最新の人間学を学ぶ月刊誌「致知」8月号の記事に「釜石の奇跡はかくて起こった(平時に備えるリーダーこそ危機を超える)」というのがあった。「釜石の奇跡」とは、釜石市立の小・中学校14校では、当日学校の管理下にはなかった(休暇など)5人を除く児童・生徒約3000人が全員無事だったことを言う。ある3階建ての小学校では、3階の窓に車が突っ込んでいる姿が残っているが、そのような状況下で全員無事だったことが奇跡と言われるゆえんである。
このような事がいかにして起こったのか?現群馬大学の片田敏孝教授(防災学)が、100年前の明治三陸大津波の被害(釜石では6500人のうち4000人が死亡)をニ度と起こさないために2004年から市民の防災に関する意識の向上ならびに行動をまずは釜石をモデルに実践してきた成果としてアピールされている。効率的な意識改革はまず子供から(子どもが親になればどんどん意識は拡大して行くとの考え方で10年計画で推進)ということで、まずは小中学校を対象に指導されてきた(小中学生を通じて親への浸透も図った)。過去におきた震度6程度の地震でも避難率は実際2%にも満たない、そんな状況であったそうだ(気仙沼でも)。
当日、部活中の中学生がハザードマップでは浸水想定区域外にあった小学生〔3階に車が突っ込んでいる小学校〕を誘い、手を引っ張って高台に逃げる。その姿を見た近所の大人連中も慌てて一緒に逃げる。普通は親は子供が心配で学校に迎えに行くが、日頃の指導で親も子供を信頼して、まずは逃げることを推奨。すべての人は「率先避難者になれ(他人の命を心配せずに自分の命を守りぬけ)」と叩き込まれた行動をとった。東北地方には、「津波てんでんこ」という言い伝えがあるそうだ。津波が来たらてんでんばらばらに逃げないと家族や地域が全滅してしまうとの事らしい。しかし、この教えに基づく行動はそう簡単ではない。身近な人を気遣い、結果的に全員危機に瀕することになりやすいが、危機時にはまず逃げろが正しい事が「釜石の奇跡」では証明された。
人間は危機管理に弱い動物である。非常ベルがなったら、すぐ行動(避難)できますか?「その状況下において最善を尽くせ!」との教育を受けた中学生は、停電で校内放送も出来ない中、部活動中であったが、すぐに地震に反応し、隣の小学校に飛び込み、小学生を連れて避難した(訓練済み)。
この弱さを克服するには、平時での真剣な訓練の徹底しかない?「釜石の奇跡」は、東京も例外ではない大地震対策として教えるものは多い。