「組織・風土改革2011」カテゴリーアーカイブ

京都の企業はなぜ元気?

堀場製作所の堀場厚社長の著になる「京都の企業はなぜ独創的で業績がいいのか(講談社)」と言う本が出版された(2011.10)。そう言えば、堀場製作所、ローム、日本電産、村田製作所、京セラなど京都で生まれ、京都で育った企業は、昨今の製造業に対する逆風の中でも元気である。

以前、ある大先輩(日立出身で同志社大学教授も歴任)から、「京都の企業は、大阪などと違って、本社を京都から東京に移す企業がほとんどないが、その理由は分かるか」と聞かれた事がある。その方の言われる理由は非常に明快で「海外の企業が京都を訪問する際は、社長自らが来たがる。そのため、商談が早い」。そのため、祇園だけではなく、東山連峰の麓にも「一夜一顧客」のような豪勢な接待料亭が数多くあるとか。

堀場氏は、京都は市場規模も小さく、四方を山に囲まれているため、大工場を作る事も出来ない環境の中で育ったことで、独自性、独創性を育てざるを得なかったと言う。その独自性も、業種を横断した横のネットワークを重視し、棲み分けを程よく行ってきた歴史があると言う。西陣織の職人や、茶道の家元、華道の家元も加えて、各経営者がいつでも会える風土を作りだし、切磋琢磨出来るネットワーク環境が独創性を育んでいる。その独創性を継続できるのは、「職人=プロを大事にする風土」が根付いているからと言う。大工場が作れないため、分業制が発達、その分業職業集団の中で、優れた技術を次世代に踏襲して行く、そんな風土が、人財育成にもつながっている。

さらに、京都人の特質として「目に見えないものを重視する」を挙げる。これを企業経営に当てはめると、人財(人材)や技術力、お客様とのリレーション、組織力、ブランド力など目に見えない資産を重視する経営を言う。HORIBA流「人財」の育て方として、基礎・基本をきちんと教える、失敗を経験させる(チャレンジ精神)、目に見えない行動や努力を誉める、本物を教えることを重視している。

HORIBAグループの社是は「おもしろおかしく」。この社是には、人生の一番よい時期を過ごす「会社での日常」を積極的でエキサイティングなものにしてほしいという、前向きな願いが込められています。5年連続で「働きがいのある会社」に選ばれています。

MBQ(つづき)いい質問とは?

2011.11.7(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/11/7)にMBQを紹介しました。その際、3つの質問のパターンを示しましたが、質問のタイミングなどが非常に重要とのことでした。これに関連して、以前「コーチ・エイ」のメルマガで「大きな質問」と「小さな質問」の話が出ていたのを思い出しました。要は、質問の質を考えなければ、逆効果で相手を委縮させてしまうことが脳医学上も証明されているとの話です。

相手の創造性を引き出し、考える力をつけ、成長させるためには、いきなり「大きな質問」から入ると、恐怖を感じる脳にある大脳辺縁系の扁桃体という部位を刺激してしまい、理性的・創造的思考をつかさどる大脳新皮質の機能を停止させてしまう可能性があるというのです。「大きな質問」とは、「俺たちが業界トップになるために、君には何ができるか?」のような質問を言う。これをいきなり言われると、確かに戸惑うだろうことは想像に難くない。しかし、「大きな質問」がいつもダメと言っている訳ではありません。当然質問されてしかるべき時、人には必要です。そういう場でもないのに「いきなり」は困ると言うことです。

これに対して、「小さな質問」は、扁桃体を刺激せず、恐怖が起こりにくく、 その結果、大脳新皮質が効果的に反応し、創造性が発揮されるというわけです。「小さな質問」とはMBQの3つの質問のようなもので、「今日何か問題あった?」「何かいい事あった」のような質問を言います。

もし、「大きな質問」をしたいなら、もっと丁寧に自らの課題認識などを説明してから「小さな質問」に入ることを薦めています。「今、わが社は売上が伸びず、厳しい状況にあるが、今からでもスタートできる小さな一歩は何だろう?」「明日からでも出来る事って何かないかな?」のように。

3日坊主になりやすい目標も、実現可能な小さな目標から始め、逐次目標レベルをあげていくことで、実際に効果をあげることにもなるとの事です。参考文献『脳が教える1つの習慣』ロバート・マウラー著 本田直之監訳 講談社

部下の“自頭力”を高めるMBQ

ファシリテーションの普及に尽力されている堀公俊氏著作の「MBQ〔マネージメント・バイ・クエスチョン〕日本経済新聞社」が発刊されている。以前(10年以上前と記憶しているが),経営手法として「MBWA(Management By Wondering Around)」が喧伝されてことがあるが、双方の手法を合わせれば、より効果的な管理が出来、かつ社員の「考える力」もつくのではと思う。

MBQとは、質問を使って組織のマネージメントを促進し、自律的に成果が出せる組織をつくる手法であり、「指示命令」ではなく、「質疑応答」を主体とする。松下幸之助氏は部下に対して質問がうまかったのでも有名である。「あんた、どう思うんや?」とか、「それでお客様は喜びまっか?」。社員に自分の頭で考えさせたり、顧客志向を社員に叩き込むのにこれほどシンプルで力強い質問はない。

堀氏の提案は、MBQの基本型としての3つの質問である。

  • ①仕事は予定通りに進んでいる?
  • ②どんな問題(心配)を抱えているの?
  • ③私(上司)ができることはない?

変形として、有る企画を提案してきた時

  • ①その目的は何?(目的)
  • ②他にどういう手がある?(代替案)
  • ③デメリット(リスク)はない?(損得)

や、問題が発生した時には

  • ①何が起こった?(問題)
  • ②何がもとでそうなった?(原因)
  • ③どうするのがベスト?(解決策)

というように状況に応じて変える必要があるが、基本は部下に考えさせることが必要と説く。その際、質問するタイミングや、質問する相手に対する興味や関心の示し方、返事がない場合に辛抱(ウェイティング)するテクニックなどに留意すべしと言う。すなわち、部下を信じ、部下が自らの力で成長することを信じ、励まし続ける上司(質問者)の心が通じれば、部下の成長は早い。

MBWAは、責任を持つ上司が、一人の部下から聞いた報告をうのみにせず、常日頃から現場に出ていろんな人に声を掛け、真の情報、状況を掴む努力をする手法を言っている。これとMBQをうまく組み合わせれば、社員の育成、そして業績UPに必ずつながる!!!