「自己改革2012」カテゴリーアーカイブ

「ポジティブ心理学」とは(日経)

今朝の日経朝刊19面「今を読み解く」に日本赤十字豊田看護大学島井哲志教授の記事がある。「「ポジティブ思考」とは」とのタイトルに惹かれて読んだ。冒頭「人間はネガティブな情報に興味をひかれやすく、私たちは、気の滅入るようなニュースに囲まれている。」から始まる記事だ。「いじめ問題」に見るように、学問的にもネガティブな側面を重視する道を心理学では辿ってきており、それはそれで、多くの人の役に立ってきた。しかし、好奇心や、友情などポジティブな心的機能は少数の人たちによって研究されてきただけであったが、もっと広く研究されるべきと主張する。

ポジティブ心理学の研究テーマのひとつは幸福感だ。毎日1回以上誰かに親切にすると、自分自身の幸福感を高めることが示されている。一般的に美徳と認められている、人間性、勇気、節度、正義、知恵、超越性に大別される24種類の特性の尺度開発も行われている。強みや、生きがいという自分の資質を活かす研究も進められ、人事面でポジティブ心理学を活かす試みもある。それぞれの研究成果を表わす本の紹介が記事の中でされている。

ベネフィット・ファインディング

日経ビジネスなどの記事や本の出版も多い河合薫氏が、昨年末の日経ビジネスオンライン(http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20121221/241411/?P=1)に「「現状を打破したい!」東北の被災者たちにもらった一歩踏み出す勇気」との記事を投稿している。島井氏も「東日本大震災によっていまだに多くの人が困難の中にいる。その支援活動に携わった心理学者は、災害経験をストレスとみる立場に基づき、強いストレスによって心の傷が深く残ることを主張するものであった。ポジティブ心理学では、私たちが強いストレスを契機として成長する可能性を示してきた。忘れられない出来事によって、生き方が変わるポジティブな側面である。」と言われている。一方、河合氏は、現地の人たちとの交流の中で、子供も含めて、「変わろう、変えよう、変わらなきゃ」と一歩踏み出す人たちが増えてきたのを実感したと言う。他人のせいにしていても仕方がない。自分達で現状を打破し、新しい街を作ろう」との活動だ。この変化を河合氏は「ベネフィット・ファインディング」と言う言葉で表現している。この言葉は、数年前から医学の世界で注目されている概念で、慢性疾患や不治の病に侵され、「病とともに生きる」ことを強いられた人々の中に、絶望感が生じながらも生きる力を逆に強め、普通の状況の中にさえも価値を見いだす人がいる。そうした現象を受けて生まれた概念だそうだ。ポジティブ心理学の1テーマでもある。

「ベネフィット・ファイディング」のためには、困難と言う真っ暗な世界に閉じ込められた中で、小さな一条の光に気付かねばならない。そのためには、まず自分が置かれている状況を素直に理解することが重要だ。決して他責に世界に陥らずに、自分が遭遇している困難を否定しないで、自分のありのままを受け入れる。「人は現実を否認しがちで、それが疵を深くする」(デドロー、http://jasipa.jp/blog-entry/6337)のが人間の本質とのブログを紹介したが、危機にじかに向き合うことが解決への第1歩とのポジティブ心理学はプロジェクト管理、企業経営でも参考になる。

あなたはなぜITエンジニアなんですか?

昨日(26日)のITpro Enterprize記事の中で表題の記事に目が止まった。日経SYSTEMSの池上俊也記者(日経SYSTEMS創刊以来の担当を離れる際、最後の特集として書いたもの)の記事である (http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20121225/446381/?ml)。

今の仕事にやりがいや喜びを持つためには「志」が必要で、多忙の中でも是非とも「ITエンジニアという職業の意義や目的・目標」を考えてみることの提言だ。池上氏は、ITエンジニアと言うのは魅力が多いと言う。その理由を3つ挙げる。

  • 1.ITが生活・社会・企業のインフラとなっている今、それを支えていると言う使命感や充実感はITエンジニアでないと得られない。
  • 2.職種や専門分野は多岐にわたり、多様性が求められるだけに活躍するチャンスに溢れている。
  • 3.周りをあっと驚かすような価値を、他の業種・職種ではそう簡単に生み出せない。

この主張の正当性はともかく、ITエンジニアをやっている今、このような認識をした上で、如何に個々人が「志」をもつかが重要になってくる。池上記者が、業界を代表するITエンジニアの志を取材して回った結果、トップエンジニアの志とは下記のようなものだったと言う。

  • ●ITで世界を変えたい
  • ●みんなと達成感を味わいたい
  • ●どこでも通用意する私でありたい
  • ●多くの人の助けになりたい
  • ●最新技術に挑戦し続けたい
  • ●プロジェクトで自分を高めたい
  • ●価値あるアーキテクチャを生み出したい

トップエンジニアは、このような志を心に刻み、行動に移しているのだろう。皆さん元気で前向きで。多忙なはずなのに、それを多忙と感じない。むしろ自分に与えられたチャンスと捉え、活躍する舞台がドンドン広がる。そのため、多くの人が彼らの基に集まり、協力する。従って成果はどんどん上がる。まさに志がエネルギーとなって、正のスパイラルを創りだしている。

2012年はもうすぐ終わり、新たな年を迎える。年の初めに、「志」について考えてみては如何だろうか?今の仕事に喜びとやりがいをもつために、そして自分の人生を有意義なものにするために・・・。

「人の心に棲んでみる」(本田宗一郎)

本田宗一郎氏のメッセージには、いつも感銘を受けている。「人間の達人 本田宗一郎」(伊丹敬之著、PHP研究所)の本の中に、宗一郎氏の言葉として「人の心に棲んでみる」というのがあり、深い言葉として印象に残った。

宗一郎は、他人の心理を読み分ける能力が優れていた。その心理を読むコツを「人の心に棲んでみる」と表現した。単に他人の心理を外部者として考えるのではなく、相手の心に棲む。すなわち、自分をその立場に置き、一瞬の話ではなくどっぷりとつかる。「人の心に棲むことによって、人もこう思うだろう、そうすればこういうものをつくれば喜んでくれるだろうし、売れるだろうと言うことが出てくる。それを作るために技術が要る。すべて人間が優先している」と。研究所の仕事は人間を研究することだとも言ったそうだ。

宗一郎の有名なモットーに「造って喜び、売って喜び、買って喜ぶ」というのがある。「技術者がその独自のアイデアによって文化社会に貢献する製品を作り出すことは何物にも替えがたい喜びである。然もその製品が優れたもので社会に歓迎されるとき、技術者の喜びは絶対無上である」と言う。

マーケッティング、イノベーションと言っても、原点は人が、社会が、何を求めているかを如何に読むかである。顧客満足度を追求するにしても、顧客の期待度を知ることが原点であり、そのためには、宗一郎氏の言う「人の心に棲んでみる」との強い思いがなければ、人や社会の求めていることの真の把握は無理かも知れない。

宗一郎氏は、「ワイガヤ」に見るように、社員との対話を通じて、「人の心に棲む」訓練をされたのかも知れない。ともかく社員に対する思いは深く、社長退任時、1年半かかって全国700か所の事業所のほぼすべてを回り、「全員」にお礼を言われたそうだ。

背広を着たサラリーマン風の人が、電車の改札口の前で定期を捜して、後続の人の邪魔になっている姿を見ると寂しくなる。他人に対する日頃からの配慮がなくて、顧客満足度を論ずることは出来ない。難しいことだが、常に「人の心に棲んでみる」ことを意識しながら行動してみたい。