幸せの種は歴史にある!?

先般「歴女が語る日本人の生き方」をブログで紹介した(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/2/13)。その白駒さんから当ブログに対してご丁寧なコメントを頂き、驚くとともに、また一つブログを通じて素晴らしいご縁ができ、ほんとに嬉しく思いました。その白駒妃登美さんが昨年出版された「人生に悩んだら日本史に聞こう(ひすいこたろうさんとの共著、祥伝社)」を読んだ。白駒さんは、偶然ある居酒屋で出会った「名言セラピー」シリーズ著者天才コピラーター「ひすいこたろう」氏のお蔭で、歴女として歩む道が拓けたそうです。

日本人のすばらしいDNAが歴史の中から読み取れる、そしてそんなすばらしい歴史上の人物が常に友として自分の横にいてくれる。ひすいさんとの出会いを演出してくれたのも吉田松陰です。ひすいさんが、友人の講演会の打ち上げで来ていた居酒屋で吉田松陰の話を持ち出し、「鎖国中の日本で、黒船襲来。黒船に驚き、こんな船を作れるアメリカで学びたい欲求にかられ、見つかれば死刑確実な中で、真夜中に黒船に忍び込みます。アメリカ人は吉田松陰などの知識欲に驚き、日本の将来の可能性を感じたそうだが、結局つかまり獄に送られます。」と。そして獄への連行中の泉岳寺前で詠んだ歌『かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂』を読み始めたとき、『かくすれば』と呼めば、突然奥から『かくなるものと』との声が、『知りながら』と続けると『やむにやまれぬ』、そして最後に『大和魂』。その相手が白駒さんだったのです。歴女がその運命を変える瞬間だった!ほんとに不思議な出会いが人生を変えるものですね。

すべての登場人物が興味深く描かれ、個々人の持つ日本人としてのDNAが分かりやすく解説されている。その中で、幕末に活躍したジョン万次郎も登場している。坂本竜馬や勝海舟、岩崎弥太郎など、そうそうたる人物が、アメリカ滞在経験のある(と言っても沖合で漂流中にアメリカの捕鯨船に助けられ、船長の家で育てられた)ジョン万次郎の影響を受けているのです。今話題の坂本竜馬の「船中八策」、福沢諭吉の「学問のすすめ」(アメリカ独立宣言を参考にした)や、株式会社の発想に基づく「亀山社中」創設、岩崎弥太郎の三菱創設、薩摩の造船技術などなど、ジョン万次郎の功績は限りなく大きなものだったのです。東京オリンピックの実現のため、中南米の国々を味方につけるために自費で奮闘した日系2世のフレッド和田氏。その御礼にメキシコオリンピック実現の際にも大いに恩を返されたとか。日経一世のための老人ホーム建設など、日本や日本人に対する功績は大きい。

いまだに日本に対する恩義(明治23年串本沖で座礁したトルコ軍艦乗組員69名救助)を忘れないトルコ、1919年ロシアとの戦争で取り残されたシベリアの戦争孤児700数十名を救済したポーランドの日本に対する思いも今でも変わらない。

「白駒さんのような日本史の先生がいたら、日本史がもっと好きになっていたのに」といわれるそうですが、それ以上に日本人の誇りを取り戻すために、小さい頃からこのような教材を教育に取り入れるべきと強く思います。少なくとも、私はこんな教育は受けていません。「日本を元気に!」にするためには、なんとしても実現したいですね。

「利他の心」を経営指針として

主要格付け会社から国内銀行トップの評価を得ている「静岡銀行」。「利他の心」は、頭取を平成17年(当時52歳)から続けておられる中西勝則氏の信念でもある。製造業にしろ、サービス業にせよ、事業を営む者に共通する精神であると思うが、銀行はとかく「雨が降ると傘を取り上げる」と揶揄されがちな業界と言われていた。しかし、経済成長と共に企業の成長をサポートしておればいい時代はとっくに終わり、低成長時代を迎え産業構造が変化する中、淘汰されていく企業への対応が不可欠となってきた。そして雇用を確保し、地域の発展・繁栄に寄与することが一大使命になってきたとの認識である。就任当時「金融とは他を利することによってこそ成り立つ仕事である」と言っても腑に落ちず、怪訝な顔をする行員が多数だったと言う。しかし、粘り強く言い続けることによって、利他の心に基づく行動があちこちで表れているとのこと。

