心の老いを克服(森村誠一)

80歳を過ぎて“うつ病”を発症し、88歳の今、努力して克服され作家生活を復活された森村誠一氏が、“老いを恐れず、少しだけの勇気を出せば老いは克服できる”と「老いる意味~うつ、勇気、夢~」(中公新書ラクレ、2021.2刊)を出版されている。

人生100年時代、定年退職後の人生が、老後、余生と言うにはあまりにも長くなっている。余生を「余った生」で終わらせるのか、「誉(ほまれ)ある生」としての「誉生(よせい)」にするのか。生きる時間が引き延ばされたからには、ただ生きているのではなく、有意義に生きなければならない。そのための提言が、あまりにも自然体で書かれているため、さっと読み飛ばしそうになるが、読み返せば自分事として、考えさせられるものが多い。

人生は3つの期に分けられる。「仕込みの時代(学びに重きを置いた準備時間)」、「現役時代」そして「老後の時代」。やっと老後の時代を迎えて、自分のために生きられることになった。その期間が以前は短かったが、人生100年時代を迎えて長くなった。“誉生”とするために、「過剰に老いを恐れず、永遠に自分の可能性を追求する姿勢を堅持し、社会の一員である意識を失わず、自分の理念をもって日々を楽しむこと」が大事と森村氏は言う。現役時代頑張ってきた褒美としてやっと自分らしく生ける老後を迎える。自分で勝ち取った老後を自分の好きに生きていけばいいのだ。老後こそ、自分のために生きられる期間だ

とは言っても、年を取ると現役時代に比しても、つらいことも多くある。友人や近親者の死に直面することが増える。女房に先立たれるのが最もこたえる。女房に先立たれると、まるでやっていけない男は多い。家族が元気なうちに、“お荷物老人”にならないように家族との関係を密にしておきたい。

「何をしてもいい自由」と「何もしない自由」。貴方はどちらを選びますか?長くなった「老後の時代」、何もしなければ、家族や周辺の信頼を得られず、心が壊れる可能性が高くなる。老いは進むが、自由を満喫する方法はいくらでもある。

「何をしてもいい自由」、何をすればいいのか?地方に移住して陶芸や農作業に従事する、そば打ちを趣味で習い、うまくいけば店を開いたり、短期の海外留学は無理でも、老人大学や市民大学に通ったりするのもいいだろう。これらはかなりの覚悟と行動力が必要となるが、だれでもできることも多い。人と話をする機会がなくなると、孤独老人になりやすい。犬を連れた散歩を日課にすると、犬好きの人が話しかけてくることが多い。町内会にも積極的に参加しよう。不健康にも寄り添うために、森村氏は、散歩コースに、内科、整形外科、眼科、皮膚科。歯科などをコースに入れておき、空いて居れば診てもらうそうだ。他にも、寝る前の一杯の水と牛乳、糖尿病予防の入浴法、食事、昼寝の効用など、医者の意見や、本などから得た知識を自分で試しながら、自分にあったやり方を見つけながら実施しておられる

趣味でお薦めは、“俳句”だ。言葉や体験の貯金の多い老人には最適な趣味とのこと。森村氏も創作俳句をブログに載せているそうだが、写真と対で載せるとアクセス数が上がったそうだ。写真俳句は、散歩やペットとの相性がいいと説く。身だしなみにこだわるのもいい。

過去に目を向ければ、今の自分が一番年老いているが、未来に目を向ければ、今の自分が一番若い常に未来を見つめていれば、若者と同じ志、若者に負けない志を持つことが出来る。そうであれば、精神的にも肉体的にも若さを保っていける。過去にばかり思いを馳せていれば干からびてしまう。自分で終わりを決めつけてしまわない限り人は楽しく生きていける。と森村氏は締める。

ある会社の社長が、FBで写真俳句を始められた。私も見習って、本を買い、始めている。まだ未熟で、家内の評価に任せているだけだが、続けていきたい。当ブログで「“楽しみは・・・”で始まる独楽吟(橘曙覧)」が今年になってアクセス数が大幅に増えている。老後の趣味としてもこの独楽吟はお薦めだ。

若い人たちには関係ない話で申し訳ありませんが、長くなった老後を如何に過ごすか、悩んでいる方も多いと思われるため、紹介した。