「組織・風土改革2014」カテゴリーアーカイブ

「大失敗賞」が社員の奮起を促す!

こんなタイトルの記事が「PHP Business Review松下幸之助塾2014年9/10月号」に掲載されている。太陽パーツ㈱の城岡陽志社長へのインタビュー記事だ。記事のリード文を紹介する。

表彰と言うと、優秀な成績をあげた社員をたたえるイメージがある。しかし、加工から製品開発まで行う異色の機械部品メーカー、太陽パーツは違う。挑戦の結果として大損害を与えた社員を表彰することで、再起を促すとともに、沈んだ社の雰囲気を一掃すると言う。1980年の創業以来、不況や円高にも負けず着実に黒字経営を続けてきた同社の力強さの背景には、どうやらユニークな表彰制度があるようだ。

もちろん「社長賞」「優秀賞」というものもあるが、ユニークな表彰制度として下記のようなものがある。「大失敗賞」「中失敗賞」「小失敗賞」、「良いところ探し大賞」「はい、喜んで大賞」「縁の下の力持ち賞」、「最多提案賞」「優秀提案賞」。たんに失敗したというだけでは表彰対象にならない。大きな課題に立ち向かい、チャレンジしたと言う行為が重要だと言う。この大失敗賞をもらった人が、奮起して、海外拠点作りに手を挙げ、上海に一大生産拠点を作るのに大いに寄与した事例が紹介されている。ものを頼まれた時に「はい、喜んで」と答えて積極的に仕事を引き受けた人に贈る「はい、喜んで賞」、日々の朝礼で行う「良い所探しスピーチ」で沢山褒められた人に贈る「良い所探し賞」など、ゲーム感覚でパート従業員も含めて表彰している。

今、日本企業の弱点として「創造性」の弱さが指摘されている。しかし、日本人に創造的能力が欠けているとの指摘は当てはまらないように思う。その能力を、何かが抑えているとすれば、「失敗を許さない風土」そして、「失敗すれば降格、左遷などの人事制度」ではないだろうか?上司―部下の関係を振り返ってみても、失敗を恐れずチャレンジさせる風土はなかなか作れていないと思われる。そんな風土を打ち破り、社員の創造力を喚起するための一つの取り組みとして、太陽パーツの取り組みは参考になるのではなかろうか。会社全体でやることは難しいかもしれないが、企画などの部門に限定して実行するのも意味あるのではと思う。しかし、制度をまねしてもなかなかうまくいかないことも考えられる、太陽パーツが成功しているのは、「まず社員を信ずること、リスペクトする」という基本が徹底されている。その上で、上記のような制度を実施することで、さらに会社と社員の間でより固い信頼関係が醸成されるという好循環が出来ていることだ。だから、太陽パーツはバブル崩壊時も、リーマンショック時も売り上げを落とさず、創業以来黒字を継続できている。

これからは、付加価値で勝負しなければならない時代、「失敗を恐れぬ風土創り」を今一度考えて見てはどうだろうか。

理想の上司の条件とは(ドラッカー)

米国カリフォルニア州にあるドラッカー・スクールで生前のドラッカーやその思想を受け継ぐ教授陣から学び、現在はコンサルタントとして活躍する藤田勝利氏へのインタビュー記事がPRESIDENT Onlineに掲載されていた(http://president.jp/articles/-/13671)。題名は『ドラッカーが教える「理想の上司の条件」』。興味深かったので紹介する。企業はいつもイノベーションを必要としている。イノベーションを起こすべき「社員1人ひとり」がいきいき仕事をし、創造的であるためのマネージメントの条件とは?がテーマだ。

ドラッカーはたった一つの行動を求める。それは「問う」こと。自分の顧客は誰か?もっとも活を届けたい人は誰か?そして自分の強みは?仲間の強みは?等々。とかくマネージャーは部下の弱みに目を奪われて彼らの創造性を引き出せないでいる。第一の理想の上司の条件は

弱みより強みに注目する人

そして、第二の条件にあげるのは、

インテリジェンスより真摯さを大事にする人

記事では、知識豊富で頭の切れる女性(Mさん)と、普通の女性だが普段から誰とでも分け隔てなく朗らかにコミュニケーションできる女性(Sさん)を例えに、ミーティングでの失敗・成功事例を紹介している。Mさんは決められたプロセスに沿って理路整然とプロジェクトを進めようとしたが行きづまる。リーダーを交代した役員の右腕としてSさんが取り仕切った会議では、メンバーから建設的な意見が活発に出て、順調にプロジェクトは進んだ。Sさんは自社製品に惚れこみ、思い入れが強く、プロジェクトのメンバーをリスペクトしている。メンバーの発言に心から共鳴しながら議論を前に進めることが出来た。マネージャーの仕事は、

部下をいきいきと躍動させること。

Sさんの持つ「真摯さ」とは、「終始一貫、本気で、チームの目的を達成するために力を尽くす姿勢であり、人間性」、「本気で成功させたいと思っている」「本気でいいチームにしたい」との思いだと藤田氏は言う。

