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1回のお客を一生客にする法

「TOPPOINT2012.3号」に紹介されている本「1回のお客を一生の顧客にする法」(カール・スウェル/ポール・B・ブラウン共著、蓮見南海男訳、ダイヤモンド社)がある。どんな事業でもリピーター、固定客を如何に増やすかが安定性を確保する重大な経営施策であることは間違いない。IT業界でも、長いお付き合いのお客様を持つことによって、気心も分かり、お客様のシステムの実態も把握でき、深い人脈で忌憚のない意見交換もできる、このような環境が、プロジェクト失敗要因の多くを除外できることは経験者ならすぐわかることと思う。私の務める㈱NSDでは、「一生客」という言葉をビジネスモデルのキーワードにしている。これまでの長いお客様との信頼をより確実にする、また1回お付き合いさせて頂いたお客さまに一生お付き合いいただくことが、経営の指針になり、多くの会社が「顧客第一」を掲げ、顧客満足度向上活動を推進している。が実際は掛け声ばかりで、実の伴った活動になっているだろうか?この本は、ダラスで№1カーディーラーとして驚異的な実績を挙げた人の本である。

彼のサービス哲学の一部を紹介する。

  • ビジネスにおいて最も重要なのは「顧客が何を欲しているか」であり、それを正確に知るには「顧客に尋ねる」必要がある。顧客の求めるものを推測で決めてはいけない。該社では車の修理を終えたお客様に3つの質問に答えてもらっている。①料金は見積もりより安かったか?②約束の時間にできあがっていたか?③同じ個所の修理を受けるのは2度目ですか?修理に絶対的な自信があるため、この質問への回答で逆にお客様に「当社は良い仕事をしている」ことを再認識してもらうことになる。
  • 顧客が何かを頼んだら、常にYESと答える。そして顧客が困っていることがあれば出きるだけ無料で助ける。そのことによって「一生の顧客」になる可能性が高まる。既存のお客様に多少のコストを持ち出しても、新たなお客をつかむコストを考えれば採算は取れる。
  • 顧客は「約束したことは守ってほしい」と思っている。約束を守らない会社ほどお客を怒らせるものはない。
  • 「進歩していないということは、後退しているということ」という言葉があるが、これはまさに真実。他に先駆けて新たなサービスをやっても、直ぐ他社が追随する。顧客サービスは継続的に改善が必要。
  • すべての人を顧客にすることはできない。自社の客層を明確にし、その顧客が求めているものを提供することが大切。高級品を求める客層(低コストは要求しない)とスーパーの顧客とは違う。そこを曖昧にして百貨店は廃れた。

これを我々IT業界に当てはめても示唆に富んだものではなかろうか?「お客様から信頼される企業になる」ことが、今後マーケットが縮小する中でますます激化するサービス競争に勝ち残るキーワードになること必至である。真剣に考えよう!

営業ノウハウに関して

私は、SE出身で営業活動に関してはあまり経験はありません。しかし、企業は仕事をもらってこそ成り立つ商売です。その意味では、営業が事業を主導するメインの職務と言えます。だからこそ、営業ノウハウ本がSEノウハウ本より多く出回っているのでしょう。いろんな営業ノウハウ本を読んでいると、お客様の心を掴む(顧客満足度をあげる)ノウハウあるいは行動は、営業、SE共通の話で、SEにとっても参考になるものが多いように思う。

一見読者の気を引く題名が目につくが、2~3年前に出版された「世界3位の営業マンが書いた トヨタの社長に本田を売る方法(牛澤毅一郎氏著、アスコム)」、「かばんはハンカチの上に置きなさい(川田修氏著、ダイヤモンド社)」にも参考になる営業ノウハウが書かれている。先週、当ブログで紹介した甲州氏(http://jasipa.jp/blog-entry/7070)もそうだが、牛澤氏は外資系保険会社、川田氏は甲州氏と同じプルデンシャル生命保険出身と外資系保険会社出身のトップ営業マンの本が目立つ。

