助けて!組織風土改革にすがるIT業界

こんなタイトルの記事が、今日のITpro 日経情報ストラテジーに掲載されていた(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130124/451669/?mle)。戸川尚樹記者の記事だ。組織風土改革の第一人者として、「会社を変える日本式最強の法則」(ダイヤモンド社、2002)など多数の著作本があるスコラ・コンサルトの柴田昌治氏は、昨年2012年6月号の日経情報ストラテジーで「組織風土改革の第一人者 柴田昌治氏と考える、いい会社の条件」を特集したが、「6月号の特集掲載と前後するように、IT業界の方から、うちの会社の組織風土改革もお手伝いいただけないでしょうか、とお声がけいただく機会が増えました」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120824/418022/?ST=cio)と言う。今回の記事は、「組織風土改革が待ったなしのIT業界」との問題認識のもと、今年の5月号で「組織風土改革の処方箋」を特集するため、職場の実態を知るアンケート回答依頼である。

昨日、あるJASIPA会員企業様から声をかけて頂き、該社が初めて「パートナー会」を開催するにあたって講演をする機会を頂いた。「お客様の価値を感じて働く企業へ」と題して約1時間50名ほど集まられたパートナー(ITベンダー)の方々を前にして話をさせて頂いた。JISA(情報サービス産業協会)でも大議論になっているように、今、日本のIT業界はこれまでにない、脅威に直面している。マーケットは縮小し、お客さまからの真の信頼が得られていない中で、パイの奪い合いになっている。こんな環境の中で、何をしなければならないか?これからは「サービス競争(付加価値競争)」になる。そのためには、お客様の期待を常に把握し、その期待に応えることを第一義とした「全員経営」の必要性を訴えた。と共に、「社員の成長」こそが企業の成長の価値源泉との話もさせて頂いた。先般紹介した坂本光司先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」のご講演でも「人を大切にする会社が成長する」(http://jasipa.jp/blog-entry/8437)と言われたが、まさに私の思いと一緒だった。自らの強みを把握し、社員と思いを同じくして、その強みを伸ばしていく、そのため原動力は社員の高い意欲だ。

昨年来、JASIPA会員企業からお声を頂き、お話をさせて頂いている。サービス競争が激化する中で「お客様の価値を感じて働く企業」に脱皮して頂くために、私も何らかのお手伝いが出来ればと思っている。該社の方がFBに挙げていただいた写真です。

「ポジティブ心理学」とは(日経)

今朝の日経朝刊19面「今を読み解く」に日本赤十字豊田看護大学島井哲志教授の記事がある。「「ポジティブ思考」とは」とのタイトルに惹かれて読んだ。冒頭「人間はネガティブな情報に興味をひかれやすく、私たちは、気の滅入るようなニュースに囲まれている。」から始まる記事だ。「いじめ問題」に見るように、学問的にもネガティブな側面を重視する道を心理学では辿ってきており、それはそれで、多くの人の役に立ってきた。しかし、好奇心や、友情などポジティブな心的機能は少数の人たちによって研究されてきただけであったが、もっと広く研究されるべきと主張する。

ポジティブ心理学の研究テーマのひとつは幸福感だ。毎日1回以上誰かに親切にすると、自分自身の幸福感を高めることが示されている。一般的に美徳と認められている、人間性、勇気、節度、正義、知恵、超越性に大別される24種類の特性の尺度開発も行われている。強みや、生きがいという自分の資質を活かす研究も進められ、人事面でポジティブ心理学を活かす試みもある。それぞれの研究成果を表わす本の紹介が記事の中でされている。

ベネフィット・ファインディング

日経ビジネスなどの記事や本の出版も多い河合薫氏が、昨年末の日経ビジネスオンライン(http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20121221/241411/?P=1)に「「現状を打破したい!」東北の被災者たちにもらった一歩踏み出す勇気」との記事を投稿している。島井氏も「東日本大震災によっていまだに多くの人が困難の中にいる。その支援活動に携わった心理学者は、災害経験をストレスとみる立場に基づき、強いストレスによって心の傷が深く残ることを主張するものであった。ポジティブ心理学では、私たちが強いストレスを契機として成長する可能性を示してきた。忘れられない出来事によって、生き方が変わるポジティブな側面である。」と言われている。一方、河合氏は、現地の人たちとの交流の中で、子供も含めて、「変わろう、変えよう、変わらなきゃ」と一歩踏み出す人たちが増えてきたのを実感したと言う。他人のせいにしていても仕方がない。自分達で現状を打破し、新しい街を作ろう」との活動だ。この変化を河合氏は「ベネフィット・ファインディング」と言う言葉で表現している。この言葉は、数年前から医学の世界で注目されている概念で、慢性疾患や不治の病に侵され、「病とともに生きる」ことを強いられた人々の中に、絶望感が生じながらも生きる力を逆に強め、普通の状況の中にさえも価値を見いだす人がいる。そうした現象を受けて生まれた概念だそうだ。ポジティブ心理学の1テーマでもある。

