世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ!

世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ」とのタイトルの本が出版されている(ダイヤモンド社、2018.7発行、山本秀樹著)。本屋の店頭で興味を引くタイトルのため、斜め読みした。帰って、インターネットで調べると著者のページに巡り合えた(なぜ、キャンパスも“講義”もない大学に、”ハーバードを超える人材が殺到するのか?” https://diamond.jp/articles/-/175064 ダイアモンドオンライン)。
2014年にサンフランシスコを拠点に開校したそうだが、今では2万人以上の受験者が集まり、合格率は1.9%、中にはハーバード大学、スタンフォード大学などの名門大学の合格を辞退して進学する学生もいるとか。現在日本人学生も3人いる。
“校舎”がない、教師は“講義”も”テスト“もしない、全寮制なのに授業がすべてオンラインという、常識にはない大学だ。大学を立ち上げたのは教育業界では無名の起業家(ベン・ネルソン氏)だが、その意思は、オバマ元大統領やハーバード、ペンシルバニア大学の元学長など多くの著名人の心を突き動かしミネルバ構想は推進されていった。その意思とは、トップ・エリート大学の”学びの質“と”非効率な経営“を徹底的に見直し、高等教育をあるべき姿に戻すこと。そして既存の大学が苦しんでいる「変化の速い社会で活躍するための実践的な知恵」、「複雑化した国際社会や異文化への適応力」、「高騰する学費と学生ローン」に対して具体的な実例でその解決法を提示している。学費も既存の米国トップエリート大学の3分の1以下(年間138万円)で、しかも各家庭の経済力に応じた給付金制度もあり、1円も負担しない生徒もいるそうだ。
教師にとっては効率的な講義方式をやめ、教師・学生全員が集中し、学習効果を最大限に高めることが可能な「アクティブ・ラーニング・フォーラム」を採用。すべての授業は、教員含め20人以下のセミナー方式で行うが、教室はなく、オンライン・プラットフォームを通じて行う。参加者全員の顔も見え、発言の多寡もわかり、だれに発言させるか教授の判断も可能だ。
“異文化への対応力”視点では、学生は4年間で世界7都市(サンフランシスコ、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北)を巡回し、滞在地で現地の企業、行政機関、NPOなどとの協働プロジェクトやインターンを経験しながら同じ生活を営めることが挙げられる。その間もオンラインで、どこにいても先生や他の学生との授業は可能だ。最初はアジアの拠点として東京、京都、福岡が候補となったが、ソウル・台北が選ばれた。マッキンゼー、グーグル、ゴールドマン・サックスなどがキャリアオフィスを提供し、アルゼンチン教育省などの政府系機関がプロジェクト学習の機会を与えていることを考えれば、日本が選ばれなかった理由とともに、グローバルに活躍できる才能ある人材を獲得するために必要な要素を見つけるヒントになると著者山本氏は指摘する(本を読めばわかる?)。
とんでもない大学と思われる方もいるかもしれないが、1年生終了時のクリティカル思考力を測定する外部テストで全米の大学の中で圧倒的一位の成績を収めているとの事。変化が激しく、グローバル化がますます進む中での対応力、判断力は、従来の講義やテストでは測れない。米国西海岸のイーベイやウーバーなど著名なベンチャーキャピタルから多額に資金を得ている。各企業も、経営企画・新規事業開発、マーケティングなどの面でこれからの人材育成への新しい挑戦に期待するところが大きいのだろう。壮大な実験が進んでいる。期待したい。

幸せの方程式!?あなたは否定?肯定?

下記のような話を皆さん信じられますか?
・花粉症の人は完全主義者。直すには“よいかげん”が大切。
・“ありがとう”の力でがん細胞がなくなる。
・人生の出来事を否定的にとらえる人は病気になりやすい。
(すべての出来事を肯定的に捉える人には神様は微笑む)
・熱が39度以上でも解熱剤を飲んではいけない。高熱はがん細胞を一掃する。
・“笑い”によって免疫力を高めることが出来る。
(神経痛、リューマチの人の共通項は”笑わない人“。)

まずは、“なぜ”と聞きたくなりませんか?
「宇宙を味方にする方程式」(小林正観著・2016.12月・第29刷発行、致知出版社)を致知メルマガで“「うれしい」「楽しい」「幸せ」の本、肩の凝らない本“として紹介されていたので興味半分で読んだ。小林氏は、年間10万kmを移動、300回講演や茶話会に呼ばれる人気者らしい。小林氏の人生論は

目の前にあるものをただ黙って(肯定的に)受け入れて、愚痴や泣き言を言わないで淡々と笑顔で乗り越えていく。それが人生のテーマ」

ということ。冒頭の話に関して「なぜ」と聞く人は「どこかに否定をする気持ちがあるのでは」、「否定してもそこから何も生まれない」と。自分の人生のすべての出来事を否定的に論証し、否定的に評価している人は、「生きているのがそんなにつらいんだったら早く死んじゃいましょうね」と体が反応するのだと言う。

