでに育て上げた後、安芸南高校に赴任した。安芸南高校では弱体のサッカー部に対する期待は皆無だったが、観音高校の経験から、部室の整理から着手した。強制的にやらせはせず、前任校との練習試合の際に部室を見せたりしながら、部室を綺麗にすることの気持ちの良さを自分で感じるように指導していった。畑が叱るのは「怠けること」「人の心と体を傷つけること」「嘘をつくこと」の三つだけ。この時は心を鬼にして怒る。全体練習は週2回、1時間半か2時間しか行わない。練習メニューも自分達で決める。練習の合間に「PDCAサイクル」を回し、良かった点、悪かった点、改善すべき課題などを話し合う。試合に出場する選手もキャブテンを中心に生徒たちで決める。選手を選ぶ優先順位は①社会性、②賢さ、③うまさ、④強さ、⑤速さというのがユニークな点だ。サッカーに直接関係する③~⑤より人間力を表わす①、②が優先される。技術は低くてもムードメーカー的存在の選手を選ぶことも有る。ピッチ上で「観て感じる」、状況に応じて瞬時に判断する能力の重要性を教える。「一人一人の選手が自主的に考え、責任を持って行動する。さらに周囲の選手たちを「観て」、的確に「感じ」ながら、自分の行うべきことを行い、味方からもより良いプレーを引き出していく。これこそ理想の「打てば響く組織」と言えよう。やはり「自立した個」が基本単位であり、そうした個が集まってチームを組むことで強い組織が作られる。

このような指導者と選手の間の信頼関係を創り上げるベースは、「“信頼”と“絆”を結ぶ2冊のノート」だ。1冊は休日の試合で気付いた点や反省点を書きとめる「サッカーノート」、もう1冊は、試合外の日の一日のスケジュールや個人のトレーニング内容、日記や報告、感想などを細かく書き込む「トレーニングノート」。「大河FC」の時、浜本監督のコメントに感動した経験を生徒にも与えたいとの思いで始めたノートだ。「付き合っている彼女のことを書けるようになったら心が通じ合った証拠」と畑氏は言う。

「全員リーダー制」などいろんな施策の組み合わせで、「個の自立」を仕上げている。近年全国の教育期間や企業、団体などから講演依頼が殺到していると言う。高校野球も人間力育成指導を行う高校が強くなってきている。夏の高校野球で好成績を収めた東北勢は、これまでのように、全国からスポーツエリートをスカウトすることなく、地元の生徒で構成するチームだったと聞く。名もない選手でも指導方法によって輝く。企業人にも大いに参考にしてほしい指導方法だ。