「できません」と云うな

IT業界の改革が叫ばれ、顧客隷属型(お客様のいうまま)からパートナー型(お客様と一緒に考える)への脱皮が言われている。この点を少し考察してみる。

1月3日「私の新春初夢(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/1/3)」でJASIPAの夢を下記のように語りました。

  • プライムで請けたお客様をトコトン大事にします。(信頼関係を築きます)
  • 日頃の対話の中から、お客様の課題・期待を聞き出します。自社で解決できる問題だけでなく、JASIPA会員企業全体で解決できる問題も含めて。
  • JASIPA会員全体の知恵で、提案をします。
  • 各社は自社の強みを打ち出し、それを徹底的に磨きます。
  • お客さまは、JASIPA株式会社の総合力での対応に満足します。
  • 総合力として不足の技術を持つベンダーを誘い込みながら、より大きなアライアンス集団としてJASIPAを発展させていきます。

立石電機製作所(現オムロン)創業者立石一真氏の経営哲学を紹介する『「できません」と云うな』(湯谷昇羊著、ダイヤモンド社)によれば、お客様から何を要求されても「できませんというな」を徹底したそうだ。そして「為せば成る、難しい技術開発でも、執念と努力、技術があれば可能」とお客様の要求を、社員のチャレンジ精神に変え、見事にお客様の信頼を得ながら大きくなっていった。

お客様とパートナー関係を強化するためには、お客様の課題を幅広くとらえ、お客様に提案できる体制が必要となる。そのためには、自分(会社)が扱っているソリューションだけに注力していたのでは、パートナー関係の構築はできない。いろんな部署、企業との連携を前提に「できません」と言わず、出来る案を考えねばならない。しかし、以前‘大企業病’という言葉がはやった時があったが、今でも部門間の連携が円滑に行く大企業は少ないのではないだろうか?いろいろ施策を講じていると思うが、業績主義が台頭してきてから、より困難になっているように思う。このことを考えると、会社ごとのアライアンスの方が連携は柔軟でやりやすいのではと考える。すなわち、JASIPA会員企業のような規模で、それぞれ得意技を磨き、それらを融通無碍に組み合わせてお客様の問題解決に資することが出来ること、これがJASIPAの目指すべき道と思える。

日本人は内向き志向が強いと言われるが、お客様視点で考えられる人材に育て上げる必要がある。自分の知識(ソリューション)の範囲でしかお客様と話が出来ないのでは、物足りない。逃げずに、幅広く問題を把握できるように育てることが欠かせない。そうして捉えた問題を、JASIPA株式会社内で会員企業に展開し、提案につなげることが出来る、それが「私の新春初夢」の思いです。正夢にしたい!

驚くべき事実!9割が失敗プロジェクト???

「日経SYSTEMS 2012年1月号」に「さらば失敗プロジェクト」と題した特集をしている。その一部情報がITproに掲載されていた(2011.12.21)。その記事に驚くべき事実が載っていた。

現在または直近の開発プロジェクトの94.5%に深刻な問題が発生し、そのうち89.9%が同じ失敗を繰り返している。~昨年10月から11月にかけてITpro上で実施した調査結果で、システム開発に携わる当事者が、自分達が参加したごく最近のプロジェクトの実情を答えてくれた貴重な現場の声~とある。発生した問題としては、スケジュール遅延が45%,コスト超過21.7%、稼働後のシステム障害14.5%、関係者間の信頼関係の悪化10.1%。

失敗の原因としては、「人間力の欠如(合意形成が上手くいかない、対立関係を解消できない)」が44.9%、「マネージメント力の欠如〔計画が甘い、指示・伝達がまずい〕」43.5%と続き、「技術力の欠如」は11.6%と低かった。

