阿倍首相、生産性革命の本丸はここ(日経)

通常国会が始まり、首相施政方針演説に基づく国会論議真っ最中だ。国会での議論がこんなにも非生産的か(質問と答弁がかみ合わない)、毎度思い知らされ、聞いているほうが馬鹿にされたような気分で、最近はほとんど聞いていない。とりわけ、今回の施政方針は冒頭から、”改革“、”革命“の言葉が躍る。その中で「生産性革命」も大きな課題として挙げられた。
1月21日の日経朝刊8面「HOT STORY」で編集委員の西條郁夫氏が「阿倍首相、生産性革命の本丸はここ」とのタイトルで記事を書かれている。
生活水準の向上や豊かさのために生産性に焦点を当てるのは正しい。しかし、IT化や、自動走行などの新技術の開発に注力する中小企業を優遇する施策のみでは、目標とする過去5年の実績の2倍強にあたる年率2%の生産性UPは見込めない。一番大切なことを置き去りにしている。それは働く人の「やる気」だという。同感だ。
西條氏も言うが、職場の人事政策まで政府が介入することは実際には難しいことだが、施政方針演説などで掲げられている“時間外労働の上限規制”など政策の総動員だけでは、目標達成は難しいだろう。少なくとも各企業に対して、政府としてできる施策に加えて、“人のやる気”を高める努力を促すべきと考える。
記事の中にある米IBM傘下のケネクサという調査会社が12年に実施した国際調査結果は驚くべきものだ。働く人のエンゲージメント(会社の目指す方向と自分のやりたいことの合致度、あるいは仕事への情熱)に関するものだが、インド77%、米国59%、ドイツ47%、フランス45%、韓国40%だったが、日本は28か国中最下位の31%だそうだ。信じられない数字と思われるが、西條氏も言うように「まじめさ」「勤勉さ」では引けを取らなくても、言われたとおりにこなす受け身のまじめさではなく、積極的に提案型の仕事へのかかわり具合、仕事の質を高める提案力などを“エンゲージメント”と考えると不安になる。日本人の低エンゲージメントと日本経済の低生産性は密接不可分の関係にあるのではないかと西條氏は指摘する。
西條氏の提案する施策は、「労働市場の流動性を高め、働く人の選択肢を増やすこと」と「若い人の発意やアイデアを生かす工夫」だ。前者は、「他に選択肢がないから、仕方なく会社に留まる」ではなく、「この会社でずっと働きたい」と前向きに考え、世の中で通用する人材を志向する人を増やしたいとの思い。後者は、中高年が多く若手の薄い逆ピラミッド型の人員構成の中で、若手の意見が抑制され、エンゲージメントの低下を招いているとの懸念から。
西條氏の提言と同じようなことを、最新のロボットを研究・導入し成果を上げている和食チェーンのがんこフードサービスの(大阪市)の新村猛副社長(工学博士)も言っている(1月23日朝日朝刊7面の“波聞風問”より)。これは次回のブログで紹介したい。

現場の共感が不正を防ぐ!(日経コラム)

