ブータンのワンチュク国王夫妻の訪日が話題を呼んだ。話される内容もそうだが、いつもニコニコ顔で、周囲の人に接する姿に癒しを感じられた方も多いのだと思う。そのブータンは、GNPよりもGNH(Gross National Happiness)に価値を置いた施策を展開し、国民の97%が幸福だと答えているので有名だ。
日本でも、幸福度の研究は行われ、経済企画庁が行っていた新国民成果指標は、連続最下位であった埼玉県からの苦情で順位発表は中止されているが、現在内閣府が昨年幸福度研究会を立ち上げ指標つくりを進めているそうだ。その一方で、法政大学大学院の坂本光司教授(「日本でいちばん大切にしたい会社」著者)が11月に「47都道府県の幸福度に関する研究成果」を発表した(朝日新聞2011.11.23朝刊37面「幸福度って測れるの?」の記事より)。それによると、幸福度1位は福井県、2位は富山県、3位は石川県でした。一方、45位は兵庫県、46位は高知県、47位は大阪府でした。上位は北陸3県が独占しました。
北陸3県に共通する特徴として坂本教授は、ものづくりや第二次産業が集積し、低い失業率の就業環境が実現していることや、保育所定員に比較的余裕がある子育て環境のよさなどを挙げました。最下位の大阪府は、平均寿命の短さや犯罪の多さ、保育所定員比率の低さなどから順位を下げています。確かに、コマツの坂根会長の話では、国が推進する「少子化対策」は、東京など都市の問題で、北陸では出生率は問題ない。」と言われていました。
しかし、幸せ感は、人の価値観、考え方に大きく左右され、一律的な指標で測れるものではないため、あくまで今回の調査結果も参考データとして活用すればいいと思う。各指標は、幸福感を構成する必要条件と考え、十分条件が「人の価値観、考え方」だろうか。ブータンは、人口が島根県程度、平均寿命は高度医療が受けられず66歳程度、幼児死亡率も高いそうだ。識字率も47%程度とか。そのような中で、コミュニティの良さ(人間関係)、自然環境・伝統文化の保護、統治者に対する信頼などを柱とする政策で、国民の幸せ感を掴んでいるのだろう。イギリスやフランスでもGNHに対する研究が進んでいるそうだ。
次に「幸福度ランキング」と「40の評価指標」を掲載しておきます。
幸福度ランキング
- 1位 福井 2 富山 3 石川 4 鳥取 5 佐賀
- 5 熊本 7 長野 8 島根 9 三重 10 新潟
- 11 滋賀 12 香川 13 岐阜 14 山梨 14 大分
- 16 山口 16 徳島 18 広島 19 山形 19 静岡
- 21 愛知 22 岩手 22 長崎 24 岡山 25 群馬
- 26 栃木 27 福島 27 愛媛 27 宮崎 30 茨城
- 31 奈良 32 和歌山 33 千葉 33 神奈川 35 鹿児島
- 36 宮城 37 秋田 38 東京 39 福岡 40 青森
- 41 沖縄 42 京都 43 北海道 44 埼玉 45 兵庫
- 46 高知 47 大阪
<40 の指標>■生活・家族部門/9 指標
- 1. 出生率 2. 未婚率 3. 転入率 4. 交際費比率 5. 持ち家率
- 6. 畳数 7. 下水道普及率 8. 生活保護比率 9. 保育所定員比率
■労働・企業部門/10 指標
- 10. 離職率 11. 労働時間 12. 有業率 13. 正社員比率
- 14. 就業希望者比率 15. 就業期間 16. 完全失業率
- 17. 障がい者雇用比率 18. 欠損法人(赤字企業)比率
- 19. 平均工賃月額
■安全・安心部門/12 指標
- 20. 刑法犯認知数 21. 公害苦情件数 22. 交通事故件数 23. 出火件数
- 24. 労働災害率 25. 地方債現在高 26. 負債現在高 27. 貯蓄現在高
- 28. 老人福祉費 29. 手助け必要者比率 30. 悩みストレス比率
- 31. 相談できない人比率
■医療・健康部門/9 指標
- 32. 休養時間 33. 趣味娯楽時間 34. 医療費 35. 病床数
- 36. 医師数 37. 老衰死亡者数 38. 自殺死亡者数 39. 平均寿命(男)
- 40. 平均寿命(女)