ウェブサイトに社長の顔写真を載せた企業の株価は上がる!?

最近新聞でも投資家の企業評価が利益や資産だけではなく、他の尺度も重視し始めているとの記事が目につくようになった。当ブログでも、社会的インパクト投資(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4496)、CSV経営(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4857)、社会派B企業の逆襲(http://okinaka.jasipa.jp/archives/5223)などでその動向を報じてきた。
9月5日日経朝刊19面のコラム「一目均衡」(編集委員松崎雄典)に、 “社長の写真、投資の尺度に”とのタイトルで、最近の投資家の評価尺度が非財務情報に傾斜していることを報じている。上場企業がウェブサイトに社長や役員の顔写真を掲載しているかどうかと株価の関連をある企業(レオス・キャピタルワークス他2社協賛)が調査をした。株式時価評価額100~1000億円の中小型株を対象に2012年末から17年3月末までの株価の動きを調べたそうだ。結果は、社長の顔写真をサイトに掲載していない企業の株価パフォーマンスの悪さが目立ち、そうした企業の単純平均は全体より14%以上も相対的に値下がりし、逆に役員の顔写真を出している企業の株価は値動きが良く、平均70%強上回ったらしい。調査会社は言う。「写真の少ない企業は情報効果に消極的な傾向がある」と。
ニューヨーク大学のバルーク・レブ教授は、「利益や資産など財務情報が株価に与える影響度は1980年代までの8~9割から5割程度に下がったと分析しているという。研究開発費が利益を圧迫しやすいIT企業が伸びるにつれ低下が顕著になった。と同時に。企業の環境や社会への働きかけを見るESG投資や、前述の社会的インパクト投資、CSV経営など、新たな目線で捉えようとする投資家の動きは止まらない。松崎氏は「企業の実力を測る物差しは常に進化している」と締めくくる。
地球が存続するための国連のSDGs活動(http://okinaka.jasipa.jp/archives/6070)もやっと日本でも取り上げられるようになってきた。企業としても、もちろん利益を出さなくてはならないが、環境など社会的問題の解決に絡めての事業の展開も視野に入れていかなければ社会から評価されない時代が来るかもしれない。

「働き方改革」期待通りに進んでいますか?


9月5日の日経朝刊17面に「働き方改革、不満足4割(民間調べ)~従業員の理解得にくく~」とのタイトルの記事に目が留まった。デロイトトーマツコンサルティングが上場している国内の大手企業を中心に238社から回答を得た結果とのことだ。記事によると、労働時間削減など一定の効果があったにもかかわらず従業員の満足を得られなかった企業が21%、効果も満足感もない企業が23%、効果もあり、従業員の満足も得られた企業は28%にとどまった。不満足の理由を下記のように分析している。
経営層と従業員のコミュニケーション不足が、「働き方改革」の効果に従業員が満足できない要因の一つで、改革による生産性向上が、単なる利益確保と受け止められ共感が得られていない。業務内容を見直さず、労働時間だけを短くすると働く人の負担を増してしまう。経営層は従業員の立場に立った取り組みだけではなく、「健康や生活の充実などに配慮している」と伝えるべきだと指摘している。
政府が「一億総活躍社会」の名のもと「働き方改革」として同一労働同一賃金、長時間労働の是正などを昨年ぶち上げ、今年3月には「働き方改革実行計画」を策定し、公表した。電通問題もあり、特に長時間労働是正に関して多くの企業で検討されている。その流れの中での上記調査である。進め方によっては、社会や従業員からかえって反発を招く可能性を示唆している。

政府の「働き方改革実現会議」などの委員としてご活躍の相模女子大学客員教授の白河桃子氏の「御社の働き方改革、ここが間違っています」(PHP新書、2017,7刊)という本を読んだ。今年5月にグループウェアを販売するサイボーズのポスターが話題を呼んだそうだ。「ノー残業、楽勝!予算達成しなくていいならね。」「労働時間削減、結局現場にムチャぶりですか?」「結果出せおじさんと、早く帰れおじさん・・・、ふう・・・(ため息)」など「労働時間削減」を押し付けられた会社員の共感を呼んだという。そして電通事件で経営者が辞任した衝撃を受けて、まず残業時間を減らすことが最優先になっている事情もあると青野社長は言い「経営者よ、落ち着け」と。そして、白河氏は言う。「早く帰れ」というだけの見せかけの働き方改革は、かえって最悪のシナリオになる。働き方改革を経営戦略ととらえ、「会社を魅力的な職場にするプロジェクト」と捉えて取り組むべきと説き、伊藤忠商事やSCSK、カルビー、日本電産など名経営者が続々と働き方の変革を宣言、実行に移している事例を紹介している。「朝残業20時退社」に取り組む伊藤忠商事は、取り組み3年後の2016年3月期決算で財閥系を抜いて商社トップの成績を収めた。猛烈な職場と思われるアクセンチュアやリクルートでも改革が進んでいる。サイボーズでは「一人一人が選べる働き方」などの改革で離職率が五分の一に減少。
長時間残業規制は罰則もつき、避けては通れない。労働人口が減少し、生産性の向上が今まで以上に求められる中で、将来を見据えた働く環境改善を行い、「ギスギス職場」を「わくわく職場」にし、より魅力的な企業にするための施策を経営トップが自ら先導役になって進めることが成功のカギではないだろうか。

