これまでにも、当ブログで「ポジティブ心理学」に関して何度か記事を書いてきた。今コロナ禍で、心の問題で悩み、自殺する方も増えており、政府も担当大臣を作り、対策を講じようとしている。その中で「自身の幸福感」を如何に高めるか、ポジティブ心理学が何らかの方向を示唆していると思われるため、再度取り上げる。
人間学を学ぶ月刊誌「致知2021.4」に連載されている筑波大学村上和雄名誉教授が、今回「幸せに生き続けるためのポジティブ心理学」と題した記事を投稿されている。村上教授は生命科学研究者として、「遺伝子が目覚めれば人生は変わる」との主張に基づいて、「ノーベル賞をもらう天才と普通の人とは遺伝子レベルで見ると99.5%は同じで、眠っている0.5%の遺伝子をどうやってオンにするかの違い」と、著書「スイッチ・オンの生き方」(平成21年6月、致知出版社)でも詳説し大きな反響を呼んだ。
ポジティブ心理学は、1998年にペンシルバニア大学のマーティン・セリグマンが、「人間が人間らしく幸せに生きるにはどうしたら良いか」を研究の対象にして始まった。
自らうつ病のカウンセリングを行う中で、発病の原因を解明し、その症状を和らげる方法を良しとしていたが、症状は和らいでも患者はみじめな人生を送っていた現実があった。そこで
「人は弱点を補うだけでは幸せになれない。プラス部分をステップアップする方が幸せになれるのではないか」
と考えたそうだ。そして
「最高のセラピストとは、ダメージを癒すだけではなく、患者のポジティブな特性を見つけだし、築き上げる手助けができる人だ。誰もが元来持っている特別な能力を自覚し磨き上げ、それらを日々の仕事や営みに役立てて初めて、本物の幸せを手に入れることが出来るのだ」
とも。「人間の心は変えられる。人々の願いを叶えるもの、それが“ポジティブ心理学”だ」とも述べている。
ポジティブ心理額から生まれた理論として、幸せが続くことを重要と考える「ウェルビーイング理論」がある。
”ウェルビーイング(より良い状態)“とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味し、幸せを構成する要素であると言われる。セリグマンは科学的な測定要素として5つの要素を提言している。
P:ポジティブ感情、E:エンゲージメント(物事に深く関わる)、R:リレーションシップ(良い人間関係)、M:人生の意味・目的、A.達成する
これら五つの指標は測定可能で、日々変動する。健康診断が身体の健康を測るのに対し。上記PERMA指標は心の健康診断ということ。詳細は省くが、最初の”P”に関して、幸せ感情を持っている人は長生きするとの実証データもあるとのことだ。ポジティブ感情を増やせるとっておきの方法を紹介している。毎日よいことを三つ書き留めること。どんな些細なことでもいい、「おいしくご飯をいただき幸せ」とか、「ありがとうと言われて嬉しかった」など、どんな些細なことでもいい。最初は難しくてもこれを繰り返すことで脳がポジティブになっていくと言う。
さらに24個の人間を特徴づける強みを抽出した。
・知識や知恵(創造性、好奇心、向上心、知的柔軟性、大局観)
・勇気(誠実さ、勇気、忍耐力、熱意)
・人間性(親切心、愛情、社会的知性)
・正義(公平さ、リーダーシップ、チームワーク)
・節制(寛容さ、謙虚さ、慎重さ、自制心)
・超越性(審美眼、感謝、希望、ユーモア、スピリチュアリティ)
個人の強みは才能とは別の物。強みは道徳的な特徴を持つが、才能は道徳と無関係。強みは才能と違い、後から培うことが出来る。人は24個の強みをすべて持っており、上位五つを頻繁に使うことでウェルビーイングを上げることが出来る(下位の強みは弱点ではない)。
ポジティブ心理学で重要なことは、ネガティブな感情も受け入れることだと言う。人間は危険を察知し、生命を守るためネガティブ感情がポジティブ感情より先に生じるように進化したため、ネガティブ感情を抱くのは当たり前。ネガティブな感情は書き留めたり、他人に聞いてもらいながら早く感情を捨て去ることが大切。ポジティブナな感情は書き出して、繰り返し読むことでスウィッチがオンになる。
ポジティブ心理学の効用は、インターネットでも大きな話題になっている。もっと広く広めて、コロナ禍の中、ネガティブ感情で悩まれている人たちに恵みとなることを祈ってやまない。
参考のため、過去のブログ投稿タイトルを下記しておきます。
・(ハーバードのポジティブ心理学(タル・ベン・シャハー) https://jasipa.jp/okinaka/archives/445
・「ポジティブ心理学」とは(日経)https://jasipa.jp/okinaka/archives/365