顧客との話し方・聞き方

「知的会話入門(樋口裕一著、朝日新聞出版)」という本がある。周囲の人を感心させ、尊敬を集められるような会話力の身のつけ方を説いている。我々サービス業にとっても、顧客の信頼を得るための会話法ということで参考になると思われるので紹介する。

知的会話とは、「人に尊敬されながら、自己の利益を最大化できる会話力」と定義する。そのための10か条を下記する。

  • ①相手の話を頷きながら最後まで聞く:頷きながら、話の腰を折らないよう最後まで。
  • ②相手の意見を要約、補強してあげる:相手の話を反復、補強することによって、「よく聞き、理解していますよ」とのメッセージとなる。
  • ③知ったかぶりをせず、分からないことは聞く:
  • ④業界用語、専門用語は使わない:言うまでもないこと。
  • ⑤まずは反論ではなく質問を:知的会話は論争ではない。意見交換だ。
  • ⑥知っていることを全部話さない:話を発散させて相手に無駄な時間を消費させない。
  • ⑦数字などを交えて、出来るだけ具体的に話す:よく知っていると感心させる。
  • ⑧「受け売りの話」には自分の意見も付け加える:受け売りをあたかも自分の意見のように言うのはルール違反。
  • ⑨会話にはユーモアを。ただし駄洒落には注意:駄洒落は人の話の腰を折りやすい。
  • ⑩最後は「黙っている」方が賢く見えると知っておく:「当意即妙」もいいが「沈思黙考」も知的な態度。最後に重みのある一言が効く。ともかく聞くことの大切さを肝に銘ずること。

上記10か条は必要条件。十分条件にするには「教養を日頃から身に着けること」。教養がじわじわとしみ出てくる雰囲気は、日頃の努力から養われる。

「営業は、商品ではなく自分を売り込むこと」。そのためのノウハウは限りなく深い。参考にしたい。

「仕事」に満足している人は長生きする?

「幸福の習慣~世界150カ国調査でわかった人生を価値あるものにする5つの要素~」(トム・ラス/ジム・ハーター共著、森川里美訳・ディスカバー・トゥエンティワン出版)が、一読の価値ある新刊書を紹介する「TOPPOINT誌(パーソナルブレインズ社)」で紹介されている。著者は世界的に有名な調査会社ギャラップ社の社員。

どうすれば幸福が手に入るのかーーー。ギャラップ社は、1950年代からこの問題に取り組んできたが、近年は経済学者や心理学者らと共同で、国や文化の枠を超えて共通する幸福の構成要素についての研究に力を入れている。その一環で150カ国にわたるグローバル調査を実施し、「人が活き活きした人生を送るのか、それとも悩み多き人生を送るのか、どちらの道に進むのかを決定づける「5つの要素」を絞り出したそうだ。

①仕事の幸福:人は日々「何かすべきこと」を求めている。それがワクワクするものであれば理想的である。人の人生いろんなことが起こる。離婚、配偶者の死、失業・・・。これらが人生にどのような影響を与えるか13万人を10年間追跡調査した結果、最も幸福に影響を与えるのは「長期にわたる失業状態」だったとの事。配偶者を亡くしても多くの人は数年後には以前の幸福レベルを回復できるが、長い失業経験はそうはいかない。人が長生きできるかどうかは「仕事の幸福」次第であることも明らかになっている。さらには自分の強みを活かせる仕事をしている人は幸福度が高いそうだ。

②人間関係の幸福:人とのつながりが、どれほど自分の人生への影響があるかを過小評価しがちだが、周囲の人との人間関係が与える影響は大きい。ハーバード大学が12000人以上を対象に30年以上追跡調査した結果、家族や友人が幸せを感じていると、自分が幸せを感じる可能性が15%高まるという。年収が1万ドル増えても幸福度は2%しか増えない。人間関係は健康にも影響を与えることが分かった。夫婦関係がいい人と悪い人では、傷の治る期間が倍違うということも実証したそうだ。夫婦関係が悪いと老化も早いらしい。そして人間関係の幸福度を高めるためには、まず親友を持つことを薦めている。