ここまで書いて、今朝の日経を見ると、サイボーズ青野社長の署名入りの1面広告が!題名が「働き方改革に関するお詫び」とある。何をお詫びしているのか?メディアに登場し、全国で講演をし、政府へ意見し、本を出版してもなお、働き方改革に関して伝えたかったことが伝わっていないことに対するお詫びだ。残業をさせまいとオフィスから追い出し、深夜残業を禁止して早朝出勤を黙認し、働き方改革の号令だけで現場に丸投げする職場。ありがた迷惑なプレミアムフライデーとやらは・・・。ということで、発信力を強化したいということで内山勇士氏作のアニメを作ったそうだ。「サイボーズ アリキリ」で検索すれば見れる。サイボーズも愛媛県松山で起業してから20年。自ら働き方改革を実践しながら全国に普及させたいと頑張っている。

不倫や政活費詐欺などが後を絶たない議員に日本は任せらるか?

以前から、信じられないことが国会議員、地方自治体議員に起こる。現在も民進党の山尾氏のW不倫疑惑がマスコミを賑わしている。神戸市議会の橋本市議の政務活動費詐欺事件も氷山の一角かとも思えてしまう。国民や、市民の選択を経て選ばれた公僕が、バレレバ社会的制裁を受け、自分の人生破滅の危機を招くことくらい分かる筈と思うが、なぜなくならないのだろうか?
「失敗を認める難しさ(http://okinaka.jasipa.jp/archives/37)」で、デドローの【なぜリーダーは「失敗」を認められないか】(日本経済新聞社、2011.1刊)を紹介した。その一部を下記する。
「人は現実を否認しがちで、それが疵を深くする」人間本質機能として世界的にこのような事象はあちこちで起こっていると説く。我々に身近なシステムプロジェクトにおいてもリーダーがまさに同じ過ちをおかし、泥沼にハマってしまう現実を見ると、「ヤバいなと思っても、見ないふりをする」というのは人間の本質的な特性なのか?と・・・。「否認」とは、ある不愉快な現実に対し「本当ならひどすぎる。だから本当ではない」と考える無意識の心の働きを言う。米国ニューヨーク州知事がホテルに高級娼婦を連れ込んだところを目撃され辞任に追い込まれた事件があった。記者に「あんなことをしたらいずれ明るみに出ると、なぜ思わなかった?」と聞かれて『確かに見つかったら・・・ということは頭をよぎりました。でも明白な事実に向きあいたくないがために、それを無視してしまうことも、人生ではよくありませんか?』と答えたそうだ。否認の本質が明確な事実として述べられている。
前稿は、IT業界の大きな悩みである失敗プロジェクト抑制のために、人間の特性を認識した取り組みを、デドローの教訓を参考に説くことに主眼を置いたものだった。
しかし、国民から選ばれ、国民の貴重な税金を使って国民のために働く議員の自制の利かない、非人間的な行為はプロジェクトの失敗の比ではなく、国民の目に晒され議員自身の人生の破滅を招く怖さがある。こんな中でも「ばれなけらば」「ばれることはない」「ばれても知らぬ存ぜぬで押し通せる」と現実を否認したい思いで行動に走るのだろうか?
国会論議をみていても、「記憶にない」「記録にない」あるいは「前言を撤回する」と言えば責任は逃れられ、無為な時間を税金をかけて過ごせば自分達の思いが達成できる、など一般社会では通用しない常識がはびこっているように見受けられる。「働き方改革」「人づくり改革」などスローガンは立派だが、国会議員の「働き方改革」、「人づくり改革」に真剣に取り組まなければ日本の将来が危ぶまれることになりはしないか、心配だ。人柄を判断するのは難しいが、選挙で選ぶ我々の責任も真剣に考えたい。