コミュニケーションの基本は「ストーリー」

社内での報告や、連絡において、書面に書かれた箇条書きの文言を淡々と説明するだけで、聴き手が何を聞きたいか全く気に留めず、何を言いたいのか分からない話し方に、お互いの意志疎通ができず苛立った経験をした方も多いのではないだろうか。書店にも話し方やコミュニケーションのとりかたに関する本が多数並んでいることからも、上記問題意識を持つ人が数多くいることが想定される。その解決策の一つとして、「ストーリー」をキーワードに挙げるのが目立つ。当ブログでも、「リーダーはストーリーを語りなさい(http://okinaka.jasipa.jp/archives/430)」で、そして「あなたは部下を信頼していますか(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4054)」でもストーリの重要性を書いた。

心に響く「ストーリー」の語り手になる。人々の心に響き、印象が残るのは言葉の羅列ではなく、物語であり、ストーリーだ。組織を活性化させるリーダーの役割も、目指すべき未来をストーリーで話せることが必須。新ブランドを世に出したり既存ブランドのイメージを高めたり、新人教育にも、ベテラン社員に活を入れるためにも使われる

感動プロデューサー平野氏の言葉も紹介した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/522)。

物語力(story)で感動を生み出せ。売れているものほど、“その商品が生まれるまでの思い、試行錯誤、商品化に至るまでのドラマ”といったストーリーが描かれていることが多いことに気付く。そして「ストーリーとしての競争戦略(楠木建著、東洋経済新報社、2010・5)」にも「優れた戦略とは、思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある」と。自分の心が動かないストーリーでは、他人の心は動かせない。

昨年出版された「成功する人の話し方」(ビル・マクゴーワン他共著、小川敏子訳、日本経済新聞社、2015.3刊)にも7つの絶対法則の2番目に

「映画監督」になれ:伝えたいメッセージをエピソードの形にし、相手の創造力を刺激する豊かなストーリーを提供すれば、聴き手は夢中になる。

とある。6番目の法則は

話すより聴く:会話では、話すのと同じくらい聴くことも重要である。話術の達人は、並はずれてすぐれた聴き手で、相手への関心が高く、寛大で慎み深い。

「コミュニケーションというのは、話し手だけでは成立せず、聴き手が聞く耳をもって初めて成立する」、すなわち、聴き手が話し手の意図を感じられなければコミュニケ―ションは成立しない。そのためには、聴き手が何を聴きたいか、何に関心を持つか、相手の表情を見ながら話すことも重要となる。「一方的に報告すれば用は足せた」だけでは、コミュニケ―ションにならず、何の効用も生まれない。報告用の資料作成も視点は同じだ。報告相手の聞きたいことを想定しながら作成するのが基本だ。私自身も多くの人の前で喋る機会もある。聞いていただく人の心を察しながら、話す訓練を積みたい。

あけましておめでとうございます

今年の正月は春を思わせる暖かさで、箱根駅伝も、富士山の美しい姿が時々映し出される絶好の天気に恵まれました。昨年は手帳を見ると2日に京都で20cmの積雪とあり、確か箱根駅伝山登りも雪景色だったと思います。これもエルニーニョ現象、温暖化の影響としたら、喜んでばかりはおれない。

正月には年初めの金言的なものに目に触れるチャンスが多い。愛読している致知出版社のメルマガに「吉田松陰1日1言」の中のひと言が紹介されていた。松陰が妹千代に出した書簡。

  • 正月にはいづくにも、つまらぬ遊事(あそびごと)をするものに候間(そうろうあいだ)、
  • 夫(そ)れよりは何か心得になる本なりとも読んでもらひ候(そうら)へ

この言葉にならった訳ではないが、今年の正月は、暮れに買い込んだ本を読んだ。近くの本屋も秋葉原の本屋も在庫切れで、東京まで行ってやっと買えた本、「第三世代の経営力」(横田尚哉著、致知出版社、2015.11刊)と、常々GDP競争には限界があると思っていたところに「脱・成長神話」(武田晴人著、朝日新書、2014.12刊)と言う本などが目に留まり買い込んだ。

前者は、速度を重視した第1世代(1945~1973)、情報を重視した第2世代(1973~1997)、切り替えを重視した第3世代(1997~)とそれぞれの経営力は、次代に応じて当然変化している中で、時々の変化に柔軟に対応できる企業だけが生き残るとの主張を展開している。そして第三世代の経営力に関して解説している。

