「感動スポーツ」カテゴリーアーカイブ

おめでとう!42年ぶりの快挙 渋野日向子ちゃん

今、メディアが大騒ぎの「ゴルフ全英女子20歳渋野V」。プロ合格1年にして、岡本綾子、宮里藍も達成できなかったメジャーをいとも簡単に(?)制覇してしまったのだから、騒ぐとともに驚き、喜びが爆発するのも当たり前だ。
この快挙を、海外メディアも称賛している。タイガーウッズなどの名プレーヤーでも緊張する各場面で、笑顔あふれる姿で挑戦する姿に、こんな優勝者は過去にいないと驚いているのだ。圧巻は、最終18番ホールでの優勝を決めるパット。芝目を読む動作の時にも笑顔を見せる姿に、観衆のほとんどは“入れ”と渋野を応援したのではなかろうか(あるメディアでは、外国の子供が渋野に笑顔を返され、渋野の優勝を必死で応援したとある)。
その渋野も、高校時代全国優勝をした以外、アマチュア時代目立った戦績はなく、その頃は、笑顔とは程遠い怒りやいらだちをよく顔に出していたと言う。プロ転向後、そうした感情を出すと、スコアを落とすことに気づき、内心はつらくても、意識して笑顔を心掛けるように努力したそうだ。そして感情をコントロールできるようになると一気に才能が開花し、勝負強さが身に着いた。ボギー以下の悪いスコアを出した直後のホールで、バーディ以上の良いスコアを出す確率「バウンスバック率」が、今期の国内ツアー選手の中でトップとのデータが、感情のコントロールによる笑顔の効果であることを物語っている。

スマイリング シンデレラ」の愛称がついた。これまでは、観衆の笑顔での励ましが力になったとの優勝者の発言があったが、今回は、逆に選手の笑顔が観衆に笑顔をもたらした。メディアはこぞって「こんな笑顔ははじめて」との評価で、この愛称がぴったりの渋野を世界に印象付けた。「笑顔は国際語」とも。今後他の選手にも好影響を与え、明るく笑顔でふるまう選手が増え、さらにゴルフ人気が高まることを期待したい。
今朝のニュースで、世界ランキングが46位から14位になったと報じられ、東京オリンピック出場可能性が高まった。これからは、日本だけではなく世界的にも注目され、メディアへの露出度も高まると思うが、常に笑顔を絶やさず、感情をコントロールしながら日本の女子ゴルフ界を引っ張って行く存在となってほしい、頑張れ!渋野!
今テレビでは、間もなく帰国との情報が報道されている。どんな笑顔が見られるのか楽しみだ。

笑顔の効果は、これまでも当ブログで紹介(例えばhttps://jasipa.jp/okinaka/archives/5329)してきたが、あらゆる所で実証されつつある。

おめでとう!日本ハム3年ぶり日本一!

ともかく劇的、感動的な日本ハムの日本シリーズ制覇だった。広島も、最後の最後まであきらめない戦いでセリーグを制覇したが、日本ハムの力が上回った形だ。その強さの秘密が今朝の朝日新聞“若い力育ちV”とのタイトルの記事で分かったような気がした。
日ハムの主力には高校から入団した選手が多い。西川、中島、中田、陽、大谷、近藤たちだ。球団は他の球団のようにFAに頼らず、中心選手は自前で育てるのが基本方針だそうだ。確かに金にものを言わせて他の球団の4番をかっさらう球団とは違う。日ハムの自前の育成方法が特徴のようだ。高校からの入団は5年、高校・社会人は2年が育成期間となり、その間は2軍の練習施設に併設した「勇翔寮」への入寮が義務らしい。そして最初の休日には決まりがあり、本を買いにくのだそうだ。そして朝食後の10分間が読書タイム。高校教師から転身し寮の教官となったのが本村幸雄選手教育ディレクター。「プロで成功するために、いろんな考えを身につけるのが大事で、手っ取り早いのが読書」と言う。選手は毎日日誌を付け、自分と向き合う。シーズン中は2度、長期目標管理シートに記入し人の目につくロッカールームにも貼る。人に見られることで目標達成への責任感を持たせプロの自覚を促す。年4度外部講師(為末大など)を招いての講義もあり、その際は感想文の提出が義務つけられる。
支配下登録選手の数(今季65人)は12球団で最少だ(育成選手はいない)。少数精鋭だと出場機会が増え、実戦で鍛えられるとの発想だ。「常に全力」「最後まで諦めるな」とのスルーがんも自然発生的にスローガンになり、あらゆるところに貼り出されているそうだ。「高校生から育てると球団の一貫した方針や文化を継承できる」と大淵スカウトディレクターは言う。シーズンの11.5差を覆したのも、日本シリーズで2連敗の劣勢を覆したのも育成力の差なのだろう、と記事は締めくくっている。
プロに入る選手は、高校・大学などで周囲からちやほやされ、天狗になっている選手も多いのではなかろうか。プロに入って、成績が残せなくなり、人生を狂わせる選手も多いと思われる。そんな中で、組織として、少数精鋭の自前主義で、入団した選手を育てなければ球団の明日はないとの姿勢には共感を覚える。企業でも、中途採用を控え、採用した新人の育成に注力する企業に優秀な人が集まり、良き企業文化・風土の形成・徹底ができているように思うがいかがだろうか?

