「顧客サービス」カテゴリーアーカイブ

「おもてなし経営」を実践する都田建設

本の題名「おもてなし経営」、副題に「顧客を創造し続ける究極の方法」とある。買いたい衝動にかられた。著者は、浜松にある都田建設社長の蓬台浩明氏(出版は東洋経済新報社)。著者の紹介文にも惹かれるものがある。

大学生が選ぶ厳選されたベンチャー企業経営者に与えられる「2010年リーダーズアワード」の50人にノミネートされる。施主、スタッフ同士、地域住民との深いつながりを軸とした心の経営は、業界を超え注目を浴びている。住まいづくりでは圧倒的な地域一番店として5200人以上の顧客から絶対的な信頼を得て、無借金経営で11年連続増収を達成・・・。

蓬台氏は「おもてなし」を、「相手の心にストレスを与えることなく、こちら側が相手の存在価値を認めている事や大切にしていることを言葉と行動、場の雰囲気などで示し伝えること」と言う。そして「経営」とは、「ビジョンやミッションをもとに、生みだす価値に対して人、モノ、金、時間のよい流れをつくること。志や情熱が商品やサービスとなり人をより幸せにする活動」と言う。

そして蓬台氏が特に嬉しい事としてあげるのは

  • 経営者としての自分が描くビジョンに共感してくれる仲間がいて一緒に行動してくれること。
  • お客さまに感動して頂けたという報告をしている時の社員の幸せな表情を見ること。
  • 会社が有言実行し、その成功を分かち合える事。

蓬台氏はドラッカーに学び、歴史、兵法、偉大な経営者の哲学、自然、日本の文化など、まだまだ学ぶことは多いと言います。そして大きさではなく、中身で世界一を目指したいと意欲十分です。その基本は、上司対部下、取引先やお客様との人間対人間のお信頼関係であり、人の成長なくして企業の成長はないとの信念に基づく行動です。

本の内容は、おもてなし経営について43のルールと言う形で展開している。自分を磨くルール、よいチーム作りのためのルール、感動を設計できる企業になるためのルールと展開していく。例を挙げる。「あなたが変われば、周囲も変わる」、あなたが変わるためのルールについて、「あなたから先に相手を好きになる」、「人に尽くす」「人に惜しみなく与える」「どんな時も笑顔を習慣づける」など。チームビルディングでは、有名な話として、週1日昼のバーベキュー(1時間)の実施です。レシピと買いだしなどそれぞれの役割を、社員自ら場を読み、考え行動する訓練だそうです(毎週と言うのがみそです)。他にも社長との面談、ロハス休暇などいろんな制度を実施しています。そして目指すは、「感謝・感動、感激」の3K(ルール41)。

顧客を創造し、信頼を獲得し、その信頼を維持し続けるためのヒント満載と思う。

FACE BOOKの「蓬台浩明の著者ページ(http://www.facebook.com/hodaihiroaki)」で本の感想コメントを入れたら社員から「いいね」が一杯返ってきました。

サービスに関する「事前期待」について

5月18日の当ブログで諏訪良武氏の「サービスサイエンス」に関して書き、その中で「事前期待把握の重要性」を言いました。サービスをお客様視点で考えると、お客様の期待を把握する(想定する)ことがサービス提供者の出発点であることはおわかり頂けると思います。如何にこの事前期待を把握するか?ズバリ聞いても、お客様もなかなか事前には明確には言えないが、実際やってみると、お客様の評価は厳しいという経験は誰もがしているものと思います。

お客様の期待は、やればやるほどキリがなく高まっていく。従ってサービス会社は常にサービスレベルを上げ続けなければならない。しかし、これでは会社はつぶれる。「事前期待のマネージメント」が必要になる。営業が、ほらを吹いて受注してが、実行段階でトラブルを起こし信頼を失うケースも頻繁に起こっているものと思います。うまく仕事に対する成果期待と、組織・人に対する信頼感などを組み合わせながら、適切な期待にもっていくことが営業にも求められる。

【事前期待マネージメント例】

  • TDLの待ち時間表示:お客様のイライラ解消策。
  • 祇園「お口に合いましたら、ええんですけど」と言い、素晴らしい料理を出す
  • 業務の見える化(プロジェクト進捗、トラブル対策など)でお客様のイライラ抑制
  • SLA(Service Level Agreement)契約

○定食屋さんで最も重要な事は?

定食屋さんのプロセスは、まず 席に案内する→メニューを渡す・注文を取る→飲み物や料理を提供する→料金を回収する となる。各プロセスにおいて正確性・迅速性・柔軟性・共感性・安心感・好印象(サービス品質の分解)の各評価項目で重要性を判断する(お客様の事前期待把握に基づいて)。ほとんどのプロセスにおいては迅速性が最も重要になると思われる。料理を提供するプロセスでは正確性も同じほど重要と思われる。その正確性とは「料理を間違わない」ということと思いがちだが、定食屋で料理を間違えると言うのはまず考えられず、この場合「お客様が料理を依頼した順番をきっちり守る」ということとすると、なるほどと思うのではなかろうか?

○年をとってくると、自宅では期待できない事をしてくれると感激する。

暑い日に汗をかきかき店内に入ると、さっと冷たいお手拭きを出し「よく冷えたビールがありますよ」とやさしく声をかけてくれたら、すぐ頼んでしまう。やさしい女性の言葉には弱い。これも男性心理を読んだ事前期待であり、女性営業職の男性を落とす戦略。

○ユニクロ、良品計画を立て直した大久保恒夫氏

業績を立て直す秘訣は?「挨拶です。それから店の清潔さを保ち、料理をおいしくする。中でも一番効くのが挨拶。客と会話をし、名前や日々の生活が分かるぐらいになるといい。成城石井もそれで利益を何倍にも伸ばしました」。これはまさにお客様と会話できる雰囲気を作り、お客様の事前期待を把握するための第一歩が挨拶と言われているのではないだろうか。今はデニーズの立て直し真っ最中。