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師を持つことの意義(北陸ミサワホーム林会長の事例)

「致知2012.7号(特集-将の資格-)」に、インタビュー記事で「人の喜びをもって我が喜びとする」のタイトルで、北陸ミサワホーム林会長のことが掲載されている。第一次南極観測越冬隊長の西堀栄三郎氏とその晩年をともにし、師と仰ぎ続け、そのお蔭で紆余曲折の事業経営を安定・成長路線にのせた経営者として紹介されている。

昭和49年のオイルショックで業績が落ち込み、販売拠点の縮小やリストラで四苦八苦している時に、どんな人かも知らず、西堀氏の講演を聞いた。仕事の話にとどまらず、人間の道を説かれるくだりにえらく感動された林氏は、講師控室を訪れお話を伺う機会を得たそうだ。先生のことを良く知っていたら、畏れ多くも訪問するなどできなかったが、良く知らなかったのが幸いしたとご本人は言うが、この時、いきなり西堀氏が「組織のリーダーとして欠くべからざるものは何?」との質問に沈黙。続けて「それは愛や」が西堀氏の答え。「あなたが人に何かをしてあげて、相手が喜んでくれる。それが愛や。こんな簡単なことが分からんか。ここまで生きてきたが、社会に愛されている会社が潰れたのを見たことがない」と。それ以来、いつも叱られながらも西堀先生についていこうと決めたそうだ。「林君、会社が社員に贈る物で、一番大事なものは何や?」「任せてあげるのが最大の贈り物や」と。それを守っても、業績は上がらない。すると「お前のは任せたのではなく、ただの放任や。放任は罪悪や」と叱られた。

西堀氏の教えに従って「人の喜びをもって、わが社の喜びとする」を経営理念とされている。平成20年に40周年を迎え、北陸3県で延べ17000棟の立ち上げをお手伝いされたそうだ。そして入居されている人との関係を第一に考え、すべての入居者を対象にした「新春感謝フェア」を正月に実施することなどを実施し、これまで10000人以上の参加があったそうだ。

日頃から師を持ち、素直に意見を拝聴しながら、自分を見直しつつ、自分の生き方につなげていく。そして、危機を乗り越えた事例は数多く聞く。師を持つ方法はいくらもあると思うが、林氏のように素直な心をぶつけながら師の信頼を得ていく、その行動力は見習うことだと思う。

西堀氏の著作本に「石橋を叩けば渡れない(生産性出版、1999)」がある。南極という未知の世界で遭遇する様々な困難を、創意工夫によって乗り切った氏が、如何にすれば創造的な生き方が出来るかを語った本である。「やってみろ!失敗しても俺が責任を持つ、安心してやれ」という上司の姿勢が、社員の創造性を惹起すると言う。