「Orchestration」(ともに響きあう)

この言葉心に響きませんか?ギリシア・ローマ考古学者で、全国美術館会議会長、国立西洋美術館館長などを歴任し、平成25年から文化庁長官に就任された青柳正規氏の座右の銘だ(「致知2014.7」‘私の座右の銘’の記事への投稿文より)。

27歳のころボンベイの発掘調査を任され、発掘計画から、人員確保、資金集め、現場の指揮などあらゆる業務を自らの判断で行うことになった。その時、自分は寝食を忘れて働いているのに他のメンバーは契約時間しか働かなかったり、自分の専門知識以外で難渋し思うように調査が進まない時期が続くことになった。その時「仕事と言うのは自分一人の力だけでできるものではない」と心の底から思い至った。そこで、気付いたのが、上からの命令や自分の意見を押し付けるのではなく、今携わっている仕事の意義や醍醐味、何を解明すればどういう成果が得られるかなどを根気よくメンバーに伝え、全員が同じ目標を共有して自発的に仕事に打ち込める環境つくりの重要性だった。このような試行錯誤の中からOrchestrationと言う言葉を意識し始め、「メンバー全員が‘やらされている’のではなく、’自分でやろう‘と思って努力しない限りクオリティの高い仕事は出来ない」と言うことの実感を得たと言う。発掘調査では、何が出てくるか分からないため、人骨が出てくれば文化人類学者、家屋を発見すれば建築士に、稙物が出てくれば植物学者にと多様な専門家が力を合わせて初めて大きな成果につながる。

システムプロジェクトも全く同じだ。プロジェクトメンバーが顧客企業がどんな企業かも知らずせっせとプラグラムを書いていると言うこともあった。役割分担は当然あるが、個々のメンバーが、常にそのプロジェクトの意義や全体感を把握しながら、お互いに連携しながら進めていかなければ成功しない。プロジェクト発足時に作るプロジェクト計画書を充実させ、プロジェクトメンバー(パートナーも含めて)に徹底する。プロジェクトを通して個々のメンバーが何を目標として成長するかも記述することが必要だ。

プロジェクトのスローガンなどにも、場合によっては企業理念にも「Orchestration」は使える。お客さまとの間にも使え、お客さまに何か新鮮な心地よい響きを与え、感じてもらえ、それだけでもプロジェクトあるいは企業間の一体感向上に効果があるように思えるがいかが?

“一流”は人の心に灯をつける

以前、J&Jなど外資系の複数企業の経営者を経験された新将命氏の話として、人は下記5類型に分類されるとの話をした(%は存在比率)http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/entry/6333。

  • 「自燃型(5~10%)」
  • 「可燃型(80%)」自分では燃えないが誰かがマッチを擦ってくれれば燃えるタイプ
  • 「不燃型」
  • 「消化型(1~2%)」せっかくついた火を消しまわる人
  • 「点火型(5%)」

「致知2014.6」に連載されている「20代をどう生きるか」の43回目に京都市長門田大作氏が登場している。高校卒業後、京都市養育委員会に就職し、一貫して教育改革に取り組んでこられ、幾多の困難と直面する中、関係者(地域の人達)との徹底した対話を通して学校統合など困難な課題を達成してこられた。現在京都市長2期目を迎えるが、その門田市長の言葉。

平凡な教師は言って聞かせる。

よい教師は説明する。

優秀な教師は率先垂範する。しかし、

最高の教師は人の心に火をつける

稲盛和夫猛語録より。

「不燃性」の人は会社に要らない。

勝手に燃えてくれる「自燃性」であってほしい。

少なくとも私が近づくと燃える「可燃性」でなければならない。

すなわち稲盛和夫氏は、「自燃型」「可燃型」であると同時に「点火型」である。JAL再生でJALの文化・風土を変えたもっとも重要な要因は「点火型」だろう。リーダーの重要な資格要件かもしれない。

姫路城「白鷺」の色蘇る!

21日の日経朝刊40面文化面に「城を基の姿に 平成の大修復」と題した大きな記事があった。姫路出身者としては、副題「姫路城―白鷺の色蘇る」に目が止まった。姫路城は平成21年秋から5年かけての修復工事が来年3月で完成する。記事によると、「これまでの囲いが外され、初夏の晴天の下、鮮やかな白鷺が蘇った」とある。今月12日の姿が姫路市のホームページに掲載されている(http://www.city.himeji.lg.jp/s60/2851146/_21909/siro-weekly-photo)。Twitterなどでは「白すぎ」との意見もあるようだが姫路市の担当は「これが昔の姫路城の白さだ」と言う。東京オリンピックの年に「昭和の大修復」(木曾から芯柱を運び、姫路駅前の大手前通りを練り歩いた姿を思い出すー高校3年)以来50年ぶりの大修復だ。来年4月が楽しみだ(この時期に合わせて、高校卒業50周年記念同窓会の4月4日姫路での開催が既に決まっている)。

記事によると全国の城址で歴史的な建造物の修復が進行中らしい。天守閣や石垣を修理したり、戦災などで失われた建物を木造で復元する。主に鉄筋コンクリートで整備された「昭和の大修復」とは異なり、多数の城址が建造時の姿と工法を尊重しているのが、「平成の大修復」の特徴と言う。修復中または修復を終えた主な城は、北から弘前城、仙台城、白河小峰城、会津若松城、小田原城、掛川城、名古屋城、大洲城、熊本城。弘前城は10年かけての本格的な修復、仙台、白河小峰、会津若松は東日本大震災での損傷修復だ。

特に興味深いのは名古屋城。天守は太平洋戦争末期の空襲で焼失。現在は1959年に鉄筋コンクリート造りで再建されている。掛川城、大洲城、白河小峰城も木造での復元例があるが、名古屋城のような巨大な天守では例がないそうだ。天守も含めて本丸御殿も4年後の18年を目標に完成させるとの事だ。

熊本城も戦後コンクリート造りで天守を復元したが、1998年からやぐら門、塀や御殿を木造で復元する作業が続き、今後10年以上完成までにかかると言う。熊本城は、江戸時代には多数のやぐらを持つ全国有数の巨大な城だったそうだが、その復元を目指している。小田原城もコンクリート造りの天守を木造で復元中だそうだ。

記事では、明治維新後の廃城令や、戦災で失われた城を復元する動きが増えてくるだろうとみている。何と言っても城は次代に継承していかなければならない貴重な日本の財産だ。世界遺産姫路城は我が故郷の自慢だ。来年4月が待ち遠しい。