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青学はなぜ駅伝で急に成長できたのか?

10日の出雲駅伝でも予想通り、青山学院大学が優勝した。箱根駅伝でも2009年に33年ぶりに出場して以降大会の常連校となり、2015.16年には連覇という快挙を成し遂げた。かくも急に強くなったのはなぜなのか?2004年に中国電力の「伝説の営業マン」から青学陸上部の監督に転身された原晋氏の指導方法がその大きな要因だと言われている。「衆知(旧松下幸之助塾)」2016.9-10月号の特集記事「ビジョンを実現する力」の中で、「“半歩先”の目標達成が10年先のビジョンを実現する~箱根駅伝連覇を成し遂げた奇跡の成長メソッド~」のテーマで原晋氏へのインタビュー記事があった。
青学陸上部監督就任のプレゼンで「就任して3~5年で箱根駅伝に出場、5~9年でシード校に昇格、10年で優勝」の長期ビジョンを掲げた。原氏いわく「スポーツでもビジネスでも、できもしない努力目標は、ただの掛け声にすぎない。将来の大きなビジョンはそこへ至る筋道があってこそ、実現することが可能」と。就任時、そこまで自信があったということだ。その自信の根拠とは?
原氏が監督に就任した年から特別強化指定制度で強い選手が入学してくることになることも大きな要因となったが、もう一つの理由に興味を持った。原田氏は高校(世羅)、大学(中京)、中国電力で駅伝など陸上選手として活躍したが、その後中国電力の営業マンに転身、監督就任前の10年間営業経験を積んだ。目標設定の大切さ、その目標を達成するためのアプローチ方法や実行するときのいろいろな工夫、目標の達成度合いを管理する方法、実行後の反省のやり方など、ビジネスの現場で身に着けたことを陸上部の指導に活かせば、改善の理屈も、その筋道も見えてきて、前述の長期ビジョンを自信をもって設定することができたという。
まず目標達成のための各人の意識の変化に訴えるために三ケ条を作った。
1. 感動を人からもらうのではなく、感動を与えることのできる人間になろう。
1. 今日のことは今日やろう。明日はまたやるべきことがある。
1. 人間の能力に大きな差はない。あるとすれば、それは熱意の差だ。
その上で、選手それぞれに自分の目標を考えさせ、それを「目標管理シート」に書かせ、チームで各人の目標に関して議論させ、みんなでその目標達成のための方策を考え、結果の反省をする。目標は一歩先ではなく半歩先で設定し、一つづつ確実にクリアすることで、達成感を味わい、次のステップに挑戦していくエネルギーとすることが大切だと説く。この方法が定着するのに3~4年はかかったそうだ。原氏はチームの進化には4つのステージがあるという。ステージ1は「命令型」、監督の命令でメンバー全員が動くチーム。ステージ2は「指示型」、監督がリーダー(学年長)に指示を出し、リーダーがメンバーに指示を伝える(リーダーを育てる)。ステージ3は「投げかけ型」、監督が方向だけをリーダーに伝え、リーダーとメンバーが一緒に考えながら動く。ステージ4は「サポーター型」、リーダーを中心にメンバー全員が考えて決めた規則や方向性で動き、監督はサポートに徹する。原氏曰く、ステージ3に到達するのに8~9年かかり、今はステージ4にやっと到達できた状態だそうだ。「選手一人ひとりをよく見てしっかりと話し合う」、そして選手との信頼関係を築かなければチームの進化もできない。私生活も含めて選手のちょっとした雰囲気の変化に気付くのも指導者の役割という。
いまだ、スポーツ界は根性や気合を重視し、体育会特有の上下関係を維持する雰囲気が支配していることも多いのだろう。指導者によって大きく変わるのは、今年のリオオリンピックの柔道などでも示された。勝つのが目的ではなく、大学スポーツの新しい価値を生み出し。イノベーションを起こしたいとの原氏のビジョンに注目したい。2020オリ・パラに向けても。

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