映画「フロントライン」を見た!

久しぶりの映画鑑賞だった。5年前のダイヤモンド・プリンセス号の23日間のコロナとの苦闘の真実を語るドキュメンタリー映画だった。船に使命をもって派遣された、誰しもコロナに対する経験も知見もない中で、医療チーム(DMAT)や厚労省の役人、そして船内クルーなどと乗客との苦闘を描き、結果的に死者をださなかった対応力に感動した。一方で、報道や、派遣された医者などのご家族、派遣病院の対応の難しさにも思いを馳せることが出来た。

映画のあらすじは下記URLで見ることができる。あらすじは下記URLで。

フロントライン : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 – 映画.com

日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いたドラマ。
2020
年2月3日、乗客乗員3711名を乗せた豪華客船が横浜港に入港した。香港で下船した乗客1名に新型コロナウイルスの感染が確認されており、船内では100人以上が症状を訴えていた。日本には大規模なウイルス対応を専門とする機関がなく、災害医療専門の医療ボランティア的組織「DMAT」が急きょ出動することに。彼らは治療法不明のウイルスを相手に自らの命を危険にさらしながらも、乗客全員を下船させるまであきらめずに闘い続ける。」

派遣された医師の家族もバッシングを受け、派遣された病院からも排除されるという過酷な扱いの中でも必死に頑張った関係者の苦闘の姿、あらためて考えさせられた。
映画で小栗旬演ずるDMATの阿南医師は当時の何とも言えない気持ちを語っておられる。

DMAT阿南英明医師が語る 映画「フロントライン」でも描かれたダイヤモンド・プリンセス 新型コロナとの闘い | NHK | WEB特集 | 新型コロナウイルス

“未知”っていうのは怖いですね。分からないっていうのは怖いこと。怖がる権利は誰にでもあるだろうと思っています。そこから逃げるならまだいい。でも攻撃はしてはいけないだろうと。怖い、嫌だ、だから排除をする、攻撃をする。これはやってはいけないことです。『今、自分が知っている範囲ではこうかもしれない。だけど、もっと新しい情報が入ってきたら違う考えになるかもしれない』。そういったことをいつもかみしめて社会の中で運用していく。考えて、口にして、生活していくっていうことを習慣化しておくことが、もしかすると次の時にいきてくるかもしれない」

折しも、プライム・ビデオで映画「雪の花」を見た。あらすじは下記URLより。

雪の花 ともに在りて : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 – 映画.com

「江戸時代末期、有効な治療法がなく多くの人の命を奪ってきた痘瘡(天然痘)。福井藩の町医者・笠原良策は、その痘瘡に有効な「種痘(予防接種)」という予防法が異国から伝わったことを知り、京都の蘭方医・日野鼎哉に教えを請い、私財を投げ打って必要な種痘の苗を福井に持ち込んだ。しかし、天然痘の膿をあえて体内に植え込むという種痘の普及には、さまざまな困難が立ちはだかる。それでも良策は、妻・千穂に支えられながら疫病と闘い続け結果的に多くの人を救った。」

この映画の中でも福井藩から反発を受けたり、周囲の人からも似非医師と罵倒・暴力を受ける中、多くの人の命を助けたい一心で江戸の幕府にも訴え、何とか承諾を得て結果的に多くの人の命を救った笠原医師の姿が、上記「フロントライン」で、コロナ禍の中で活動する人たちの姿に重なった。

「未知の病気と闘ってきた人たち」でインターネットで調べると、昔から天然痘やペストなど、コロナと同様世界的なパンデミック危機を克服するために、苦闘した人たちの歴史が分かる。世間の評価が得られにくい中で苦闘する医者の世界を、今回のコロナ禍の経験を通して考える機会にしたい。

米農家に加えて町の本屋、銭湯も激減!