双方とも、お客様との人間関係、信頼関係を如何に作るかが最も重要との考え方で共通している。とかく、飛び込み営業で、いきなり自社製品を売り込みたい一心で、一生懸命説明しがちだが、これでは押し売りと一緒。お客様の要望に応えるために、場合によっては他社の製品を薦めることで、お客様の信頼をより確実に獲得することが出来ると言うのは牛澤氏。他社の商品を一方的に悪くいうのは、お客様の反発を買うことになりやすい。お客様は困った時に、あなたを信頼して相談できる相手と考えていただければ成功である。

川田氏は言う。お客様にはいろんな競合企業から営業マンが訪問している。そのような中で、お客さまに覚えて頂くには、お客さま目線でのちょっと違うことをやること。カバンは靴底と一緒、だからお客さまの所で机の上にカバンを置く時はハンカチの上に置く。アポ2分遅れでも電話をせよとか、携帯からのメールは素っ気なくなりやすく要注意など。しかし、最も重要なのは、商品を売ることではなく、お客様に役立つ情報を提供すること。営業と言う仕事は、「物事を相手の目線で考える」究極の仕事と言う。

「営業とは商品を売るのではなく、自分を売ること」。そして近江商人「商売10訓」にある「無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ」(http://jasipa.jp/blog-entry/6170)の言葉をあらためてかみしめたい。

プロのセールス哲学に学ぶ(「致知」2012.1神谷竜太氏記事より)

以前伝説の営業マンを紹介した(http://jasipa.jp/blog-entry/6802)が、今回紹介する甲州賢(まさる)氏もすごい。42歳の若さで一昨年亡くなられたそうだが、JTB,リクルートで10年半にわたってトップ営業として活躍した後、プルデンシャル生命にヘッドハンティングされ、そこでもトップセールスの地位に輝かれたそうだ。彼の軌跡や名言集を職場の有志とともに集め、当初はP生命の社員4000名に配布され、大きな評判を得たが、社内限定では惜しいとの声に押され、ライターの神谷竜太氏が出版されたのが『プロフェッショナルセールスマン~「伝説の営業」と呼ばれた男の壮絶顧客志向』(プレジデント社)である。

「僕はJTB時代に旅行を売っていたわけではないし、リクルートでも広告を売っていたわけではありません。いまも生命保険を売っているつもりはないんです。セールスという仕事は、お客さんのために解決策を提案することですから」

甲州氏が、若手たちによく聴かせていた話のひとつである。顧客が感じている、万が一のときの経済的な不安を解決したり、経営の課題を克服する手助けのために、生命保険という商品を解決手段としてたまたま売っているという考え方だ。

「社長と自分だけがハッピーな提案ではダメ。従業員全員がハッピーになれる提案をすれば、社長に堂々と提案できる」

「プロである以上、手ぶらで帰ってきてはいけない」

IT化以前の新人時代、提案書の手づくりに甲州氏は追われていた。どんな展開にも対応できるよう、一件の商談ごとに16種類の提案書を用意していたのだ。商談当日、顧客からの細かい要望にも、即座にこう応じた。商談と商談の合間が勝負で、その間商談のシナリオを繰り返しイメージしているのだ。

「そんなこともあろうかと思いまして、もう一案だけご用意して参りました」

加えて顧客との約束の時間や、顧客からの電話対応を大事にした。携帯電話にはこまめに留守録を入れた。「はい、甲州です。会議のためXX時まで電話には出られません。XX時にこちらからご連絡いたします」。そしてその間に電話をもらった相手にXX時きっかりに電話する。重要な約束の場合には、前日近くのホテルに泊まるなど、顧客の気持ちを考えた行動を徹底した。

「商品ではなく自分を売り込め、キャラクターを売り込め」

彼の周囲の人が積極的に甲州氏の話を聞かせてくれたが、この取材を通して、部下の育成にも人一倍気を遣い、サービス精神旺盛で思いやりに溢れる甲州氏の人柄を、神谷氏は感じたそうだ。

甲州さんは「他の営業マンと何が違う?」との問いに対して、「知識や技術的なことは皆さんと何も違いませんよ。ただ一つ、本気度が違うんです」と。営業はテクニック以上に心が成果を左右する、それもいかに顧客視点で行動できるか、そのレベルは人によって大きく異なり、その差が成果となって現れるということか。営業だけではなくSEにも通じる話である。