「IT業界全般」カテゴリーアーカイブ

一粒1000円のいちごがITで(宮城県山元町)

標題の報道を何かで見て驚いたのを思い出した。インターネットで調べると、一房25,000円(石川県産)のぶどうもあるそうだ。これらが、ITによるデータ管理で実現していると言う。1月7日付けの日経朝刊「イノベーション2015④~IT農業~」では様々な分野でのITの活用が進んでいることを紹介している。これまで人の経験と勘に頼るしかなかった農業がITで、儲かる農業、低コストで誰でも出来る農業に変わろうとしている

野菜の収穫日と収穫量を事前に予測するサービスをNTTデータと日本総合研究所が折半出資のJSOLが開発、2日程度の誤差で収獲日が予測できるそうだ。農業への「トヨタカイゼン方式」を取り入れた農作業管理ソフトを導入して作業効率を上げたところもある。品薄が続く日本酒「獺祭」を製造する旭酒造は、不足気味の原料米山田錦の安定調達の為に富士通の農業クラウドを導入。いつ、どの農場でどんな作業をしたか、稲の丈や茎の数などのデータをパソコンやスマートフォンなどで記録し、最適な栽培条件を分析する。今年から本格的に、この取り組みに参加する生産者を増やし、増産体制をとるとの事だ。

富士通は、今年ベトナムに植物工場を稼働させるなど、農業クラウドをアジア各国に本格展開するそうだ。農業メーカーの井関農機や、ヤンマー、クボタも、IT活用に本腰を入れ始めたと言う。加えて米グーグルも昨年11月に。農業技術ベンダーや技術面で支援する「ファーム2050」を立ち上げた。

冒頭の「いちご一粒1000円」の件は、東京でIT企業を経営していたGRAの岩佐大輝社長が、壊滅した故郷のイチゴ産地を、新しい形で甦(よみが)えらせた話だ(伊勢丹で販売)。岩佐さんの凄いところは、産地を震災前の元に戻す復興ではなく、世界最高級の産地へと突き抜ける戦略をとったことだ。岩佐さんはこれを「創造的復興」と呼んでいる。そこで栽培されるイチゴやトマトは、温度、湿度、日照、水、風、二酸化炭素、養分などが全てITで制御されている。制御データには、この道35年のベテランいちご農家の匠の暗黙知を組み込んだ。インドにも進出し、同じ手法でのいちご栽培を目指している。このようなことが出来たのは、岩佐さんの地元の復興にかける熱い思いと、地元の皆さんとの徹底的なブレストを通じての応援、そして東京のIT経営者仲間(プレボノチーム)の支援があったから。山元町の人口1万に対し、見学者が2013年で約4000人だったそうだ。

2050年には地球人口が100億人になり、食料を70%増産しなければならないという。と共に日本では地方再生、農業再生を重要な成長戦略として進めようとしている。日経の記事にもある「脱“経験と勘”効率アップ」に加えて、世界最高級のものを作り世界に広げて行く施策も重要になるが、いずれにしてもITの出番だ。

「いちご1000円」の話は「一粒1000円のイチゴをつくる「データ農業」」(DIAMOND Online」(http://diamond.jp/articles/-/49347)より。

 

SI企業が“絶滅危惧種”に指定される日!!!

2010年1月のJASIPA交流会で講演していただいた元日経BPの田中克己氏の衝撃的なタイトルの記事がITpro(2013.7.25)に掲載されていた(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130723/493403/?mle)。田中氏は従来から「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」などの著作本や、日経BPの雑誌などでIT業界に対して警鐘を鳴らし続けておられる。当ブログでも以前「受託開発会社はもう終わり(http://jasipa.jp/blog-entry/7602)」とのITproの記事を紹介した。今回の記事では、「絶滅危惧種」という、ショッキングな言葉に驚いたが、田中氏はこのような言葉をわざと使いながら「日本のIT業界よ、目を覚ませ!そして頑張れ」と激を飛ばしておられるのだと思う。