マネージャーは、細分化された業務やルール、煩雑な事務処理、人間関係などで疲弊しきっており、「本当の自分」を見失っているとも言う。ドラッカー・スクールでは、「自分自身をマネージメントできなければ、組織をマネージメントすることは出来ない」と教えられる。自分自身が何物で、何を大切に考えて生き、働いていて、何が強みなのかわかっていないと指摘する。日本人のプレゼンテーションを聞いても、資料は美しいが、内容には感動を覚えないことが多い。理路整然とプレゼンはしているが、自分自身の感情が閉じ込められ、強みが活かせていない。それでは組織全体を動かすエネルギーは生まれてこない。

部下は感動によってこそ、自発的に動く

と指摘する。

最後にイノベーションを喚起する文化にも関係して下記の警告を発している。

利益のみを目的化する企業は、短期的視点からのみマネージメントされるようになる。その結果、企業が持つ富の増殖機能は破壊されないまでも、大きく傷つく。結局は業績が悪化していく。しかもかなり早く悪化していく。

以前紹介した「コンシャスカンパニー」でも同じことを言っている。私も含めて多くの経営者にとっても耳の痛い警告と思うが、変化の激しい時代、真剣に耳を傾けるべき警告とも言える。

部下を勇気づけるには「感謝」の気持ちを伝えること!

「自己啓発の父」とも呼ばれ、その心理学は「勇気づけの心理学」とも言われているアルフレッド・アドラーの名言をシリーズで伝えている日経ビジネスonlineの記事(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140905/270838/?n_cid=nbpnbo_leaf_bnlu&rt=nocnt)がある。筆者は組織人事コンサルタントの小倉広氏。第1回目は9月17日でタイトルは「“挑戦する部下”と”逃げ出す部下“」。人を大切にする「コンシャスカンパニー」(当ブログで2回にわたって掲載)の考え方に一部共通する点があり、とりあげる。

アドラーは、「挑戦」を選ぶ建設的な行動「逃避」を選ぶ非建設的な行動の違いは、「勇気」があるかどうかだと言う。そして「勇気」を下記のように定義する。

「勇気」=「困難」を克服する活力」

そして

「人は“自分が誰かの役に立つことが出来る”と思えるときにだけ勇気を持つことが出来る」

とも言う。つまり、自己肯定感を持てる時に勇気が出る。そこで、小倉氏は、「アドラーに学ぶ部下育成の心理学」{日経BP社、2014.8刊}において、アドラーの名言に基づいた部下育成術を伝授されているそうだ。それは「褒めて育てる」「叱って育てる」「教えて育てる」といった常識を的外れだと指摘し下記のような方法を提示している。小倉氏の経験からも、油に乗って果敢に挑戦意欲が湧くときは、「自分は出来る」「誰かの役に立てる」と信じることが出来ていたと言う。そこで、「勇気づけ」の基本は、相手が「自分は誰かの役に立てる」と思えるように声をかけ、見守ること。具体的にはアドラーの言うように

「“感謝”を伝えることが最も有効だ」

と言う。「あなたのお蔭でとても助かったよ」「ありがとう。ほんとに嬉しいよ」と。他にも「良い点をみつけ、注目する」などいくつかを提案している。「部下の間違っている点をただし、良い点を伸ばす」育て方は、「部下をコントロールすること」で、「相互信頼、相互尊敬」に基づく行為ではないと指摘する。

「コンシャスカンパニー」のコンシャス・カルチャーの章に、社内に愛と思いやりの雰囲気を作りだすためのホールフーズマーケットでの取り組みの紹介がある。それは

あらゆるミーティングを自発的な感謝の表明で終わらせる

こと。ミーティングの最後の時間を取って参加者のだれかが別の参加者に感謝する機会を与える。内容は、最近一緒に成し遂げた事、好意や親切を示してくれたこと、あるいはその人について自分が好きである点や尊敬できる点など、何でもよい。大抵は、一人一人だけでなく何人かに向けて感謝の意を述べる。

人はミーティングでは批判的にモノを考えがちになり、他の人々の発言に黙って耳を傾けながら、ついつい粗探しをはじめてしまう。感謝の言葉でミーティングを終えると、批判的な場が愛と思いやりの場に変わる。

同じ本に、ノーベル平和賞をもらったシュバイツアーの言葉が紹介されている。

「あなたの運命がどうなるかを私は知らない。しかし一つだけ私に分かっていることがある。それは皆さんの中で、ほんとに幸せな人と言うのは、いかにして他人に奉仕するかを探求し、それを発見した人だということである」

人の役に立つことで生れる“自己肯定感”と”勇気“、それを引き出すための感謝の気持ちの伝達、これが部下のエンパワーメント、ひいてはイノベーション力につながることをアドラーと実際にそのような文化を自社に作りあげてきたジョン・マッキーが言っている。行動するのはあなただ。