大学の入試改革、教育改革議論に期待!

東京大学の「5年後に秋入学に全面移行」の提言を契機に、国際人育成のための教育議論が活発化してきた。今朝の朝日新聞の「オピニオン(17面)」では、「時期変えるだけで国際人は育たぬ、入試改革の方が先」と題した京都大学松本紘総長のインタビュー記事が掲載されている。松本総長は、昨年当ブログでも紹介しました(http://jasipa.jp/blog-entry/6857)が、「綾の会」を毎年東京で開催され(昨年が20回目)、人と人の絆を広めるきっかけを作られている(昨年は水谷八重子さんも来られました)。学生時代から私も非常にお世話になり、今でも気さくにお付き合いしていただける尊敬する先輩です。

日本経済が世界の中で存在感を低下させている主な原因は、いわゆるグローバル人材が育っていないことにある。グローバル人材とは、英語でコミュニケーションできるだけではなく、日本の歴史や文化を国際舞台で伝えられるような幅ひろい教養を身につけた人材だ。真に創造的な仕事が出来るようになるには、基礎的な知識の集積が不可欠。現在の入試のような限られた少数科目の点数競争ではダメで、複雑な問題にぶつかっても解決策をみつけだせるような柔軟で強靭な思考力こそ必要だ。自分に自信を持って、何かにチャレンジした経験を持ち、意欲のある人が必要だ。

そのために高校と連携して、受験科目に力を入れるだけではなく、実験や発明、芸術、スポーツ、ボランティア活動なども含め、多様な活動をさせているかどうかも評価する。大学と高校で「こんな人材を育てたい」という目標を共有化し、その活動を評価し、入試にも反映する。連携高校の選定には多くの議論を呼ぶだろうが、これ位の改革をやらないと、点数偏重の教育から脱皮は出きないし、チャレンジ精神に富んだ創造性の高い生徒は育たないとかなり意欲的だ。

さらには、5年間全寮制の大学院の創設を2013年度に実施するそうだ。20人程度に絞り、次代のリーダー育成のために、研究だけではなく幅ひろい教養も身に着け、海外留学経験を積ませ、国内企業や官庁で自ら立案したプロジェクト経験も積ませると言う。ほぼすべての授業は英語で、恐らく海外留学生も今以上に受け入れるものと思う。

現在、日本の人口当たりの研究者数やGDPあたりの科学技術研究費は世界1,2位を争っているが、人材の質の低下に歯止めがかからない。今やまったなしの改革が求められている。今回の記事で京大総長の覚悟を感じた。松本総長を知る人は、この記事を読んで本気度に大きな期待を持たれたと思う。東大の「秋入学」を契機とした主要12大学の協議会が発足し、その中で入試改革や、教養教育の在り方など、大学教育が抱える様々な問題を議論したいと言われている。早期改革実行を期待したい。

ギャングスターズ水野監督勇退!

自らの一生を京都大学アメリカンフットボールに賭けた男、水野監督が昨年11月に監督を勇退されたとの記事が日経ビジネス(2012.2.13号)に掲載されている。足掛け36年間、ギャングスターズの監督を務められたそうだ。水野監督の人生の半分だ。ギャングスターズが名を馳せたのは、1984年初めて甲子園ボールで大学日本一となり、そしてライスボウルでいきなり社会人を破り実質日本一となった時。1997年まで6回学生日本一に輝き、そのうち4回は社会人を破って日本一となった(これは日大フェニックスに並ぶ記録)。この頃がピークで、その後は立命館、関西学院などに押され、残念ながら表に出なくなっていた。私が1995年東京に転勤になってすぐ、当時のアメフト部部長の西川教授(その後、大阪工業大学の学長になられ、東京に来られた時に㈱NSDの大工大OBと対談して頂いた)から券を頂き、家族で東京ドームに応援に行ったことがある。その時は残念ながら社会人(リクルートシーガルズ)に負けたが、それがライスボウルでの最後の試合となったようだ。

水野監督は、私学と違って大学から何の補助もなく(グラウンド提供だけ)、部員と一緒に学習塾を経営して資金としながら部の運営をされていたと聞く(お酒も飲まれない)。関西学院などと違って、部員は初めてフットボールに触ったという素人ばかり。なぜ、そんな集団が日本一になれるのか、いろんな意味で水野監督の記事がインターネットでも掲載されている。