今回はユニアデックスの戦略マーケティング部のエヴァンジェリスト高橋優亮氏の講演話として紹介している。高橋氏は「クラウドサービスの高度化で、誰でもインフラ環境を調達でき、SIを請け負える時代になり、SIは一人でも出来る時代になった」と。SI企業は今後、2種類に分かれると予想。「オーダーメイド型商品を作りこむSI企業」と「コモデティ商品を組み合わせて提供するSI企業」と言う。

前者の代表例は金融機関の勘定系システム。需要はなくならないが、極めて高い技術力、業務力、動員力を求められつつ、ピークダウンが激しい。顧客のニーズを把握できない、特徴ある技術力を持たないSI企業は排除される。かつこのような企業は内製化も進めている。後者は、その商品の利用価値を、家電量販店のように顧客に説明する力が求められる。そのためには、国内外の商品動向をウオッチし理解することも必要。「安く、早く」も求められる。

価格競争が激化する中で、如何に顧客にとっての利用価値を高め、それをアピールできる説明力、顧客と共に顧客の課題を解決する「強い思い」も不可欠だと言う。誰でもITインフラ環境を調達でき、SIを請け負える時代になった今だからこそ、違いを鮮明にできるSI企業だけが絶滅せずに生き残るのではないだろうかと締めくくる。

田中氏は、私が現役時代決算発表会には必ず顔を見せてくれ、いろんな話を聞かせて頂いた。IT業界は、確実にこれまでにない変化を受けている。国内マーケットは減り、グローバル競争に打ち勝たねばならない。田中氏の激に、何らかの答えを出さなければ「日本のIT業界に未来はない」との危機感をまずは持って、事に当たらなければならないと思う。

SIと運用が消える??!!

日経コンピュータのインターネット記事(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20121031/433944/)に驚いた。日経コンピューター2012.6.7号の記事の再掲だ。退職してから世間の動向に疎くなってしまった。

リード文に『米IBMが満を持して投入した「Pure Systems」は、ハードとソフトを統合した垂直統合型システムだ。IBMはPure Systemsを「エキスパート(専門家)・インテグレーテッド(統合)・システム」と呼ぶ。これまで「門外不出」としてきたシステムエンジニアのノウハウまでハードに統合したことを表す。ユーザー企業は、社内に専門家を抱えたり、外部のシステムインテグレータに依頼したりしなくても、システムを構築し、運用できるようになる。システムの構築や運用に人手が不要なのは、パブリッククラウドも同じだ。クラウドと、メーカーのハード回帰という二つの垂直統合によって今、システムインテグレーション(SI)と運用というビジネスが大きな岐路に差し掛かっている。』とある。IBMが今年2月に発表したらしい。

アマゾンや、グーグルなどクラウド事業者は既に、ベンダーの手を借りずにソフトやハードを開発し、ユーザーに直接サービスを提供している。そのため、IBMなど大手メーカーは、市場をクラウド事業者に奪われてしまいかねないため、クラウドと同様にシンプルに運用できる製品として垂直統合型システムに力を入れている。ORACLEの「ORACLE Engineered Systems」も、ハードとソフトを工場出荷時に組み合わせ、最適化して顧客に届ける垂直統合型システムだ。ORACLE社は、「顧客のIT支出の70%を占めるインテグレーション費用を不要にする」と言う。IBMは「システムの運用にかかる人件費を86%削減できる」と。国産ベンダーも周回遅れで、垂直統合型システムの強化に方向転換し始めたそうだ。日立は2012年末に市場投入を開始、富士通は2013.3までに発売、NECも2012年度中に市場投入すると言う。

「クラウド」の着実な進展に伴う、大手メーカーとクラウド事業者の戦いとも言えるのだと思う。確かに、ユーザー企業は、メインフレームからオープンシステムへの移行に伴い、マルチベンダー構成によってシステムは複雑化し、インテグレーションや運用のコスト増大に頭を悩ませている。そこに登場した「クラウド」はユーザー企業にとっても大きな魅力になってきていると思われる。

内製化(ユーザー自身がシステム部門を保有)が進み、システムインテグレータや運用ベンダーが不要になるのか?この動きは無視できない。