今回、備蓄米の放出でコメの暴騰を抑える緊急手段が講じられた。一時的な効果はあり、人気政策として評判もいいが、本質的なコメ農家の減少に対する施策は後回しだ。今年2月の当ブログでもコメ問題を論じた(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9841)。

今回は別のテーマで日本の現在の状況を論じたい。

まずは書店が大きく減少している実態の中で、この10年で直営店の数が2倍(現在57店舗)となり、30年増収を記録している大垣書店の話だ。「致知6月号」のテーマ”読書立国“の中の記事だ。日本の書店の数も年々減り、書店のない市町村は全自体の4分の1を上回った(出版文化産業振興財団2024年3月発表)そうだ。確かに私も姫路に帰ると長年お世話になった駅前の書店がなくなっているのに寂しさを感じた。そのような中で京都に根を張りつつ(2023年麻布台ヒルズにも進出)、直営店を2倍に増やし、30年増収という大垣書店。「書店文化を守れ!」とのテーマで大垣守弘会長が記事を寄せている。なぜ大垣書店が成長を続けているか?今までの書店の根本問題は“人材教育の不足”と言い切る。地方から都市への人口流出、インターネット・電子書籍の台頭による雑誌の休廃刊の増(回転の速い雑誌に合わせて発売日が近い本を同梱することで、流通コストの効率化を図っていた)、取次会社の配本に伴うルーテイン業務主体の書店員の力不足などが書店衰退の理由と言う。このような状況下で、「わくわく感のある店づくり」を目指し、店構えを変えるとともに、自ら選書眼を磨き、書店員が工夫し続ける「書店人」に変わり、来客に寄り添える書店を目指してこられたことで今がある。「思いがけない発見ができる店」をテーマにカフェや雑貨、土産コーナーなども併設。京都では、有名ジャズクラブのブルーノート・ジャパンと提携したり、既存の枠にとらわれず業界外の方に賛同、支援いただける仕組みにも挑戦されている。今では、直営店の他、広島の廣文館や多摩地域のブックス・タマなどの経営再建にも取り組んでおられる。若い人が本を読まなくなっていることにも危機感を持たれ、近くの本屋が無くなることに警鐘を鳴らされている。

6月10日の朝日新聞夕刊に「銭湯 第2章へ」の特集記事があった。銭湯もピーク時の1968年の約1万8000軒から減り続け今年4月1日現在で約1500軒と12分の1ほどになり、昨年だけでも約100軒が廃業していると言う。廃業した銭湯を生き返らせる試みが各地で行われており、カフェや居酒屋に変わる銭湯もあるが、当記事では、入浴するという本来の機能を生かし、福祉の分野で活用しようと取り組む団体を紹介している。

長野県松本市の「バラの湯」・施設の老朽化で2021年廃業。これをリノベーションしてデイサービスを始めたのが「カミールハウス」。壁いっぱいの赤富士の下で、元は洗い場だった場所でお年寄りがテレビを見ながら談笑。隣の浴場では80代の男性が職員に体を洗われ湯船につかっている。廃業した銭湯を医療機関が経営を引き継いだ例もある。大阪市住之江区の寿楽温泉(1963~2001)。2023年に南陽病院を運営母体として、「昭和の建物を守りたい」と再開。高齢者の体操、障碍児の薪入れや風呂体験など、他のデイサービスなどと連携した多彩な活動を展開している。入浴習慣や温泉医学を研究する医師東京都市大学早坂信哉教授は「銭湯は老若男女関係なく自然と人が集まり、コミュニケーションが生まれる。地域社会の醸成にもつながっていて、福祉との相性はぴったりだ」と話す。

特に地域社会にとって意味ある本屋や銭湯が無くなっていくことは、地域社会がますます貧することにつながることが危惧される。米農家の問題も早急に検討すべき課題と思うが、本屋、銭湯の問題が政治の世界では話題にもなっていないように思われるが・・・。

AI時代に読書立国を目指せ!?

