「新たな知識2013」カテゴリーアーカイブ

コーヒーで病気を防ぐ

国内外でいろんな先生方が、コーヒーに関して研究されているそうだ。東京薬科大学名誉教授の岡希太郎氏も、臨床薬理学を専門とされていたが、定年3年前にある論文がきっかけでコーヒーと病気の関係に興味を持ち、爾来10年自らのライフワークとしてコーヒー研究を行っておられる。金沢大学でコーヒー学講座も受け持っておられる。以下「致知2014.4」の連載記事「大自然と体心」第134回「コーヒーで病期を防ぐ~身近な嗜好品で健康づくりに役立てよう」より。

まず、最初の教えは、「深煎り豆と浅煎り豆をブレンド」するのが、健康効果を高めると。コーヒー豆の成分で、病気予防の効き目に関係することが明らかになっているのは、カフェイン、クロロゲン酸、ニコチン酸(ビタミンB3)、NMPの四つ。’’カフェイン’’は、最近の研究では、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経病、そしてガン全般に効果があることが明らかになっているそうだ。そして抗酸化作用や、糖分の吸収を遅くして食後の急激な血糖の上昇を抑える作用や、副交感神経を刺激して血圧を下げる作用、肝臓や筋肉での遊離脂肪酸の分解促進などの作用を有するクロロゲン酸は、熱に弱いため浅煎り豆がその分解を防ぐことで有効だと言う。浅煎り豆では得られないのがニコチン酸とNMP。その効用を次のように言われている。「’’ニコチン酸’’は高脂血症の治療薬にもなっていて、ストレスから起こる脂肪組織からの遊離脂肪酸の流出を抑える働きがある。また血管壁を保護したり、血小板の活性化を抑えて血液を固まりにくくする作用も持っている。’’NMP’’は副交感神経を刺激して気分を和らげ、大腸の蠕動運動を亢進させたり、血圧を下げたりする。また強い抗酸化作用があって、発がん性物質の解毒にも寄与する。」と。

岡先生は、上記効用を発揮するためのコーヒーの飲み方を提言されている。

1.浅煎り豆と深煎り豆を1:1にブレンドしたコーヒーを10グラム用意する。
2.布または紙にフィルターに入れ、90℃以下のお湯でゆっくり抽出する。
3.最初に出てくる50CCを飲む。

煎り方レベルは8段階に分かれており、浅煎り豆は3番目のミディアムロースト、深煎り豆は6番目のフルシティか7番目のフレンチローストを勧めておられる。また1日に飲む量は4杯程度を限度として飲むのがいいといわれる。脳卒中になるリスクとコーヒーの関係調査結果では1杯、2杯と量を増やしていくにつれリスクは下がり、4杯の時に最もリスクは小さくなるとの事だ。飲みすぎると脳卒中に限らず、心臓や血圧などの心血管系の病気にも効果が逆転するので注意が必要だし、妊産婦や子供(小学生)は1日1杯以内に留め、パニック障害の経験者はカフェイン抜きのコーヒーを薦める。

私は毎朝、豆を挽きながら、マグカップ1杯のコーヒーを飲んでいる。早速浅煎り豆と深煎り豆を発注した。老い先短い身ながら、健康には留意したい。

暗闇体験でつながろう!

8月20日の日経夕刊「暗闇体験でつながろう(見えない空間で運動・作業・・・)」と週刊ダイアモンド8.24号「真っ暗闇だからこそ見える相手を思いやることの大切さ」の記事に、「暗闇体験が最近人気」とある。以前から有名な、厚生省も後援している「非営利活動法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」のホームページでは、これまで10万人が体験し、東京外苑前会場の予約状況スケジュールを見ると、平日も満席あるいは残席少々の状況が見え、人気を博している状況が見える。

DIDのホームページでは「参加者は完全に光を遮断した空間の中へ、グループを組んで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障害者)のサポートのもと、中を探検し、様々なシーンを体験します。その過程で視覚以外の様々な感覚の可能性と心地よさに気づき、そしてコミュニケーションの大切さ、人のあたたかさを思い出します。世界 30か国・約130都市で開催され、2011年現在で700万人以上が体験したこのイベントは、1988年にドイツで、哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれました。日本では1999年11月に初めて開催され、現在は東京・外苑前の会場にて常時開催中。これまで約10万人が体験しています。」と。今では大阪にも会場がある。