現場実感として、ここまでひどいとは私は思っていない。これまでアメリカ、日本などにおけるプロジェクト成功率は20~30%というデータが何度か発表されていた記憶がある。それでも低いが、今回の調査結果は、「開発に加わった当事者の意見」というのが味噌かも知れない。すなわち、開発当事者の「プロジェクト終了時の満足度」を表しているものと考えた方が、問題は浮き彫りになるかも知れない。「いいシステムが出来た」「お客さまにも喜ばれた」「自分はプロジェクトを通じて成長できた」「部下も育った」・・・のような達成感が、今のお客様との関係(従属関係)や、外注パートナーとの関係(多重下請け)、プロジェクト管理方法で味わえるのかどうかが本質的な問題として浮かび上がるのではなかろうか。

先日、当ブログでも「世の中に亡くならないもの(http://jasipa.jp/blog-entry/7161)」とのタイトルで、失敗プロジェクトの話をした。今、ITベンダーにとって、お客様と一体となってお客様のためになるサービスを提供し、お客さまから信頼されるIT業界に変貌することが叫ばれている。そのために「受託開発型からサービス提供型へ」、「労働集約型から知識集約型へ」、「多重下請け型から水平分業型へ」、「顧客従属型からパートナー型へ」、「国内競争から国際競争へ」の転換を積極的に図らねば、この実態からの脱却は出来ないのではなかろうか。失敗プロジェクトを減らす(同じ失敗は根絶)のはもちろんのこと、お客さまから、真に価値ある業界、満足を提供する業界と認められなければ先はないとの危機感を持って行動することが、今まで以上に求められている。

今求められる日本のリーダー!

昨夜のNHKスペシャル(夜7.30~10.15)にくぎ付けになった。くるくる変わる首相や、企業不祥事で、世界から「Leaderless JAPAN」と揶揄される日本。そして、グローバル競争に対峙せざるを得ない状況の中で、日本のリーダーを如何に育てるか?難しい問題ではあるが、解決せねばアジアから取り残され、ひいては世界からも取り残されかねない喫緊の課題との認識のもと、出席者の間で議論が沸騰した。

スティーブ・ジョブズやサムソンのイ・ゴンヒ会長のような強烈なリーダーが必要かとの議論では、「バカなリーダーの場合悲劇を招く」との意見もあり、ボトムの意見・情報を収集しつつ方向性を打ち出し、実行に向けてリーダーシップを発揮するのがトップの役割との意見が大勢を占めた。

教育面では「自分の言葉で伝える力」を育成し「知脳・ミッション・パッション」のある人材育成が必要として、トルコやカナダの学校の事例紹介があった。カナダでは、留学生が半数を占め、異文化理解、論理思考、プレゼン能力の育成がなされていると。様々な人、環境にもまれるために、国費留学の活性化の提案もあった。「価値観の違いを認める教育」として、フィンランドでは、一方的なTeachingより議論主体で、反論大歓迎の教育が実施され、人によって答えは一様ではない世界を覚えこませる教育も紹介された。12年続いている女性のハロネン大統領は、エリート意識もカリスマ性もなく「ムーミンママ」と国民から慕われているそうだが、このような教育が育てたリーダーかもしれない。まさに価値観の違いを認められる人材がグローバル人材と言える。

今回の東日本大震災で、若い人たちが、いろんなところでリーダーシップを発揮している事例の紹介もされた。35歳で内閣府を辞し陸前高田の副市長に転身された方、酒造工場を津波で流されたが雇用を守り続け社員に元気を与えている38歳の社長、復興に立ち上がる人に、ヒト・モノ・カネを仲介することに命を懸ける人など・・・。さらには、国土交通省で、「国民のために働けない仕組み」を内部から改革せんとする若者(明日から省に帰ったら袋叩きにあうのではと参加者から心配されていた)など、逞しい若者たちが出てきている。京大の滝本教授は「中央集権は変化に弱い。群雄割拠、地域リーダーに若手を抜擢することがリーダー育成のためにも必要」との提案があった。

福島のチェーン店経営者の「若手の意欲ある人たちを育てるために、高齢者や国がいかに支援できるかが、日本のリーダー育成のカギを握る」との発言に、参加者から拍手が起きた。

日本のためにも、みんなで若いリーダー育成に注力する時との感を強くした。

冲中一郎