もう一つ、“なぜ”と聞きたくなる宇宙の法則、「トイレを綺麗にする人はお金に困らない」。そして「お金と仕事の問題は、“掃除”をしていればなくなってしまう。体と健康の問題は“笑って”いればいい。人間関係については、感謝、”ありがとう“を言っておればいい」、「本当の幸せの極というのは、何事も起きないこと。特別なことが何も起きていないというのが、ものすごく特別なこと」。

さて皆さん、「そんなこと信じられない」と言うか、「そうだ、常に笑いと感謝の心をもって生きていこう」と肯定的に捉えるか、どちらを選びますか?

逃げられない世代(現20~30歳代)

元通産官僚で現在30歳後半の宇佐美典也氏が「逃げられない世代」(新潮新書、2018.6刊)を出版している。サブタイトルは「日本型”先送り”システムの限界」で帯封には“2036年完全崩壊(年金、保険、財政赤字から安全保障まで)”とのショッキングな文言が気になり、購入した。
イデオロギーに偏ることなく、中立的に今の日本を見て、将来の日本を考えたいが、書店に並ぶのはどちらかに偏向する本ばかりなのが、この本を出版した理由だとか。そして、先送りした財政問題など、にっちもさっちもいかない状態になるのが2036年、その時に最も被害を受けるのが現在の20~30代で、宇佐美氏も当事者ということで、切実な問題ととらえ、出版の動機となった由。
社会保障と安全保障の2大課題に関して、現状の先送り政治構造を分析し、今のままでは2036年に問題が顕在化、先送り不可となり、その時現役世帯である現在20~30代の人が老後に向けて被害を直接受けることになるとの問題提起だ。その上で、問題を政治に求めるのではなく自らのものと捉え、「我々はどのようなスタンスでキャリア形成を考え社会に参画するのか」考えていかなければならないと提言している。

政治の世界は、「選挙でいかに勝つか、勝てるか」が第一義のため、中長期的な課題に関してなかなか手が打てない。代表例として「消費税」や「税と社会保障の一体改革」に見られるように先送り構造が当たり前となり、今後ともこの先送りシステムが解消する見込みもない。「シルバー・デモクラシー」との言葉があるように、選挙の勝ち負けを大きく左右する高齢者への気配りで社会保障にも手が付けられない状態は続く。宇佐美氏は「低金利環境が財政赤字を許容し、社会保障関係費の膨張が財政赤字を拡大させ、拡大しきった財政赤字を金融緩和が呑み込む、という三位一体の関係で社会保障制度の問題解決を先送りしていく構図だと言う。社会保障制度は国民が相互に支えあうシステムであり、人口構成の変化が制度改革に直結する。現在は、高齢化した団塊世代(1947~1951生まれ1028万人)を、団塊ジュニア世代(1971~1975生まれ984万人)が支えてくれているが、団塊ジュニアが高齢化した際、次の世代に人口の塊がなく、問題の先送りが出来なくなる。国債残高、政府債務、社会保障費の伸びなどを考えれば、限界点は20年後に来ると宇佐美氏は言う。金利上昇に伴う利払い増や、株価ダウンによるGPIF運用の年金予備費の減少などが起これば、もっと早く限界が来る。
安全保障に関しても、今はGDPでも世界3位で存在感はあるが、中国がいずれ突出し、インド、インドネシア、ブラジルなどが猛追してくる。エネルギー、食材などの自給率の低い日本は自由貿易体制を堅持することが生命線だが、世界における日本のプレゼンスが弱くなると、世界に対する指導力の衰えが懸念される。さらにはアジアでのポジションが変わり、米国が日本との同盟関係を解消する可能性にも言及する。

金融緩和の出口論議はまだ時期早尚とのことで議論されていない(議論することさえ怖い?)が、いずれ出口が来るのは必定。完完全崩壊が2036年か、それとももっと早いのか、遅いのかは分からないが、宇佐美氏の分析は非常に分かりやすい。平均寿命が今以上に伸びることを考えると親も国も会社も積極的に守ってくれない65歳~74歳の期間の生き方を考えねばならないと宇佐美氏は言う。人生のステップが「教育→労働→引退(老後)」から「教育→労働→自活→引退」とならざるを得ず、現在30歳代以前の若い人たちは、65歳~74歳の間“自活”できるよう、若いときからスキル、ブランドを磨くことを忘れてはならないと説く。20年後世の中は予想もできない変革が起こる可能性は大きい。孫の時代が心配だ。

 

冲中一郎