「仕事」に満足している人は長生きする?

「幸福の習慣~世界150カ国調査でわかった人生を価値あるものにする5つの要素~」(トム・ラス/ジム・ハーター共著、森川里美訳・ディスカバー・トゥエンティワン出版)が、一読の価値ある新刊書を紹介する「TOPPOINT誌(パーソナルブレインズ社)」で紹介されている。著者は世界的に有名な調査会社ギャラップ社の社員。

どうすれば幸福が手に入るのかーーー。ギャラップ社は、1950年代からこの問題に取り組んできたが、近年は経済学者や心理学者らと共同で、国や文化の枠を超えて共通する幸福の構成要素についての研究に力を入れている。その一環で150カ国にわたるグローバル調査を実施し、「人が活き活きした人生を送るのか、それとも悩み多き人生を送るのか、どちらの道に進むのかを決定づける「5つの要素」を絞り出したそうだ。

①仕事の幸福:人は日々「何かすべきこと」を求めている。それがワクワクするものであれば理想的である。人の人生いろんなことが起こる。離婚、配偶者の死、失業・・・。これらが人生にどのような影響を与えるか13万人を10年間追跡調査した結果、最も幸福に影響を与えるのは「長期にわたる失業状態」だったとの事。配偶者を亡くしても多くの人は数年後には以前の幸福レベルを回復できるが、長い失業経験はそうはいかない。人が長生きできるかどうかは「仕事の幸福」次第であることも明らかになっている。さらには自分の強みを活かせる仕事をしている人は幸福度が高いそうだ。

②人間関係の幸福:人とのつながりが、どれほど自分の人生への影響があるかを過小評価しがちだが、周囲の人との人間関係が与える影響は大きい。ハーバード大学が12000人以上を対象に30年以上追跡調査した結果、家族や友人が幸せを感じていると、自分が幸せを感じる可能性が15%高まるという。年収が1万ドル増えても幸福度は2%しか増えない。人間関係は健康にも影響を与えることが分かった。夫婦関係がいい人と悪い人では、傷の治る期間が倍違うということも実証したそうだ。夫婦関係が悪いと老化も早いらしい。そして人間関係の幸福度を高めるためには、まず親友を持つことを薦めている。

③経済的な幸福:誰かと食事や旅行に行くなど、「物」ではなく「体験」にお金をつかうことは、自分の幸福度に加えて、一緒に過ごした人の幸福度も高める。物を買っても、買った当初の嬉しい気分は時間と共に色あせる。「思い出」は時間がたっても色あせることはない。だから「物」より「思い出」にお金を使うことは理にかなっている。

④身体的な幸福:身体的な幸福度が高い人は、定期的な運動を欠かさず、その結果、1日を気持ちよく過ごしている。また睡眠をしっかりとり、健康的な食べ物を選ぶ工夫も怠りない。

⑤地域社会の幸福:地域の活動に参加することで自分自身の幸福度が向上する。これは言うまでもないので説明は省略する。

相当大がかりな調査であり、自分自身の人生に照らし合わせて考えれば、ヒントになることも多いと思う。長生きはともかく、幸福な人生は誰もが望んでいるのだから・・・。

人生ニ度なし(森信三)

哲学者・教育者として著名な森信三(1896-1992)氏が大阪の天王寺師範学校の講師時代の講義内容をまとめた「修身教授録―現代に蘇る人間学の要諦―」が致知出版社から復刊された。本の帯には「小島直記氏絶賛!(中略)奥深い真理が実に平明に、丁寧に語られていて、おのずと心にしみてくる。よほど愛と謙虚さと使命感と責任感がなければ出来ないことだ。」とある。その中に、「人生ニ度なし」という有名な言葉がある。

