感染リスク 温暖化で今後増大!?

日本もやっとCO2削減に向けて世界から非難を受けていた「古い石炭火力発電所の発電量 9割程度削減へ調整」することになった。温暖化の影響と言われる世界的な気候変動や山火事の増大、氷河の溶解などが日々報じられており、日本でも毎年のように豪雨被害が発生している。その中で、最近温暖化の影響で感染症が多発する可能性が論じられるようになってきた。

6月28日の日経の「感染症リスク温暖化で増大~凍土から炭疽菌/デング熱、蚊の生息域拡大~」の記事を見て、コロナ禍のような事態が、温暖化の影響でより頻度が多くなることが懸念されるのではないかと大きな危惧を感じた。

シベリア北部では4年前住民が炭疽菌に集団感染し、軍まで出動する騒ぎが起きたが、炭疽菌を持つトナカイの死骸が永久凍土から姿を現し、他の動物に感染したのが原因だったそうだ。シベリアでは今年30度を超える日があったそうで、ロシアの研究者は「気候変動により人獣共通感染症のリスクが高まっている」と言い、フランスの研究チームはシベリアの凍土から新種のウィルスを発見したと言う。

他の地域でも温暖化の影響で感染症が広がっている。南米では海水温が例年より高いエルニーニョ現象の発生時にコレラが流行すると言う。気候変動で頻発する洪水もコロナの感染者を増やす。2014年に代々木公園を中心に発生したデング熱も気温上昇で本来熱帯や、亜熱帯地域の病気が媒介する蚊と共に北上してもので、重症型のデング熱は今では100か国以上に広がりを見せている。他にも多くの事例が紹介されている。

致知7月号でも、月尾嘉男東大名誉教授が「人類は幾度もウィルスとの戦いを乗り越えてきた」との記事の中で、

今一部の感染症学者が憂慮しているのは、シベリアなどにある永久凍土が温暖化のために溶け始めていることです。永久凍土の中にはマンモスやトナカイの死骸、さらに旧ソ連時代に埋められた人間の死体などもあり、シベリアでは露出した死体に付着していた未知のウィルスの蔓延によって、数十人の死者を出しています。永久凍土の融解が進めば爆発的に拡大する恐れがあります。

と述べている。

温暖化が進めば、今回のコロナウィルスのようなパンデミックが起こる頻度は従来にも増して増えることが予想される。環境政策に詳しい専門家(東京大学高村教授)は「気候変動への関心が薄れている。自然とつながる気候変動のリスクは感染症の問題でもある」と言う。医療体制など、今回のコロナウィルスの貴重な経験を医療体制の充実など。今後の対策に是非ともつなげて欲しい。

介護職にもっとリスペクトを!

7月に入り、コロナウィルス感染も落ち着く事を期待していたが、期待通りには行かないようだ。何か月もの間、医療関係者皆さんの命を懸けた献身的なご尽力にはほんとに頭が下がり、国民すべての人が敬意を表している。その一方で、介護にあたる方々は、政府、メディアともに医療関係者に比しては注目度が少ないように感じる。

「介護職にリスペクトを」との題で朝日新聞の”オピニオン&フォーラム“に大阪健康福祉短大の川口啓子教授が投稿されている(6月3日)。団塊世代が大量に後期高齢者になる時代を迎えるに当たって、国としても、企業としても、個人としても、切実な問題であることから、ブログで取り上げることにした。

川口氏は「今でも現場は絶対的な介護士不足にあえいでいる。根底には、介護と言う仕事に対する”無意識で悪意のない見下しがあるのではないか。誰もがみんな年を取る。いずれ世話になる人たちへのリスペクト(敬意)は足りてますか?」と問題提起する。
政府は、65歳以上の高齢者がピークを迎える2040年度には、介護職を100万人以上増やす必要があると試算している。が少子化で労働者が600万人以上減ることが予想される中、介護職に対する偏見もあって、今でも介護人材養成施設の学生はどんどん減り、入学者数はいまでは定員の半分にも満たない状況(専門学校や短大などの数は08~18年の10年で20%近く減った)を考えると増員は全く困難な状況らしい(文科省は定員割れの養成施設は縮小または閉科するよう指導)。なぜ、需要はあるのに、希望者が増えないのか?
介護職を見下す世間の風潮が加速しているのではと指摘し、介護職に対して「簡単、単純。誰でもできる、学歴もいらないつまらない労働」との思い込みがあるように感じる」と言う。国が昨年改正した“入管法”に関して一部報道で「単純労働に門戸を開いた」との表現で、介護も対象業種に挙げられたが、まさにこれが世間の認識(ネットでは底辺職とも)と言う。このような認識であるため、なりたい職業ランキングにも登場せず、志望者もいない状況が加速し、大学にも介護福祉養成課程はほとんどないそうだ。不愉快な事例として、おむつを交換している介護ヘルパーが利用者に「こんなきたない仕事、娘や孫にさせられないわ」と言われ悔しい思いをしたことが挙げられている、この利用者も悪気がなく、感謝の言葉も口にするそうだが、明らかにヘルパーの仕事を見下している。
家内の母が近くの老人ホームでお世話になっている。92歳で、いたって体は元気だが、目が見えにくくなり、部屋でも物をどこにおいたか分からず、ヘルパーさんを困らせることがある。しかし、ヘルパーさんは、怒ることもなく母に親切に対応してくれる。
川口氏は、どんなことを言われても、つらくても、高齢者の声に耳を傾け、心を開かせるまでに至る行為に介護の専門性を備えた実践力が必須と言う。食事介助などいろんな局面でケアされる側のストレスを知ることも必要となる。
今の若い人たちも、いずれ両親がお世話になる時、あるいは自分の老後について、介護サービスが滞りなく提供されるなんて夢物語を描いているのではとの疑念も持つ。介護の現実に出くわしたとき、その大変さは分かる。
川口氏は最後に「介護職が不足する中、家族介護はまだまだ続く。そこで不可欠なのは愛情でも根性でもなく知識だ。老いを知り、ケアを学ぶ、それは要介護を忌避することなく、老いを肯定的に受け入れる社会のインフラとなる。そのインフラが介護の担い手をはぐくむ土壌になる」と締める。

コロナ禍で医療崩壊が大きくクローズアップされた。団塊世代が高齢化するにともない、今のままでは介護崩壊が起こるのではと危惧される。もっと介護職の重要性と、そのスキルに焦点を当て、相応の処遇をすることで官民あげての対応が望まれる。でなければ、家族介護が増え、ますます介護離職を誘発し労働人口もさらに減らすことにつながりかねない。
「介護職に是非ともリスペクトを!」が切実な思いだ。

ここまで書いて、今朝(7月6日)の日経を見ると「新状態での介護 仕事とどう両立」の記事があった。コロナ禍でデイサービスが停止したりして、苦労している方々や企業の取組が紹介されている。政府は2017年“ニッポン1億総活躍プラン”で20年代初頭までの「介護離職ゼロ」を目標に掲げたが、2018年で10万人近くの介護離職者(うち女性が8万人近い)との厚生省の調査があるとの事。そして介護を理由とする離職者は要職に就き始める40代以降の数値が高いそうだ。企業としても頭の痛い問題だが避けては通れない。