「24日朝(現地時間)、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した」との情報があった。24日夜から25日にかけての日本のニュースは、この話で持ち切りだ。フェイク情報が飛び交う中で、バイデン米国大統領が、「必ず侵攻はある」と言い続けてきたが、それが現実のものとなった。一方、ロシアは、「侵攻はしない」「親ロシア住民の平和のための行動だ」「演習が終わったので部隊は撤収している」と、煙に巻く言い訳をしながら、侵攻に踏み切った。今回の侵攻にしても「ウクライナを非軍事化するために、軍施設を攻撃」「ウクライナをロシアの領土化はしない」などと言っているが、果たして信用できるのか自民党の元防衛大臣小野寺氏も「信用できない」と言う。本格的戦争になった場合、戦車や銃器などの装備品は、ウクライナに比してロシアは近代化されており、圧倒的にロシア有利となる。ウクライナはNATOに未加盟のため、表立って欧米はこの戦争に介入できない。もし介入すれば核戦争にも発展しかねないため米国はまず介入しない。ウクライナとしてはどうしようもない状況であり、国連はじめ欧米の外交努力しか解決方法はないようだ。
24日の日経朝刊に「ロシア、自作自演の跡」との記事があった。リード文を紹介する。
ウクライナ情勢をめぐり情報戦が激しさを増している。SNSで流れた「ウクライナによるロシア、親ロシア派支配地域への侵入」とされる複数の映像は、フェイク動画の可能性があることが、日経新聞や英調査機関ベリングキャットなどの分析で分かった。米欧はロシア側への攻撃を自作自演する「偽情報」とみている。
「ロシア領内に侵入したウクライナ軍車両をロシア軍が破壊し、5人のウクライナ人を殺害(ロシアタス通信)」との報道に関して、映像の装甲車はウクライナでは使用していないものであり、破壊場所もグーグルマップなどで確認したところ報道の場所とは違い、ウクライナ領地だった可能性ありとの調査結果だ。他にも、ウクライナ内親ロシア派をウクライナ軍が攻撃したとの映像も、その映像制作日が、報道の10日前に作られたものと判明。
ともかくいかなる理由があっても戦争は絶対ダメだ。特に情報技術が進歩した中での、情報合戦は、何が事実か益々分からなくなっている。自国民や世界に向けていかなる情報を発信しても事実関係は分からない。8年前のクリミア併合の際、プーチン大統領の国民支持率が大きくあがったことを考えると、ほんとに情報操作の怖さを覚える。
翻って、日本の昭和史を考えてみても、その怖さは分かる。半藤一利氏著作の「昭和史(2004年刊、平凡社)」を読むと、明治の末期の日清戦争、日露戦争の勝利を契機に、昭和の太平洋戦争開戦に至る日本のメディアを含めた情報合戦はすごいものがある。満州、中国での偽装事件(張作霖爆殺事件、柳条湖事件など)、日中戦争勃発に至る経緯などを見ると、統帥権を持つ天皇陛下にさえ事実を隠し、軍は内閣を制し、反対者は総理大臣と言えども征伐する(5・15事件、2・26事件など)、国民には当時の朝日新聞、日々新聞(現毎日新聞)を使って、軍部の思うように情報操作をしながら、戦争にまい進する雰囲気つくりをする。この流れの中で、冷静に判断しようとする人たちを制しながら太平洋戦争に突入する。
戦争体験者の高齢化に伴う減少傾向に対して、私も含めて未体験の人たちが、如何に戦争をさせない行動をとるかが問われている。難しい問題だが、今回のウクライナ問題を契機に、考えてみたい。