進学校として有名な京都洛南高等学校の吹奏楽部の話だ。洛南高の吹奏楽部はこれまでに全日本吹奏楽コンクールで金賞を四度受賞した名門校でもある。その吹奏楽部顧問の池内毅彦氏が「致知2013.3」に表題のタイトルで投稿している。その人づくりの考え方が面白い。
部員のミーティングは「今日の7限目の授業の為クラブに遅れました。すみませんでした」と謝ることからはじまるそうだ。私たち大人も含めて、約束を守れなかった時に、素直に謝ることが出来ていないのではと池内氏は言う。「電車が遅れた」「前の会議が長引いた」のような言い訳を先にして自分を正当化しがちではないだろうか。待ってくれている人の気持ちを考えれば、何はさておいても、まずは謝ることが、相手の気持ちを思いやる人間になる基本だという池内氏の意見に共感できる。
「挨拶と掃除」も徹底させているそうだ。掃除の仕方でその人の人間性が分かる。もう少し手を伸ばしたら届くところに手を伸ばしているか?道路に落ちている犬の糞も嫌がらずに掃除しているか?誰も見ていなくても掃除が出来る、誰かに言われなくても自然と挨拶が出来る。そういう当たり前の事を当たり前に出来る人間になってほしい。そう願い、クラブの運営にあまり口出しせず(上級生も下級生に対して細かい指示しない)、自分が見本を見せる、次にやらせてみる。そうすることで、生徒たちの自主性や協調性を育んでいる。
演奏は一発勝負。息によって音を表現する息遣いの世界(「息」と言う漢字は自分の心と書く)である吹奏楽では、吹き手の精神状態が大きく影響する。そのため、緊張した状態でも平常心が保てるよう、挨拶や掃除に加えて、呼吸法や正座での精神統一などで、心を整える修業も行っている。人生のうちのわずか3年だが、どんな人と接しても、周囲から愛される人間になってほしいとの切なる思いが池内氏の考え方の基本となっている。池内氏が洛南の生徒だったとき、「自ら雑巾となり、社会を綺麗にする」と恩師から教わったそうだ。
前稿(http://jasipa.jp/blog-entry/8470)で小宮一慶氏の言葉を紹介した。「いくら意識改革を叫んでみても効果は薄い。まずはきちんとした挨拶の徹底などの行動が意識を変える」。「たかが挨拶、されど挨拶」「たかが掃除、されど掃除」ということだと思う。