「組織。風土改革2016」カテゴリーアーカイブ

“Not Yet”思考で落ちこぼれを救う!

今年の4月30日のPRESIDENT Onlineに「“Not Yet”思考で落ちこぼれが変わる」とのタイトルの記事があった。あらためて読み返すと共感を覚えるものがある。モチベーションの研究では世界的権威と言われるスタンフォード大学心理学教授キャロル・ドェック氏のTEDでのプレゼン(2014・9)の紹介記事だ。
とある米国の高校の成績評価で、米国では当たり前の、落第点“F”(Failing Grade)評価を”Not Yet”に変えたそうだ。“F”評価を受けた子は、「あなたには将来の希望はない」との烙印を押されたようなもので、勉強するモチベーションを失ってしまう。一方で、“Not Yet”と評価されると「あなたは学習目標に対して、まだ到達していないだけで、到達するにはさらに努力が必要だ。でも目標への軌道には乗っている」との理解で、生徒の「努力したい」とのモチベーションにつながるという。
この概念は大人にも当てはまるはずという。例えば、人生において挫折を味わったとき、「絶望的」と思わずに、Not Yetと考え、前向きな思考で、成功するための努力目標にすべしと。人間には潜在能力があり、それを呼び起こせるかどうか、その気持ちの問題が大きい。
企業でもイノベーションを起こすために新しい評価体系を作ることを提言している。結果より、進歩・成長に注目した評価体系を社内に作ることを。新しいスキルを身に着けた社員、たぐいまれなチームワークを発揮した社員などを表彰する制度も推奨する。日本人は失敗を恐れる民族と言われているが、それでは会社も社員も成長できない。「成功に向かって邁進し、数々の障害や失敗を克服しようと、その目的へのビジョンと情熱と忍耐力を持つ成功者」こそ賞賛しようと呼びかける。結果だけを見るのではなく、数々の障害に直面し、それを克服してきたプロセスを評価する。今、最優秀と評価された社員が、将来も引き続き成果を出すとは限らない。失敗した人に烙印を押して立ち上がれないようにすることが企業にとって良いことか?失敗した社員が、プロセスにおいて、大きな障害に会い、悩み工夫して障害を突破しようとしたができなかった社員が、その反省を糧に次の仕事で見事に成果を出すことを促進するほうが企業にとって意味ある事。キャロル氏が企業コンサルでまず行うのは、どういう問題で苦しんでいるか、どういう間違いを犯したか、その間違いから何を学んだかを聞いて回ることという。シリコンバレーには、Failure of
the Year Award(その年の失敗賞)を授与する財団があり、誰もが欲しいと思う憧れの賞だそうだ。失敗は本当に多くの情報を提供してくれ、将来多くの成功を生み出す可能性を有している。シリコンバレーのモットーは「より早く、より首尾よく成功できるように、早期に、そしてできるだけたくさんの失敗をせよ」ということ。
日本でも、失敗をほめる試みをしている企業があり、当ブログでも紹介した。太陽パーツ㈱の「大失敗賞」などの施策だ(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1865)。「企業は人なり」、過去松下幸之助氏や本田宗一郎氏などの「人を大切にする経営」こそ、人の成長を促す経営だったと思う。少子高齢化の進展で、労働生産性を今以上にあげることが求められている時代、社員の成長を促進する施策として、キャロル氏の提言も参考にしてほしい。

「進化できない企業の特徴」とは

「その経営のままでいいのかー?第三世代の経営力~進化できる企業だけが生き残る~」(横田尚哉著、致知出版社、2015.11)の中の一節に、「進化できない企業の特徴」の記述がある。横田氏は、アメリカGEで開発された「ファンクショナル・アプローチ」という進化のための思考システムを日本で普及させるために、自らコンサル会社を設立し、顧客サービスの最大化のための活動を展開されている。

進化できない企業として、まずあげるのは、PDCAが回せず、「慎重なP,力によるD,人任せなC,形だけのA」に陥っている企業。結果から何かを学び取ることもせず、ただ結果を点検しているだけの企業。たしかに、企業の業績にしろ、人材の育成にしろ、C&Aがなく、ただ結果だけしか見ていない企業は、失敗を許さず、社員も失敗を恐れて挑戦する意欲もなくなる。時代の変化に合わせたイノベーションは起こるべくもない。

進化できる企業かどうかは、人材面、制度面、風土面の3つの観点から、その企業の進化に向けた強みと弱みを知ることだと言う。そして、そのバランスがアンバランスな企業は進化するための有機的な機構が働かなくなる。そして、アンバランスなことに気付かず、進化できない企業のタイプを6つ挙げている・

  • 成果管理にエネルギーを注いでいる企業
  • リスク管理に時間をかけている企業
  • 原因追及が得意な企業
  • マニュアルや手順書が充実している企業
  • 人材管理を徹底している企業:労務管理だけではなく従業員の行動のすべてを管理・コントロールする企業
  • 人間関係が良く、組織関係の良い企業:上司とか同僚に対して耳の痛い話は遠慮する風土

成果管理についてMBBと言う考え方を紹介している。これは一橋大学の名誉教授野中郁次郎氏らが提唱したManagement By Belief(思いのマネージメント)だ。「MBB:思いのマネージメント」の一節を紹介している。

数値目標だけがあり、夢や志が語られない組織の中にいると、次第に考えることを避けるようになる。そして、単に目の前の課題をひたすら片づけるだけで快感を覚え、本質的な課題を考えたり振り返ったりしなくなる。心の中にモヤモヤしたものを抱えてはいるが、忙しさの中に埋没してしまう。「とりあえず」そんな言葉が職場に蔓延する。上司に相談しても、返ってくる言葉はうつろだ。「俺もそこまで深く考えているわけじゃないから」「出来る範囲でいいから、適当にやってよ」こんな言葉に部下は気持ちがなえてしまう。そのうち上司との真剣な対話もなくなる。こうして形だけをとりつくろい、成果主義の評価をクリアするためだけに数値目標を達成しようとする。刹那的な文化が形成されていく。

「”VUCA”の時代」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4300)を乗り越えるために一度立ち止まって企業風土のチェックをしてみては如何だろうか?