「そもそもこの世の中のことというものは、大低のことは多少の例外があるものですが、この『人生二度なし』という真理のみは、古来只一つの例外すらないのです。しかしながら、この明白な事実に対して、諸君たちは、果たしてどの程度に感じているでしょうか。すなわち自分のこの命が、今後五十年くらいたてば、永久に消え去って、再び取り返し得ないという事実に対して、諸君たちは、果たしてどれほどの認識と覚悟とを持っていると言えますか。諸君たちが、この『人生二度なし』という言葉に対して深く驚かないのは、要するに、無意識のうちに自分だけはその例外としているからではないでしょうか。要するにこのことは、諸君たちが自分の生命に対して、真に深く思いを致していない何よりの証拠だと言えましょう。すなわち諸君らが二度とない人生をこの人の世にうけながら、それに対して、深い愛惜尊重の念を持たない点に基因すると思うわけです。」

この言葉が、齢65歳にならんとする私にも、かなり激しく心に響きます。就職して、実際に実業で活躍している人たちを知った時、なぜもっと学生時代に○○を勉強しておかなかったか」と後悔することも度々あったが、もう既に学生時代は過ぎ去り、元には戻らない。現在も、経営や人生に関する偉大な方の言葉に触れる機会が増えたが、もっと早く知っていればもっと意義ある人生を送れたかもしれないと思うが、もうその知識を活かせる時の大半は過ぎ去っている。反省することばかりだが、少しは自分の将来を真剣に考え、行動していればもっと充実した人生になったのではと思う。

最近当ブログにUPした「人の命の摩訶不思議さ(http://jasipa.jp/blog-entry/7116)」にあるように、膨大な数の運命に支えられて生を受けた、その人生をもっと真剣に意義あるものにするために、やはり森信三氏が言う「立志」を若い時から考えるべきだった。

「真に志を立てるということは、このニ度とない人生をいかに生きるかという、生涯の根本方向を洞察する見識、並びにそれを実現する上に生ずる一切の困難に打ち勝つ大決心を打ち立てる覚悟がなくてはならぬのです。(中略)そもそも真の志とは、自分の心の奥底に潜在しつつ、常にその念頭に現れて、自己を導き、自己を激励するものでなければならないのです。」

今からでも遅くない。悔いのない、楽しい人生を送るための人生設計を考えたい。

情報産業新聞社での対談に出席(グローバル人材育成をテーマに)

12月20日に東京タワーにある情報産業新聞社に呼ばれ、行ってきた。何の要件か具体的にわからず行ったのだが、IT業界に人を送り出す立場の人と、受ける側の中小ITベンダーとの対談で、テーマは「グローバル人材の育成」。最初からテーマが分かっていたら、もっと適材がいると断ったのだが、行ってから分かったのでは断るわけにはいかず、1時間30分の対談で好きなことを言ってきた。お相手は、日本プログラミングスクールの佐々木統括責任者と、船橋情報ビジネス専門学校の鳥居校長。ベンダー側として中小ITベンダーを代表してJASIPA特別顧問の私。内容は、近々情報産業新聞に掲載される予定なので、割愛する。

以前紹介したOECD(経済開発協力機構)が実施中の「国際成人力調査」(http://jasipa.jp/blog-entry/6870)に絡んで、日経新聞が「問われる成人力~国際競争を勝ち抜く~」と題したシンポジウムを実施(12月2日)し、その内容が24日の朝刊に紹介されていた。小説家浅田次郎氏、近藤文化庁長官、雑賀三井物産代表取締役、三塩圭子元テレ東アナの対談記事です。日本人の特性(けんかしない、自己主張しない、突出しない)を自覚したうえでいかに付き合うか考えるべきと浅田氏は言う。学生の向学心を如何に喚起するか、コミュニケーション力に加えて、ディベート力を如何に育成するか、そして人間としての総合的な成熟度(=成人力)、すなわち「この人は人物だな」と言われる人に育てるか、我々世代も真剣に考えるべきと説く。

外資系トップ(マイクロソフト)を経験した成毛真氏が「日本人の9割は英語はいらない」(祥伝社)という本を出した。英語だけでは、グローバル人材として諸外国の人と対峙していくのは難しいというのは定説になってきている(と思う)。日本人には外国人コンプレックスもあると思う。無理やり隣に外国人を座らせ、一緒に仕事をさせるような施策も必要なのかも知れない。ともかく、グローバル化の進展は必然のものとして、何か動かねばならない。

冲中一郎