1月15日の日経朝刊5面のコラム「経営の視点」の記事に目が留まった。編集委員塩田宏之氏の記事だ。タイトルは「現場の共感、不正防ぐ~稲盛氏が誉めた”2000円節約“」。
最近の品質データ不正などの問題が、経営者(社長など)と社員との意思疎通、信頼関係不足にも大きな原因があるとの懸念を指摘する。
事例として、京セラ、クボタ、積水ハウスの経営トップの施策を紹介しながら、「経営者への共感があれば社員も発奮し、飛躍や革新をもたらすかもしれない」とし、「面従腹背は、飛躍や革新どころか、不正や隠ぺいが起きかねない」と警告する。
京セラの稲盛氏は、工場など現場に赴く、社員に感謝する、コンパを開いて杯を交わす、など、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」との経営理念を自ら実践するためにも社員とのコミュニケーションに注力した。再建を任された日本航空でも同じで、エピソードとして下記のようなことを紹介している。「伊丹空港視察時、カウンター勤務の若い女性社員が月2千円のコスト削減を説明した。金額の少なさに周囲は困惑したが、稲盛氏は“そういう努力が一番重要なんだ”と大いに誉めた。この件はメールで部署を超えて広まった。」(京セラのコンパ部屋に関しては、私のブログでも紹介している。HTTP://OKINAKA.JASIPA.JP/ARCHIVES/382)
クボタでは、社員約1万1千人の自宅に毎年、バースデーカードが届く。それには木俣社長の顔写真と手書きのメッセージが印刷されている。課長時代、事故やけがの多さに悩み、「ケガするなよ」と誕生日を迎えた社員一人一人に声をかけていたらピタッと止まったという。海外含めて、現場にも頻繁に出向き、その際は「ゆっくり暇そうに歩く」ことがコツだとか。社員が話しかけやすいように。
積水ハウスの和田会長は月1回、店長など次世代を担う現場のリーダーら約80人を集めて「希望塾」を開いている。3時間ほど経営ビジョンや体験談を語り、その後社員が感想や意見を述べる。和田会長曰く「インターネットの時代になっても、顔を突き合わせて心を通わせる人間関係が重要」と。
一般企業では、一般社員から見れば、「社長は雲の上の人」で、“話しかける”、あるいは“話しかけてもらえる”なんてことは想像できない存在であることが多い。社員からは社長を遠い人と見て、社長は社員を(希望も交えて)近い存在であると信じたい。そのような関係の中で、実際、社長は近い存在であり、我々のことを考えてくれていると一般社員に思ってもらえることが、信頼関係構築への第一歩とも言えるのではないだろうか。社員が熱意をもって仕事にあたることが出来る環境つくりが、「人づくり革命」の基本と心得たい。

あけましておめでとうございます

雲一つない絶好の天気の中で、2018年、平成30年を迎えることができました。といっても、北陸、東北、北海道では豪雪に見舞われ、大変な年明けではないかと、ご苦労をお察しいたします。
昨年3月、6年間続けさせていただきましたJASIPAの特別顧問の職を70歳の大台を迎えたこともあり、辞させていただきました。が、何が起こるか不透明さがますます増す時代、JASIPAに集う中小IT企業こそがその機敏さ、柔軟さを活かしてそれぞれの力を糾合して立ち向かうことが、日本の企業の成長に寄与できるものと確信し、FBなどを通じてその活動を見守っていきたいと思っています。
JASIPAは、理事長はじめ幹部の皆さんが若返り、目に見えて活動が活発化してきています。これまで関西支部では活動が活性化していた、“JASIPA協業フェア”が東京でも始まり、“ICTビジネス委員会”と合わせて、各社の強みをアピールしながらアライアンスを強化する場が強化され、そして“グローバルビジネス委員会”においては、2016年のベトナムに続きフィリピンのIT団体との提携も行われました。3か月に1回行われている定期交流会(非会員も参加可能)もますます活況を呈しているようだ。1月24日(水)は「5年後の会社はどんな姿だろう~5年後をイメージすれば、やることが山ほど湧いてくる~」と題しての株式会社システムインテグレータ代表取締役社長 梅田弘之様の講演も興味深い。その他“研修委員会”や“ES委員会”もいろんな工夫を凝らしながら会員サービスを強化している。
大企業が集うJISAとは雰囲気が全く違って和やかに、ある時は厳しい意見交換ができる雰囲気を持ち合わせている。委員会含めて会合終了後は賑やかな会話が飛び交う交流会が待っている。人の輪を作り、会員同士日常的に交流を深めているようだ。
不透明さが増す時代においては、多様な情報を交換しながら、時々の迅速な意思決定の支えにすることが非常に重要になってくる。
まだ会員でない企業の方も、ぜひ一度JASIPAのホームページをのぞいていただきたい。そして、一度上記各種会合に出ていただければその雰囲気をお判りいただけると思います。
日本のIT企業が日本だけではなく世界を相手に戦える実力を備えるためにも中小IT企業が協力しあって頑張っていただきたい。その輪の中心にJASIPAがある、そんな世界を初夢で見たいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。

我が家のベランダでは、正月に合わせるように水仙の花が満開になりました。シクラメンやメネシア、パンジー、カランコエ、ゼラニウムなどの花も見事に花咲かせています。