神鋼ラグビー部の平尾監督は。試合の戦法やチームの有り方などすべて選手の自主性に任せることによって、7連覇を達成したという。しかし、当時の選手は名だたるラグビー名門校の名選手であり、自らの力を知り、己のプレーを評価できる高度なレベルの選手ばかりであった。一方、京大の選手は、全く素人のため、自主性に任せることは出来ない。「やるべきこと」「やってはいけないこと」を明確にし、その基本を徹底的に、強制的にやらせる。実戦練習を求めがちだが、実戦は相対的なもので、相手が強ければ負けてしまう。だから基本練習を重視する。さらには「チームの求めるレベル」も明確に示し、参加すること自体は個人の意思に任せる。そして、己の力、己の限界を知り、自分で自分を問い質す事が出来る人間を目指して、己を鍛えていく。そうすれば、「やれないことはしない」「やれることは徹底してやる」という方策が身体で覚えられる。

このような経験を踏まえて、今の教育にも疑問を投げかけられている。「子どもの目線で、子どもを尊重する教育」に対して、子どもだった経験のある大人たちの厳しい指導も必要と主張される。強制的に世の中の厳しさを、大人たちの経験則に則って教えるべきとも言う。

しかし、素人ながら資質のある部員を如何に集めるかがポイントとなる。そのため、高校を回り、人を掘り出す努力も欠かせない。強い時は結構素質のある部員を集めることが出来たが最近は少なくなってきたそうだ。しかし、今年のギャングスターズは優勝できる戦力になったので、勇退されたそうだ。今年の活躍に是非期待したい。

あなたが選ばれる人になるには?

TOPPOINT2011.12号に一読の価値ある新刊書として、「選ばれる人になる34の習慣(門田由貴子著、ダイヤモンド社)」の要旨が掲載された。参考になると思うので、その一部を紹介する。

あなたは、チャンスに恵まれて、仕事にヤリガイや喜びを感じて毎日をすごせているだろうか?もしも今、そうでないなら、あなたに何かが不足していて、「選ばれていない」のかもしれない。「選ばれる人」になるには、備えておくべき能力があり、下記のような事を習慣化することで身につけられる。門田氏は「人生は、毎日がオーディション」と言う。すなわち、いろんな局面であなたに白羽の矢が立つかどうかが、あなたの人生を決める。

  • 「聞き上手になること。人の話を聞く時は、豊かな表情で、リアクションも交えながら聞くようにする。(あなたが話し手の時、相手が「聞き上手」であれば、嬉しく相手に好感を抱くだろう)
  • モチベーションを高めるには、自分の意志と理性で静かに上げる。急にテンションをあげても、すぐに冷める。(目標や行動について、それをすることのメリット・デメリット、しないことのメリット・デメリット、目標に挙げた理由や動機などを理性的に考えること)
  • テーマを決めて集中的に勉強し、職場№1のスキルを手に入れる。(社内で有名になる)
  • 自分より優れた人、レベルの高い人に積極的に会って、優れた点を学ぶと同時に、わが身を振り返る。(相手との信頼関係構築が鍵か)
  • アイディア増幅機構を備えている。思いついた時に、メモり、後で反復する。今は携帯電話などのいろんなツールがある。そのツールを最大限利用する。
  • 「専門バカ」ではなく、「プロフェッショナル」になる。「専門バカ」とは、何かあると「NO」という人たちである。プロフェッショナルは「誰もが不可能と思うことを可能にする人」を言う。専門性を磨き、チャレンジ精神を忘れない事。
  • 自分のココロと向き合い、自己理解を深める。自分に自信のない人はとかく仕事を一人で抱え込んで誰にも相談せずガムシャラに頑張る傾向がある。自分に自信がないため他人への相談を恥と思うから。自分を知り、自分の限界を知れば、自然と他人に教えを請うことが出来、人間関係も構築できる。
  • 情報に対する感受性、情報を読み説く洞察力を磨く。そのためには、新聞・本などを読んで、情報を自分のココロの中で味わい、自由な連想やイメージで増幅しながら、自分と関連付けて考える習慣を持つ。

門田氏は、組織改革コンサルタントとして、大手企業を中心に毎年2000人以上のビジネスリーダーの問題解決とスキルアップを指導されている方だ。上記をじっくり読み説けば、その神髄が見えてくるものと思う。

冲中一郎