世界が憧れる日本人という生き方

在米35年のハリウッド・プロデューサーのマックス・桐島氏の本のタイトルだ(出版:日文新書、2012.10)。世界中から映画の街ハリウッドに集まるクリエーターから、今、日本人の生き方そのものが熱視線を浴びていると言う。映画ファンには桐島氏は良く知られている方と思うが、私はあまり存じていない。インターネットで調べたが、「年齢不詳(50代)」とあり、朝日新聞社とか文芸社とかから本の出版をされている。日本人が、世界からどう見られているか、日本人の美質を探りたい私としては、本のタイトルに目を引かれた。以下に本の一部を紹介する。

巻頭に、「向上心、自己犠牲、挑戦、やる気。これすべて日本人と言う生き方の推進力。この生き方そのものが、世界中の人々の憧れとなったのだ。今、我々の愛する母国日本は、様々な危機に直面し、そこに住む日本人の心を蝕んでいる。でもこれだけは覚えておいて欲しい。‘日本人’という生き方は、生命を復興させ、元気を与え合うことのできる、世界有数のライフスタイルなのだということを。日本にいたらあまり感じない、そのジャパニーズの生命力の素晴らしさを、ハリウッドという特殊な世界からの視線で、皆さんの意識の中に最構築できることを心から願っている」とある。そして最後に「東日本大震災という未曽有の悲劇と、その後の復興ぶりを通して、日本人は、その生き方の根底にある英知を世界に示したのだ。だからこそ今は、我々日本人にとっても、“日本人としてうまれたからには、大切にしたいこと”を、それぞれの生き様の中で再構築する絶好の機会でもあると思う」で締めている。

日本流のサービス精神。日本独特の宅配便の思想「人に届ける」に対し、欧米は「モノを届ける」発想。日米のタクシーの違いにもそれが現れる。外国人が日本のタクシーに乗って例外なく、そのサービスと室内の綺麗さに驚く。「相手を慮る」発想のない文化圏との違いは「お辞儀」にも現れる。「live and let live(人は人、自分は自分)」のハリウッドで、他人を気遣う「声かけ文化」もない。国民人口比で日本の30倍近い100万人の弁護士がいるアメリカでは訴訟大国、かつ犯罪人弁護ビジネス大国だ。人がみていなければ、捕まらなければOKという歪んだ風紀文化に対し、よく言われるが、「財布を落としても、そのまま返ってくる日本」に驚きを隠さない。ボトルキープやツケの文化もない。集団生活や集団行動が苦手な文化では、「避難所や仮設住宅はバトルグラウンド(戦場)になってしまう」。

先日紹介(http://jasipa.jp/blog-entry/8227)した白駒さんも言われていた「Foy you」文化、「今ここを精一杯生きる」考え方も日本人特有とマックス・桐島さんも言う。そして、東日本大震災を見て、世界の人々も、「日本人」を見習う、あるいは「日本人」になりたい人が増えていると言う。昨年おこったイタリア地震で崩壊したチーズ工場を6カ月で再建したのが話題になった。その工場長曰く「日本人はあれだけの被災を被りながらも、力を合わせて復興への足取りを緩めなかった。こんな小さなチーズ工場を再生させることなんか、日本人の成し遂げたことに比べれば何でもない。イタリア人も日本人を見習って頑張ろう!」と。

日本人は、自らの美質を認識し、さらにその美質を高め、そして世界に打って出る。そうすれば、世界の日本を見る目もさらに高まり、世界レベルの絆が高まるものと思う。自信を持って未来に向けて進みたい。

第8回JASIPA経営者サロン実施(21日)

最初に、梅北副理事長((株式会社日本システムデザイン代表取締役)から「海外に目を向けて」とのテーマでお話を伺った。珍しく今週は19日に「グローバルビジネス委員会」、20日に「ICTビジネス委員会」と3日連続のJASIPA行事が続くことになり、参加人数が心配されたが、理事を主体に9名の参加があった。

銀聯オンラインショッピングモール『銀聯在線商城』内に設けられた『日本製品専門』サイトである銀聯在線商城(ギンレンオンラインモール)日本館を運営する、株式会社チャイナコマースに出資参加され、常にインド、ベトナムなど東南アジア経済圏を訪れ、ウォッチされている梅北さんから、海外に日頃から目を向け、事業チャンスを掴むことの必要性を熱っぽく語って頂いた。日本の将来を考えると、世界人口の約半分を占めているアジア経済圏を見据えた経営が必須となる。そのために、オフショア開発も進められている中国だけではなく、インド、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシアなどにも注目し、「百聞は一見にしかず」と自ら出向かれ、調査されている。インド最大のITベンダー「インフォシス」も訪問された由。驚くことにインフォシスは、インド国内向け事業は全くやっていないとか。殆どが欧米向けだそうだ。

