ミレニアル世代が頑張っている!(日経)

日経朝刊に連載されている「Next story ミレニアル新常態の主役」に目が留まった。21世紀初頭に成人したミレニアル世代(1980-95年生まれ)が、今30代となり、次代の担い手として活躍している姿を紹介している。物質的に恵まれた成熟社会に生まれ、パソコンやネットワークを身近に育ったデジタルネーティブ。上の世代とは価値観も行動様式も異なる。米デロイト社は世界のミレニアル世代に共通する特徴として

(1)本物志向:目先の価値ではなく「倫理・信頼・誠意・公正」「顧客第一」「品質」など持続可能性を重視

(2)自律・成長:自身のスキルや専門性を意識し、常に成果を追い求める

(3)フラットな信頼関係:オープンで自由なコミュニケーションを通じて、創造的かつ協調的に働く

(4)社会への価値提供:社会。環境に配慮した倫理的な事業運営、事業を通じた社会課題解決にコミットする

(5)デジタル:高度なIT知識・スキルを生かし、既存の経営システム・社会インフラの仕組みを変革する

の5つを挙げる。

連載記事で最初に取り上げられているのは、2020年ANAホールディングス初のスタートアップ企業「avatarin」社を立ち上げた深堀昴君(34歳)。彼が開発したのは、「アバタ-ロボット(newme)」だ。そのロボットを京都の寺社や沖縄の離島、サハラ砂漠、ルーブル美術館など国内外の観光地、ウォール街やロンドンシティなどの国際的なビジネス拠点に配置。8月にはブロックチェーンの国際会議に利用された。利用者はネットを介してログインし、遠隔操作でき、現地に移動せずともその場にいるかのような体験ができる。提案時は社内では不評だったが、コロナ禍で「飛ばさず儲ける」アバター事業はwithコロナ時代の救世主になる可能性を秘める。

政府から内閣官房シェアリングエコノミー伝道師に2017年任命されるなどシェアリングエコノミーの旗振り役として知られるPMIの代表理事石山アンジュさん(31)。社員にもやさしい先進的な働き方が評価され、国の表彰も受けたステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」を京都で経営する中村朱美さん(36)も紹介されている。「佰食屋」は名前の通り1日100食限定を2012年開店以来のポリシーとして貫き通している。インバウンドで賑わった市内の店はコロナ禍で閉店せざるを得なかったが地域の2店はコロナ禍でもいつも通り昼前には予約券完売となるそうだ。利益よりも家族・社員の生活を重視する姿勢は変わらない。

「彼ら彼女らは働きがい重視。お金だけでは動かない」と、「報酬よりわくわく職場」を基本に転職支援サイトを運営する「ウォンテッドリー」社の経営者は35歳の仲曉子さん。サービス開始から8年、登録者はミレニアム世代主体に250万人。「勤務先の働きかたが納得いかなければ仕組みを変えればいい」と日本マイクロソフトの30歳がリーダーの異業種交流組織MINDSを19年から運営し、味の素、日本航空、三菱地所など大手16社のミレニアム世代社員160人が激論し、効果的な施策は各企業に導入を働きかける。海外でワーケーションを実施したり、参加企業間で週1日1か月以上のインターンシップも仕掛ける。

近い将来、日本を担うミレニアル世代が、自ら信念を持ち、その信念を実現に向けて行動する。そして、働きかた改革を主導し、世界に遅れをとる日本の生産性の抜本的向上を図る。頼もしい限りだ。応援したい。

大学生のインターン制度が変わる!!

夏休みなどに1か月以上、実務に就く長期インターンシップの人気が高まっている。専門サイトでは登録者数が前年比3割増え、月額40万円を支払う企業も相次ぐ。ジョブ型など専門能力を問われる雇用形態が増える中、学生は「修業」できる場を希望。企業は優秀な学生が大学で学んだ最新の知見を事業に活かす狙いがある。

上記は9月4日日経朝刊記事「インターンで月給40万円~プリファード、入社は問わず、最新研究 学生から吸収~」のタイトル記事の前文だ。

まず紹介されているのは、日本屈指のユニコーン企業「プリファード・ネットワークス」で、人工知能分野では有名な企業だ。優秀な学生を採用するために、2014年から長期インターンを始めている。今年も8月10日から1か月半のインターンを開始している。プリファードは、参加者を選考する場合、同社への入社希望は問わない。社員はビジネスでの実用化に注力するため学術的な発見に遅れる懸念から、コストをかけても「大学で最先端の研究をしている学生の経験を共有する」ことを最大の目的としている。1日8時間、週5日勤務で時給2500円、月給換算で40万円超だと言う。今ではIT大手の幹部が「自社で学生の能力を見極めるより、プリファードでインターン経験の方がよっぽど確かな技術力の保証になる」と話すほどの評判らしい。

LINEも長期インターン制度を実施している。6週間で約60万円を支払う。実際にサービスに実装する機能を担当させ、達成感を与える。他社に就職してもこの達成感を思い出し転職してくるそうだ。優秀な人材を集める種まきの場と位置付けている。

現時点では、20年卒のインターン経験者で「1か月以上」は5.2%どまり。対して「1日」は70.6%との調査データがある(リクルートキャリア)。一方で長期インターンへの関心は高まっている。期間3か月以上の案件を扱う情報サイト「ゼロワンインターン」では、8月時点の登録学生数は前年比34%増の約6万8千人、登録企業数は12%増の1208社となったそうだ。現場の裁量で実務を任せやすい中小企業が中心らしいが、大手企業でも動きが出始めたと言う。三菱UFJ銀行は19年に2か月間で導入し、大量の金融データを活用したAI開発などを経験してもらい、理系学生の間で話題にあることを狙う。経団連と大学の協議会は今年4月、1日インターンは教育的意義に乏しく「あり方を早急に検討する必要がある」としたそうだ。

記事の最後に小河愛実氏の下記コメントが日本のインターン制度の変化を示唆している。

ジョブ型採用で先行する欧米では、長期インターン制度が主流で半年から1年かけて学生の能力を見極める企業も多く、米フェイスブックでは月給が”8000ドル“に達するそうだ。日本でも日立やKDDIなどジョブ型雇用に舵を切る大手企業が増えつつある。中途採用や海外採用も含め、高い専門性を持つ人材を採用しやすくするためだ。

コロナ禍で、テレワークやワーケーションなど働きかたの変化が加速し、ジョブ型への雇用の変化も進むなか、競争がますます激しくなり、如何に優秀な学生を見極め、採用するかが企業の生命線になると思える。人事制度の一環としてインターン制度を考えてみることも重要な施策ではなかろうか。