朝日新聞の記事では、DIDの他にも暗闇体験イベントが増えていると言う。日本ブラインドサッカー協会主催が、音が鳴るボールを使った視覚障害者のサッカーを目が見える人がアイマスクをしてやってみるイベントを毎月3~4回開催しているが、口コミだけで毎回満員だそうだ。友達作りのために武蔵野大学では新入生のオリエンテーリングに導入。(ロンドンパラリンピックで金メダルをとったゴールボールを思い出す(http://jasipa.jp/blog-entry/7942)。)一般社団法人中小企業経営基盤研究所(名古屋)では経営者向けに、アイマスクをして木製ブロックを指示された形にするブラインドワークを取り入れた講座を実施(提供:日本ダイーバーシティ推進協会)。「暗闇ご飯」、「暗闇音楽会」、「暗闇官能小説朗読会」などもあるそうだ。

アイマスクをすると一人では何もできない。お互いに声を出して助け合わなければ一歩も前に出ることさえできない。そして他人の声を信じなければ動けない。初めて会った人でも。だから気持ちが通じ合い、直ぐ友達になれる。他人を思いやる気持ち、そしてそのためには声をかけること。DIDで同行役を務める視覚障害者の人は「子供のころに比べ、道に迷った時などに心配して声をかけてくれる人が減った」と嘆く。

人は一人では生き抜けない。いろんな人に助けられながら生きている。こんな感覚を経験できるとすれば、個人の幸せの為にも、暗闇体験は貴重なものと思える。DIDのホームページには体験者の声が掲載されている。「また参加したいか?」にYesが97%、「他の人に薦めたいか?」は99.5%がYesだと。

生物に学ぶイノベーション ~生物模倣技術の挑戦~

7月1日NHK「クローズアップ現代」で、「生物に学ぶイノベーション~生物模倣技術の挑戦」が放映された。

「軽く、かたい『アワビの貝殻』の構造をまねした新素材でつくる宇宙船、炭素繊維より軽く、強く、しなやかな『クモの糸』でつくる自動車のボディー、壁や天井を自在に移動する『ヤモリの足』の仕組みを取り入れた強力な粘着テープ。いま、厳しい生存競争の中で生物が進化させてきた機能を模倣する『バイオミメティクス(生物模倣技術)』により、革新的な技術が次々と生まれようとしている。電子顕微鏡やナノテクノロジーの進化により、生物の『神秘のメカニズム』を分子レベルで解明、再現できるようになってきたのだ。

次世代技術として期待される一方で、日本では昆虫学や動物学の研究者と工学系の技術者との連携が弱く、製品化の動きは欧米に大きく遅れを取っているのが現状だ。“生物のパワー”をどう技術開発に生かし、イノベーションにつなげていくのか。加速する企業や大学での研究の最前線を追い、可能性と課題を探る。」(NHK「クローズアップ現代」(生物に学ぶイノベーション~生物模倣技術の挑戦)2013年7月1日記事引用)

 アワビの貝殻は、厚さ1ミクロン以下の薄いセラミックスの板を軟らかい接着剤で貼り合わせた「積層構造」になっていて、厚さ1mmの中に薄い板が1000枚以上重ねられている。貝殻にヒビが入っても軟らかい接着層でヒビが止まり、薄板が1枚1枚少しずつ壊れるのでなかなか割れない。ハンマーで殴っても、車でひいても大丈夫!セラミックスの壊れやすい弱点が克服できる。しかもこの積層構造を作るのに高熱も不要。

蜘蛛の糸も鋼鉄の2~4倍の強度で、かつナイロンより柔軟性がある。日本のバイオベンチャー企業であるスパイバー社(山形県)は、バクテリアにクモの糸の組み換え遺伝子を注入し、培養したバクテリアにフィブロインを合成させることに成功、また、大手メーカーと共同して、この合成フィブロインを「タンパク質繊維」として合成する技術も開発し、蜘蛛の糸試作に成功した。普段使っている化学繊維は、石油から合成されるが、合成時二酸化炭素を出す。廃棄時もバクテリア分解できず地中に残ってしまう。その意味でも。蜘蛛の糸は軽くて、強くて、環境に優しい新繊維と言える。

ともかく、生き残ってきた動植物の摩訶不思議さは、同じNHKの「ダーウィンが来た」を見ても驚く。化石燃料に依存する現在の産業構造では、地球温暖化が避けられない状態になっており、またいずれ枯渇するもの。やっと産業界が「生物模倣技術」に注目し始めたことは、歓迎すべき事と言える。既に世界で実用化研究が始まっている。一歩先んじている日本のリーダーシップが期待されている。

「ネイチャーテック(http://j-net21.smrj.go.jp/develop/nature/archives.html)」に、動植物の模倣技術の紹介がされている。