③経済的な幸福:誰かと食事や旅行に行くなど、「物」ではなく「体験」にお金をつかうことは、自分の幸福度に加えて、一緒に過ごした人の幸福度も高める。物を買っても、買った当初の嬉しい気分は時間と共に色あせる。「思い出」は時間がたっても色あせることはない。だから「物」より「思い出」にお金を使うことは理にかなっている。

④身体的な幸福:身体的な幸福度が高い人は、定期的な運動を欠かさず、その結果、1日を気持ちよく過ごしている。また睡眠をしっかりとり、健康的な食べ物を選ぶ工夫も怠りない。

⑤地域社会の幸福:地域の活動に参加することで自分自身の幸福度が向上する。これは言うまでもないので説明は省略する。

相当大がかりな調査であり、自分自身の人生に照らし合わせて考えれば、ヒントになることも多いと思う。長生きはともかく、幸福な人生は誰もが望んでいるのだから・・・。

人生ニ度なし(森信三)

哲学者・教育者として著名な森信三(1896-1992)氏が大阪の天王寺師範学校の講師時代の講義内容をまとめた「修身教授録―現代に蘇る人間学の要諦―」が致知出版社から復刊された。本の帯には「小島直記氏絶賛!(中略)奥深い真理が実に平明に、丁寧に語られていて、おのずと心にしみてくる。よほど愛と謙虚さと使命感と責任感がなければ出来ないことだ。」とある。その中に、「人生ニ度なし」という有名な言葉がある。

「そもそもこの世の中のことというものは、大低のことは多少の例外があるものですが、この『人生二度なし』という真理のみは、古来只一つの例外すらないのです。しかしながら、この明白な事実に対して、諸君たちは、果たしてどの程度に感じているでしょうか。すなわち自分のこの命が、今後五十年くらいたてば、永久に消え去って、再び取り返し得ないという事実に対して、諸君たちは、果たしてどれほどの認識と覚悟とを持っていると言えますか。諸君たちが、この『人生二度なし』という言葉に対して深く驚かないのは、要するに、無意識のうちに自分だけはその例外としているからではないでしょうか。要するにこのことは、諸君たちが自分の生命に対して、真に深く思いを致していない何よりの証拠だと言えましょう。すなわち諸君らが二度とない人生をこの人の世にうけながら、それに対して、深い愛惜尊重の念を持たない点に基因すると思うわけです。」

この言葉が、齢65歳にならんとする私にも、かなり激しく心に響きます。就職して、実際に実業で活躍している人たちを知った時、なぜもっと学生時代に○○を勉強しておかなかったか」と後悔することも度々あったが、もう既に学生時代は過ぎ去り、元には戻らない。現在も、経営や人生に関する偉大な方の言葉に触れる機会が増えたが、もっと早く知っていればもっと意義ある人生を送れたかもしれないと思うが、もうその知識を活かせる時の大半は過ぎ去っている。反省することばかりだが、少しは自分の将来を真剣に考え、行動していればもっと充実した人生になったのではと思う。

最近当ブログにUPした「人の命の摩訶不思議さ(http://jasipa.jp/blog-entry/7116)」にあるように、膨大な数の運命に支えられて生を受けた、その人生をもっと真剣に意義あるものにするために、やはり森信三氏が言う「立志」を若い時から考えるべきだった。

「真に志を立てるということは、このニ度とない人生をいかに生きるかという、生涯の根本方向を洞察する見識、並びにそれを実現する上に生ずる一切の困難に打ち勝つ大決心を打ち立てる覚悟がなくてはならぬのです。(中略)そもそも真の志とは、自分の心の奥底に潜在しつつ、常にその念頭に現れて、自己を導き、自己を激励するものでなければならないのです。」

今からでも遅くない。悔いのない、楽しい人生を送るための人生設計を考えたい。

冲中一郎