後者は、アベノミクスをそれなりに評価しつつ、ある統計データ(2005年ダイアモンド社による15~75歳6000人程度の標本調査)、「日本における国民一人当たり実質GDPと生活満足度の推移」に基づいて、1958年を100とすると実質GDPは6倍になっているのに生活満足度はほとんど変化なしとの実態を経済学者は認識すべしと主張している。このことから経済成長に代わるものとして各種考え方を提言している。暮れのNHKの番組で、東大を出てリーマンブラザーズに就職し、それなりの富を得ていた青年が、会社が破綻したその日に退職し、今は小豆島中心に地方を元気にするために活躍している姿が映し出されていた。その青年の「都会では笑っている人の姿を見ることは少ない。地方に来るとほとんどの人が笑顔で暮らしている」との言葉が印象に残っている。いずれ上記本に関しては当ブログでも紹介したい。

平均63歳のシニア集団を率いて、製造業中心にコンサルを続け毎年成長を続け、いずれ上場の夢を追いかけられている社長から毎年年賀メールが来る。その中で

「始めることを忘れなければ歳をとらない」日野原重明(聖路加国際病院理事長)

との言葉が紹介されていた。ご本人は社業だけでなく、個人的にも忙しい日々の中、趣味などにも積極的に挑戦されている。私よりかなり年上の方だが、見習いたいものだが、趣味音痴なもので、なかなか何をすればいいのか定まらない。今年は何か社会貢献の面で、あるいは趣味の面で新たに身に付けるものを探したい。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。JASIPAのますますの発展を祈りつつ。

今年もありがとうございました

今年も今日は大晦日。この年になると、時がたつのが早く感じられる。余生が短くなってきたせいだろうか。しかし、そんな事を考えても仕方がない。残り短い人生を如何に悔いなく生きていくか。日々精一杯生きることが、この世に生を受けた人間としての生き方と思いつつ日々を送っている。

今年1年振り返ると、年甲斐もなく、ある1部上場企業でかつ製造業の監査役を引き受けてしまったことが、最大の出来事だ。当ブログでも最近「あなたは部下を信頼していますか?」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4054)との記事をUPしたが、私の信条としても、「社員を信じることが企業成長の原点」と考えてきたが、監査役としての仕事は、まず疑ってかかることだから、私も引き受ける際には大いに迷ったことも事実だ。しかし、最近になっても企業におけるコンプライアンス違反が、信じられない形で表面化する現実を見て、「会社を如何に正常に運営していくか」は社員の幸せのためにも非常に重大なことと考え、引き受けることにした次第だ。期待以上に、監査役会、取締役会は活発な議論で終始し、ともに会議時間が3~4時間に及ぶこともしばしばだ。私も事前の勉強に出来るだけ時間を割き、子会社(海外含め)などの現地調査にも積極的に参加して、実態把握に努めながら、会議では遠慮なくしゃべらせて頂いている。より良い会社にするために、これからも注力していきたい。

JASIPAの活動に関しては、今年5年目だが、私自身少し不完全燃焼だったかも知れない。しかし、JASIPA自体は、5年前に私が参加した当時から見ると、今年4月に理事長初め理事メンバーが大幅に若返り、若いエネルギーと若い知恵で各種委員会が活性化し、会員企業間の交流も一段と加速され、確実にいい方向に進んでいる。JASIPAも一度仲間として溶け込めば、その良さを実感できるし、きっと事業にも役立つと思えるのだが、なかなか会員数が増えないのが悩みだ。アピール方法に工夫が必要と思える。是非とも会員の皆さんはもちろん、まだ会員ではない企業の方々も、積極的にJASIPAの活動に一度首を突っ込んで、その良さを実感して頂きたいと切に思う。JASIPAはほかの団体と比べても、人脈の濃さは特筆すべきものがあり、年間10万円弱(東京以外は7万円弱)の会費は、人脈を増やすことだけでも安いものと思えるほど、皆さんの交流密度には心底感心する。きっと商売の上でもいろんな交流ができているのだろう。

スポーツジム通いも続けている。昨年は194回だったが、今年は183回だった。あまり無理をせず、2日に1回以上を目標としたが、辛うじて達成できた。ご愛読いただいているJASIPAブログも、監査役の仕事も入ったこともあり(言い訳?)、昨年109件が今年は77件と年々かなり減ってきている。テーマが、「顧客第一主義」「企業理念」「企業風土改革」「全員経営」などに絞っているため、5年も続けると言い尽くし感があるため、少し間が空くようになってきた面もある。来年も、あまり無理をせず気ままな形で継続させて頂ければと思っている。

それにしても、今年もいろんな方にお世話になった。1年楽しく過ごせたのも皆さんのお蔭と心より感謝したい。ブログが続くのも、ご愛読くださり、「読んでるよ」と一声かけてくださったり、「続けてください」と言われたり、多くの方からの励ましの声があるからこそと思う。ほんとにこの1年お世話になりました。

2016年が皆様方にとりまして、良き年でありますよう祈っています。ありがとうございました。

冲中一郎