「ベネフィット・ファイディング」のためには、困難と言う真っ暗な世界に閉じ込められた中で、小さな一条の光に気付かねばならない。そのためには、まず自分が置かれている状況を素直に理解することが重要だ。決して他責に世界に陥らずに、自分が遭遇している困難を否定しないで、自分のありのままを受け入れる。「人は現実を否認しがちで、それが疵を深くする」(デドロー、http://jasipa.jp/blog-entry/6337)のが人間の本質とのブログを紹介したが、危機にじかに向き合うことが解決への第1歩とのポジティブ心理学はプロジェクト管理、企業経営でも参考になる。

「日本でいちばん大切にしたい会社」著者講演会

1月30日アルカディア市ヶ谷でNN構想首都圏地域会 LLP、東京経営塾共催の講演会が開かれた。ベストセラーになった「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの著者坂本光司法政大学大学院教授の話が勉強になった。一度聞きたいと思っていたら、JASIPA定期交流会(23日)で東京経営塾の田中渉代表取締役にお会いし、たまたま坂本氏の講演があることを教えて頂き、招待して頂き喜んでお邪魔させて頂いた。主催者が開催しておられる「後継者育成塾」の第3回目開設記念大会だった。

坂本教授は、研究室の学生などと、全国の企業調査をされ、これまで7000社に及ぶ企業を訪問調査されていると言う。その成果を学生と一緒に本として出版されている。年に3冊以上は出されている。今年も「なぜ、この会社には人材が殺到するのか(仮名)」(2月下旬)、「さらば下請け企業(仮名)」(4月)、日本でいちばん大切にした会社№4」(6月)、「さらば、価格競争(仮名)」(6月)の出版予定が有るそうだ。3人採用なのに1万人の応募があったり、50数人の会社なのに6割以上が東大院出身の会社などもある。万年筆やメガネ製造販売会社で、高価と思われる商品を扱っているが、ファンが多く利益を継続的に(何十年も)挙げている企業も地方含めて数多くある。坂本教授曰く、「好況・不況に関わらず元気な会社」、「好況時はいいが不況になると利益が出ない会社」、「好況でも不況でも利益が出ない会社」を比率で表すと、以前は2:6:2だったが、最近は2:2:6の比率に変わってきていると言う。最初の2割の元気な会社は、なかなか表には出てこない。農業界でも農協に入っていない会社が元気で、このような人たちは行政に物申すパワーも、必要性もなく、政治に反映されるのは最後の6割の意見(TPPが典型的)が多いと言われる。坂本教授は最初の2割の企業を本や講演会で紹介することによって、他の企業の活性化、ひいては日本の底上げにつなげたいとの思いを持たれている。

総じて、元気のない会社は言い訳が多い。景気・業種・規模・ロケーションなどを言い訳に使うが、その反証事例は数多くあるとして具体的な事例を挙げて説明される。東北の木材会社ではごみ箱が5000~10000円で売れている。豊岡(兵庫)のハンガーメーカーでは1個最低3000円で経営している。元気な会社の共通項として、下記のようなことを挙げられる。

  • 1.正しい経営・人本経営:人を大切にする経営、目の前にいるお客を幸せにする経営
  • 2.非価格競争経営:社員のしつけを大切にする、下請けを大事にする、障害者を大事にする、エコに配慮する・・・。メーカーズシャツ鎌倉、豊橋のスーパー、羽村市のスーパー福島屋・・・。
  • 3.製販一体経営:農業は、自給率が危険領域だから未来のある産業。青森の無農薬リンゴで有名な木村氏は1個250円のリンゴが瞬く間に売り切れる。千葉県香取市の農家では、月4000万円輸出。いずれも農協とは独立。

以下、感動経営、業種分類不可能経営、製販一体経営、社会貢献経営、人財重視経営などを挙げられるが、詳細は坂本教授の本を一度読んで欲しい。「この会社に学べ」といくつかの企業の紹介があったが、香川県さぬき市のシューズメーカー徳武産業、札幌の富士メガネや、当ブログでも紹介した伊奈食品http://jasipa.jp/blog-entry/8368、長野中央タクシーhttp://jasipa.jp/blog-entry/6343、でんかのヤマグチhttp://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/2/22も出された。坂本教授のお話は、理論先行ではなく、実際に訪問されて調査された実績がベースになっているので、迫力もあり、経営者にとっても非常に参考になる話だ。