他にも自らの気持ちを律する際には「足るを知る」、行動を律する際には稲盛氏の「動機善なりや、私心なかりしか」なども心の拠り所にされている。倉田百三や中村天風などの読書体験から得たものを心の支えや経営指針にしておられる。しかし、何事も消極的な姿勢では目の前の困難に立ち向かう事はできない。積極的に臨めば打つ手は無限に存在するのだと中西氏は言う。中西氏がそのことを指し示してくれた詩として実業家の故滝口長太郎氏の残された詩を紹介されている。

すばらしい名画よりも/とてもすてきな宝石よりも/もっともっと大切なものを/私は持っている/どんな時でも/どんな苦しい場合でも/愚痴は言わない/参ったと泣き言を言わない/何か方法はないだろうか/何か方法はあるはずだ/周囲を見回してみよう/いろんな角度から眺めてみよう/人の知恵も借りてみよう/必ず何とかなるものである/なぜなら打つ手は常に/無限であるからだ

「サンクスカード」が普及しているそうだ。同僚・友人・家族からもそうだが、もっとも嬉しいのはお客様から頂く「ありがとう」の言葉だと思う。他人に感謝の心を、そして他人から感謝の心を!これが普遍的な幸せの原理、そして事業成功の原理でもある。(「致知2012.2号より」

付加価値UPが生きる道!

「致知2012.2号」に町田市の「でんかのヤマグチ」の社長が投稿されている。創業30数年を迎えた平成8年、地元に大型量販店が進出するとの話が入ってきた。あっという間に近隣に6店舗も出来、売上が年30%も近くも落ちることが予測され、3~4年で借金は2億円以上に膨れ上がったそうだ。生きるか死ぬかの瀬戸際で、社長が決断したのは、まさに逆転の発想、10年間で粗利率を10%UPし、35%にすることだった。当時大型量販店は平均15%、地元の電気屋が25%程度だったとか。「そんなことできる筈がない」との周囲の声が多かったが社長は「それ以外に生きる道はない」と決断した。

商品を「安売り」ではなく、「高売り」すること。そのためには、商圏をこれまでの3分の一まで絞り込み(行き届いたサービスの限界)、50代からの富裕高齢者層に絞り込んだ。お客を訪問する回数を増やし、家電の使い方などの指導はもちろんだが、本業とは無関係な買い物のお手伝いや、留守中の植木の水やり、郵便物や新聞を数日預かったり、無償で行ったそうだ。

会社のモットーは「お客様に呼ばれたらすぐに飛んでいく」「お客様のかゆいところに手が届くサービス」「たった1個の電球の取り換えでも飛んでいく」。これを1万200世帯のお客に、50名で頑張っているそうだ。良い評判が広がり、目標の粗利率35%は8年で達成できたとか。2億円以上の借金も3年前に完済されたそうだ。

社長曰く「大型量販店の進出がなければ、いまだ安売り競争をやって悲惨な目にあっていたかも知れない。人間はトコトン追い詰められ、地べたを這いずり回るような思いで必死になって取り組むことで道が開ける」と。

もう一つ事例を紹介する。2月19日日経の「日曜に考える」の記事から。中国で最も安定的な成長軌道に乗った小売チェーンはどこか?イオンでも、セブン&アイでもなく滋賀県彦根市の平和堂だ。1990年代初めに滋賀県と友好関係にあった湖南省から同省長沙市への出店要請があった。社内では猛反対を受けたが当時の会長は「内陸部もいずれ成長する」として決断。しかも、スーパーしか経験がないのに、「日本企業なのでブランド品など品質の高い商品を求めるニーズが高かった」ため、ローレックス、シャネルなどを扱う百貨店形式での出店を決断。既存3店に加え、中国各地から出店要請が来ていると言う。これも将来のマーケットを読んだ高付加価値商売への転換の事例であろう。

「安売り競争」に甘んじていると、ますます夢はなくなる(どん底に沈み込む)。マーケットを読み、お客との対話を通して、お客の期待する付加価値で他社をしのぐ優位性を発揮するにはどうすればいいか、真剣に考えたい。

冲中一郎