「リーダー育成」カテゴリーアーカイブ

座右銘“一燈照隅”(ダイハツディーゼル会長)

「致知2014.6」の連載「私の座右銘」にダイハツディーゼル古川與四郎会長が登場している。私自身、非常に共感できる、興味のある内容だったのでここに紹介する。

昭和43年に入社し、理工系の出身者の多くが設計部門を希望する中、製造現場を希望。希望叶って現場に配属され、厳しい現場体験を通じて、「岩をも貫くほどの熱意と信念が必要であり、どのような仕事、職場であれ、自分自身が持ち場を明るく照らし輝かせるほど仕事にのめりこまなければならない事」を学んだそうだ。すなわち”一燈照隅”、これが古川氏のビジネス人生を貫く座右の銘になった。以降、部下を束ねる立場になってからも、現場に入っていく部下たちと共に悩みながら進めていく仕事にやりかたは変えず、係長の時は自分の時間の20%を部下のために使い。課長の時は自分の仕事は時間外で、時間内はすべて部下のために使ったという。

経営にも携わった古川氏が、その信念を下記のような言葉で伝える。

●指導と言うのは愛情であり、愛情は体を張らなければ伝わりません。体を張って頑張る上司には、部下も喜んでついてきてくれる。
●ものづくりは人づくり、知識以前に社員の「人間力」を養うことが重要
●与えられた持ち場で5年間、わき目も振らずに頑張れば、必ず見えてくるものがある
●基本に基づいて、決めたこと、決められたことをきっちりやろう。キョロキョロせずに気張ってやろう
●基本を疎かにせず、一燈照隅の心で自分の持ち場を明るく照らし続けていれば、必ずその仕事ぶりが周囲の目に留まり、より高い舞台で活躍するチャンスに恵まれる

古川氏は、人間学を学ぶことを社員に勧めるため「感動・感激・感謝への気付き」と言うテーマで社内講演会や勉強会を実施しておられる。

以前何度もこのブログで紹介した「いま、ここ」の精神。「‘いまがその時、その時がいま‘というんですが、本当にやりたいと思っていることがいつか来るだろう、その瞬間に大事な時が来るだろうと思っていても、いま真剣に目の前のことをやらない人には決して訪れない。憧れているその瞬間こそ、実はいまであり、だからこそ常に真剣に、命懸けで生きなければいけないと思うんです。」と言うスペイン「サグラダ・ファミリア教会」の建築に携わられている彫刻家・外尾悦郎氏(http://jasipa.jp/blog-entry/8182)。まさに今与えられた場と真剣に向き合うことが自分の人生を拓く近道なのだろう。

並はずれたマネージャーになるための80対20の法則とは?

標記題名の本が出版されている。リチャード・コッチ著、高橋裕子訳、阪急コミュニケーションズ、2013.12発行。「80対20の法則」とは、顧客の20%が利益の80%をもたらすなど、ごく少数の出来事が大きな結果をもたらすとの経験則だ。著者は、リーダーとしての日々の仕事をする上でも、この法則を意識して行動できれば大きな成果が挙げられると主張している。私にとっても、「この法則が頭にあれば」と思い当たることは多々ある。

著者が「80対20の法則」をマネージャーの行動に活かす方法として下記のようなことを挙げている。

●「探偵マネージャー」になる:何事にも疑問を持て。例えばすべての顧客が大切だと思うのは幻想。本当に重要なのは主要顧客だけ。
●「メンタリング・マネージャー」になる:5分でいい、適当なタイミングで部下に方向性を示し、力づける。(部下に気持ちよく能力を発揮してもらうためのマネージャーの時間以上に大事な時間はあるだろうか?)
●「自由にやらせるマネージャー」になる:部下に自由にやらせて潜在能力を引き出す。
まる「時間に余裕を持つマネージャー」になる:もっとも価値のある仕事に絞り、他の仕事は無視する。全労働時間の20%以下で富の80%以上を創造している。
「単純化するマネージャー」になる:仕事は単純な方がいい。複雑な仕事はコストがかかる。
●「怠け者マネージャー」になる:自分が最も得意なことに時間を費やす。”怠慢で無能な将校“は害がないので放っておく。”勤勉で有能な将校“は優秀な参謀、”勤勉で無能な将校“はどうでもいい仕事を作りだすので即刻クビ、”怠慢で有能な将校“は最高責任者にふさわしい。

「効率が悪く、会社の利益にもつながらず、ただもくもくと時間を潰しているだけ」、少しオーバーな言い方かもしれないが、自分の、チームの、グループの仕事を振り返ると、思い当たる仕事があるのではなかろうか。「忙しいことは好いことだ」「忙しいと仕事をしている実感がでて満足感がある」「周囲の人は残業して頑張っているのに早く帰るとはけしからん」のような職場の風土から脱して、「会社に貢献できる仕事」に重点的に取り組み、仕事の効率を最大化して、時間に余裕を持てるマネージャーになる。「そんなこと出来るか」というあなた、「80対20の法則」では会社の利益の80%は、社員20%の人により挙げられているとの経験則もあるそうだ。一度「80対20の法則」を素直に認めて、自分の周りの仕事を見つめ直しては如何だろうか。社員をやる気にさせる「メンタリングマネージャー」(信頼関係が基本だが)として、部下への声掛けにも時間をかけて欲しい。

部下の声がリーダー育てる

標題は、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本のロバート・サイデル社長が、2013.112.16日経夕刊の「NIPPON ビジネス戦記」に投稿されている記事のタイトルだ。該社では、「毎年社員意識調査を実施し、部下に直属の上司のリーダーシップについて聞いている」とある。例えば人材育成に関し「部下の成長に積極的に関与しているか」、リーダーとしての技能では「自分の能力を最大限に引き出してくれるか」と言った点を尋ねるそうだ。「上司を他人に良いリーダーとして推薦できるか」と言う質問まである。調査結果は直接的には人事や給与などに反映しないが、原則これらの意見はすべての上司に伝わる。上司は結果を踏まえてリーダーシップをどう高めるか計画を策定し、定期的に直属の上司と達成状況を点検する義務を負わせている。

この調査の目的は、部下の評価を得ることでもなく、上司が部下に好かれる手段を考えるためでもない。自身の姿を客観的にみつめることで、さらに優れたリーダーとして成長するために何が必要かを多面的に考えるためとロバート氏は言う。

12.15の当ブログで紹介した「ガリガリ君の赤城乳業(http://jasipa.jp/blog-entry/9224)」の記事に「部下が上司を評価する仕組み」があると書いた。赤城乳業での上司評価シートには、コミュニケーションの程度、方針や指示の明確さ、支援や助言の程度など、約20の質問項目が記載されている。質問項目の最後は「あなたの上司を評価すると?」という極めてストレートな質問があるそうだ。選択肢は下記。

  • S:尊敬している。自分自身の目標の人物である
  • A:尊敬している。仕事にやりがいを感じさせてくれる
  • B:学ぶ点は多いが物足りなさがある
  • C:あまり期待していない
  • D:早くこの上司から離れたい

部下による上司評価は、上司に緊張感を与え、部下に見られているという緊張感を持ち、より積極的に部下を育て、支援するようになると言う。

「トヨタの育て方(http://jasipa.jp/blog-entry/9238)」の記事の中で「評価基準は成果プラス人望」との言葉があるが、これも部下からの信頼感を言っている。

「中間管理職(部長、課長クラス)や、リーダークラスの成長如何が、会社の帰趨を握る」と、多くの人が言い、かつ多くの会社がその育成に大きな悩みを持っていると思われるが、上記の会社の施策も参考になるのではと思われる。