愛読書の人間学を学ぶ月刊誌「致知6月号」のテーマは“”読書立国”。スマホが読書習慣を阻害し、町の本屋が減り続ける社会に対して警告を発している。

最近、当ブログで「致知」の記事の紹介が増えているが、専門家の方々の、日本国の将来に対する懸念事項に深く同意することが多いため、皆さんにも是非とも知っていただきたいとの思いからだ。

今回注目したのは、建築家安藤忠雄氏と、iPS細胞でノーベル賞受賞の山中伸弥氏の「読書は国の未来を開く」と、お茶の水大学名誉教授内田伸子氏と脳トレで有名な東北大学川島隆太氏の「AI時代に負けない生きる力を育む子育て」の記事だ。

活字離れが進む中で、子供たちに本を読む楽しさや豊かさを知ってもらい、無限の創造力や好奇心を育んで欲しいとの思いで、安藤氏が大阪市中の島に「こども本の森」館を建設(令和2年)し、館長を山中氏が務めておられる。「建物の構造も展示の仕方も素晴らしい」と山中氏は言い、様々な分野の本2万冊を備えているそうだ。当日枠もあるそうだが、2週間前から予約がすぐ満員になるほどの盛況らしい。神戸、遠野、熊本にも広がり、松山、北海道大学にも新たに開館予定という。さらには台湾、建国、バングラデシュ、ネパールなどへの展開も予定されている。安藤氏は中学2年の時、自宅の改築にあたった大工の姿勢(仕事が終わってから深夜まで勉強しながら)に刺激を受け、経済的に大学に行けなかったが、働きながら独学で勉強し、建築学科の学生が4年で学ぶ専門書を19歳の時1年で睡眠時間も惜しみながら読破された由。山中先生も、お父さんが肝硬変で若くして亡くなられたことが医者を目指すきっかけになったが、アメリカ留学後帰国した際、日本の研究環境にとまどい鬱的な状態にもなったが、その際出会った本2冊に救われた経験が、IPS細胞につながったと言われる。(記事の一部はhttps://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2025/202506_anndou_yamanaka/をご覧ください)

もう一方の記事は、発達心理学と脳科学の専門家、お茶の水女子大学名誉教授内田信子氏と東北大学加齢医学研究所教授川島隆太氏の対談記事で、テーマは「AI時代に負けない生きる力を育む子育て」だ。スマートフォンやタブレットなどデジタル端末の球速な普及は、私たちの生活を便利にする一方、人と人、親と子の繋がりの希薄化や学力低下、読書離れなど数々の問題を発生させているとの問題提起だ。調査データも用いながら、例えば2019年に文科省が掲げた「GIGAスクール構想」により小学1年生から中学3年生まで一人に一台のデジタル端末が貸与され、家庭学習のため自宅に持ちかえらせる動きも出てきたことを問題視されている。川島氏や内田氏などの調査では、デジタル機器を使いこなす子供たちの成績が芳しいとの結果は得られていないそうだ。最近文科省の調査でも学力に関してポジティブな影響はなかったと結論付けしているそうだ。なぜデジタル端末が学力を低下させるか?インターネットで検索すれば答えが簡単に得られるから、自分で本などを調べ、自分で行間を読む力、自分の頭で深く考える力が身につかないからと内田さんは言う。様々な論文で、スマホなどを利用する子供ほど脳の発達が阻害されたり、自尊心、自己肯定感、共感性が低い、感情の抑制ができなくなるとの症状が出ていることも分かったと言う。親と子供の触れ合いが薄れてきているとの指摘もある。親も子供もスマホに熱中して対話がない家庭で育った子供は、落ち着きがなく、周囲とのコミュニケーションも取れなくなるとの指摘もある。両親ともに三つのH“褒める、励ます、(視野を)広げる”ことの重要性を説く。デジタル先進国の北欧では、紙の教科書の使用や紙のノートへの記入など、アナログ教育に戻り始めていると言う。(記事の一部はhttps://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2025/202506_uchida_kawashima/

をご覧ください)

今の若者が将来の日本を担うことを考えると、今一度国としても考える時期に来ていると強く思う。

冲中一郎