部下の“自頭力”を高めるMBQ

ファシリテーションの普及に尽力されている堀公俊氏著作の「MBQ〔マネージメント・バイ・クエスチョン〕日本経済新聞社」が発刊されている。以前(10年以上前と記憶しているが),経営手法として「MBWA(Management By Wondering Around)」が喧伝されてことがあるが、双方の手法を合わせれば、より効果的な管理が出来、かつ社員の「考える力」もつくのではと思う。

MBQとは、質問を使って組織のマネージメントを促進し、自律的に成果が出せる組織をつくる手法であり、「指示命令」ではなく、「質疑応答」を主体とする。松下幸之助氏は部下に対して質問がうまかったのでも有名である。「あんた、どう思うんや?」とか、「それでお客様は喜びまっか?」。社員に自分の頭で考えさせたり、顧客志向を社員に叩き込むのにこれほどシンプルで力強い質問はない。

堀氏の提案は、MBQの基本型としての3つの質問である。

  • ①仕事は予定通りに進んでいる?
  • ②どんな問題(心配)を抱えているの?
  • ③私(上司)ができることはない?

変形として、有る企画を提案してきた時

  • ①その目的は何?(目的)
  • ②他にどういう手がある?(代替案)
  • ③デメリット(リスク)はない?(損得)

や、問題が発生した時には

  • ①何が起こった?(問題)
  • ②何がもとでそうなった?(原因)
  • ③どうするのがベスト?(解決策)

というように状況に応じて変える必要があるが、基本は部下に考えさせることが必要と説く。その際、質問するタイミングや、質問する相手に対する興味や関心の示し方、返事がない場合に辛抱(ウェイティング)するテクニックなどに留意すべしと言う。すなわち、部下を信じ、部下が自らの力で成長することを信じ、励まし続ける上司(質問者)の心が通じれば、部下の成長は早い。

MBWAは、責任を持つ上司が、一人の部下から聞いた報告をうのみにせず、常日頃から現場に出ていろんな人に声を掛け、真の情報、状況を掴む努力をする手法を言っている。これとMBQをうまく組み合わせれば、社員の育成、そして業績UPに必ずつながる!!!

既存客を失った映画館???

メルマガ(日経MJ兵法経営2011.11.1)に経営の失敗事例が載っていました。東宝シネマズの7地方都市で今春から試験実施していた映画鑑賞料金の値下げを11月末で打ち切ると発表した途端、入場者数が減ったという話です。一般入場券は値下げ〔1800円→1500円〕したが、レディースデイ割引(水曜日1000円)やレイトショー割引(20時以降1200円)を中止するという内容だ。要は、レディースデイやレイトショーを活用する映画大好き人間にとっては値上げになったと言うことなのだろう。

「新規顧客を増やしたいために一般料金を値下げする」というのは、経営者としての思いとしては理解できる。しかし、その施策として、利用料金の上げ下げだけでは、うまくない。映画館独自のサービス(付加価値)を如何にあげるか、既存顧客にも納得的な施策も合わせて行わなければ、これまで割引料金を利用してきた熱烈な映画ファン客を失うことになる。私も「シニア割引(1000円)」を利用して、東宝シネマズなどを時々利用させてもらっているが、映画館が常にサービス向上に努力している姿は見えてこない。ビデオ店などとの競争はますます激しくなると思われるが・・・。

ともかく、既存顧客に対して、現状のサービスレベル(付加価値)を上げずに価格を上げると逃げられる。新規顧客に対しても、競争の激しい〔レッドオーシャン〕世界では、提供するサービスの価値で勝ち抜く覚悟がなければ、思い通りにはいかないと考えるべきではなかろうか。

折角既存顧客の信頼を得た数少ない社員を、新規顧客を取りたいがために、その顧客からはがすような事はしていないだろうか?顧客の信頼を得る社員を増やし、万全の体制を作るのが最も重要な事で、そうすれば配置変えの自由度も増すことになる。「顧客第一」と言いながら、実行できていない会社が多いと聞く。注意せねば・・・。

サイバー攻撃が恐い!

防衛関連企業の三菱重工や、衆議院議員のサーバーへのサイバー攻撃が話題になっている。よくテレビでお見受けする軍事アナリスト小川和久氏が、ある講演で日本の政治のセキュリティに対する認識の薄さを嘆いていられたのを思い出した。2008年に日本サードパーティ社が開いた特別講演会だった(マカフィー社から頂いた講演録より)。

小川氏は、仕事上防衛省にもよく出入りされており、防衛省で講演などもされている方です。アメリカの国防にも精通されており、セキュリティの弱さを過去の政府(経産、防衛、外務大臣など)に伝え、対策を進言してきたと言われていますが、縦割り行政の中でなかなかうまくいかなかったそうだ。意識の低さの事例として、官邸や防衛省などへの出入りで、携帯を持ち歩くことも自由な事を指摘されていた。こんな事は諸外国ではないことと言われていた。携帯電話を通話状態にしていたら、会話は外にも漏れる。大臣が官邸内を携帯電話で通話しながら歩いている姿がテレビで放映されたが、外国に「官邸はシールドされていません」と宣伝するようなもの、と。危機管理意識もさることながら、危機に対する備えも遅れている。サイバー攻撃を抑止するためのハッカー(高い倫理観と道徳心を兼ね備え、高い技術を持ったハッカーを「エシカルハッカー」と言う)の育成も、アメリカ、中国などに大きな後れをとっている。アメリカでは危機管理訓練も、抜き打ち的にやるそうだ。それも大統領機に実際爆弾を積んだ自動車を横付けするらしい。日本では、ハッカーを呼んで、実際本社サーバーに侵入してもらう訓練を実施しても、どのポートから侵入するか事前に分かっているような訓練となる。このあたりの真剣さも違うらしい。

以前当ブログにUPした「サイバー戦争(http://jasipa.jp/blog-entry/6318)」も現実の問題となっている今、日本はどうすればいいのだろうか?尖閣諸島のビデオ流出事件でバタバタしているようでは、ますます諸外国からの絶好の攻撃の的になってしまう。マスコミも、国家のセキュリティ対策に関して、あまり問題認識がないのだろうか?

冲中一郎