2部では、私の方から、以前JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)で講演されたGISコンサルティング株式会社代表取締役社長工藤秀憲氏の講演内容を参考に、「日米の情報システム構築の違い」について話題を提供した。工藤氏はNEC,NECソフトに在籍中、米国や中国事業の立ち上げに携わり、その経験を活かして、ユーザー企業のシステム構築やITベンダーの海外進出のコンサルティングをやられている方だ。「米国流システム構築が日本企業を救う」や、「飛び出せ日本人!日・米・中国人のビジネスと生き方」という本を出版されている。海外のベンダー事情を知るうえで参考になると思う。今回、日米のシステム構築の違いとして下記を挙げた。

  • 1.エンドユーザーの内製化率(エンドユーザーがシステム部門を抱えるレベル)は米国が圧倒的に高い(ITベンダーエンジニア:エンドユーザーエンジニア比率が日本は4:1、米国は逆に1:2)。
  • 2.エンドユーザーのCIO専任比率も米国が圧倒的に高い(日本は6~7%、米国は60~70%)。
  • 3.日本のような成果保証の一括請負方式はなくすべて工数精算方式、人の流動性が高いためシステムの共通化・標準化が進む、アーキテクチャ重視の米国に対し日本は機能重視、ROI重視でシンプルなシステム志向・・・。
  • 4.望ましい職業のトップがSE、PMが5位
  • 5.大企業の基幹システムの月間停止時間は、日本が1.7時間、米国が一ケタ違って14.7時間。

オフショアではなく、海外市場に進出(海外企業を相手にソリューション事業を推進)するとなると、相手の文化・風土の認識が重要となる。アメリカと日本でもこんなに違う。ましてや東南アジア圏は共産圏もあり、文化・風土は大きく異なるものと思う。梅北さんが言われた「百聞は一見にしかず」で、ともかく訪問していろんなものに触れてみないと把握できない。梅北さんは今の若い経営者に、「海外にもっと目を向けよ!」との警告を発せられた。

歴女白駒妃登美さんの講演に感動

博多の歴女「白駒妃登美さん」の事に関しては、今年の2月2回にわたって当ブログで紹介した。

その白駒さんの講演会があるというので、行ってきた(講演会の案内はhttp://jasipa.jp/blog-entry/8115)。白駒さんは慶応大学経済学部を出られた才媛で、大手航空会社のキャビンアテンダントを経て、現在は結婚コンサルティング会社を経営されている。その間、子宮頸がんと闘われ、人生に対する生き方・考え方を苦悶するうちに、子供のころから好きな歴史上の人物の生き方に気付かれ、自分の考え方を変えた途端に、がん細胞も消え、幸せな人生を送られている。その経験談と歴史上の人の生き方の話は、人の心に感動を与えている。

白駒さんは、優秀であるが故に、欧米流の「目標達成型」の生き方で、試験、資格取得など叶えたい夢は次々に叶えていかれた。しかし、この生き方は欲望が際限なく広がり、達成感は得られても、安心感、幸福感が生れることはないことに、ガンとの戦いの中で気付かれた。そして「天命追求型」、すなわち、「自分の与えられた環境やご縁に対して、意味を見出し、とことん信じぬく生き方」に目覚められた。今、自分の置かれた環境でベストを尽くす。それを続けていくと、天命に運ばれ、いつしか自分では予想もしなかった高みに到達するとの考え方だ。そこでは、自分の夢だけを考える「For me」より、周囲に喜びや笑顔を与える「For you」の精神、つまり志が優先される。その「天命追求型」の生き方が、日本人が歴史の中で培った素晴らしい生き方であることに闘病を通して気付かれた。この生き方に気付かれて3週間後の検査で、医師も驚く「転移していたものも含めてすべてのガン細胞が消滅」したのです。

今回のご講演もキーワードは「天命追求型」「For meではなくFor you」「夢は自分のみ、志はリレーされていく」「感謝と報恩」だった。マザーテレサや正岡子規の話に加え、伊能忠敬の千葉県佐原での造り酒屋経営の立て直しにおけるFor youの精神、晩年の17年間40,000km歩き奉仕の精神で作成した精巧な地図(日本の文明レベルをバカにしていたペリーはこの地図を見て日本の文化の質の高さに驚いた)の話を通して、日本人の生き方の素晴らしさをお話しされた。また、前田利家の娘「豪姫」と浮田秀家の悲恋物語を題材に、秀家の八丈島への島流し後、秀家の死後も含めて250年間、前田家11人の殿様が八丈島の島民にコメなど物資を送り続けた由。まさに「志はリレーされる」の典型的な事例に、心を動かされた。詳しくは白駒さんの著書「人生に悩んだら日本史に聞こう(ひすいこたろうさんとの共著、祥伝社)」を参照ください。

悩みは、過ぎ去った「過去」を悔やみ、「将来」への不安から来るもの。「いまここ」を見れば悩みはない筈。だから何も悩まず、ベストを尽くせる。曹洞宗大本山總持寺参禅講師大童法慧氏の説話「いま、ここ」(http://jasipa.jp/blog-entry/7593)にも通じる話だ。1時間半のご講演の間、ずっと笑顔で丁寧に、かつ迫力を持って話される白駒さんに400人の参加者は大きな拍手で応えていた。

冲中一郎