第7回JASIPA経営者サロン実施(10月25日)

今回は、第一部にJASIPA関西支部長杉本浩氏(スキルインフォメーション㈱社長)に登場いただき、いろんな事業に積極的に挑戦され、自社ビルまで持たれた成功体験をお話しいただいた。いわゆる派遣事業を主体とする「ソフトハウス」事業はますます厳しくなってきているが、その時々の環境を考えチャレンジされてきた杉本氏から頂いたテーマは「ポスト・ソフトハウス経営」だった。

組み込みソフトをコア技術として、若干24歳で元同僚と3人で起業されたのが1986年。その後、事業の成長と安定を考慮し、事業の柱を複数作ることを目指し、医療関連に進出。そのきっかけになったのが、IPAの公募プロジェクトに採択され開発した医療パッケージ。しかし、社としての知見不足で苦労し、医療関連ソフトの得意な企業のM&Aや、医療業界と接点の多い医療品卸、販売企業との業務提携を行い、医療関係を一つの柱とすることに成功。フォント事業に関しても、今ではドバイからアラビア語のフォント依頼が来るまでに成長。事業のポートフォリオとして3本柱が出来、事業の安定性が格段に増したと杉本氏は言う。途中紆余曲折も経験され、ツールベンダー華やかなりし時、手を出したが、ダメと見るや素早く撤退。

「ポスト・ソフトハウス経営」として、新たな事業に進出するにしても、やはりお客様から認められている技術をコアにしつつ、官学も含めた人脈を大切にすることによって、新たな事業を発掘する。そして新たな事業を進めるにも、自社でのノウハウがない場合は、人脈を通じてノウハウを補強するための施策(M&A,業務提携など)を打つ。医療関係の学会に、大学の先生の論文作成をお手伝いし、共著として発表し、そのブランドで北海道大学病院から声がかかり、お客様となって頂いたとの話もされた。フォント事業でもJETROとの人脈でドバイにつながったそうだ。

第二部は、「何を持って競合他社との差別化を図るか」とのテーマで、討議資料を用意したが、第一部の杉本氏から、事業の要諦を引き出すことが、当テーマの神髄でもあり、杉本氏との議論にかなりの時間を割くことになった。ガートナーが「事業の成長を目指すプロセスは①既存事業の拡大(既存商品&既存顧客)→②機会の拡大(既存商品&新規顧客)→新規事業の開発(新規商品)というのが、成長と安定のバランスのとれたプロセスだ」と言う。自らにノウハウも技術もない分野に行くのは、挑戦というより「無謀」と言うのだろう。杉本氏も紆余曲折を経験されているが、その経験を活かした新たな事業の創出方法は「ポスト・ソフトハウス」を検討する上で大いに参考になる話と思う。

今回は杉本氏含めて参加者は9名だった。次回は11月21日(水)開催予定です。

リーダーの自己観照

いつも紹介していますPHP Business Review「松下幸之助塾2021.11.12号」の特集テーマが「リーダーの自己観照」だ。冒頭記事に“松下幸之助が心がけた素直な心で自己観照”のテーマ説明記事がある。

松下幸之助は、失敗する経営者の特徴として、自分の適性や力を正しく認識していないことを挙げている。自己観照が必要なのだ。松下幸之助の言う自己観照とは、自分の心をいったん外に出し、その出した心で自分を見直してみることである。つまり、あたかも他人に接するような態度で、客観的に自分を観察することだ。そんなことができるのか。経営者あるいはリーダーなら、たとえ難しくても、しなければならないことだと言う。

本文では、松下氏が昭和39年に、それまで相当つぎ込み、実業化近しと思われていたコンピューター事業からの撤退を決断した時の話が載っている。当時松下含め7社が、コンピューター事業をやろうとしていたが、多すぎて共倒れになるとの判断だったが、当時は好ましくない批判に晒された。その後コンピューター事業は伸び悩んで再編が起こり、松下幸之助の判断は賢明だったとの評価を得たと言う。撤退判断と言う思い決断の時、まさに自分自身を客観的に見るため、意地になることなく素直な心で自己観照に努め、自分の判断の正しさを確信していたそうだ。

「自分の力とか適性が分からなければ、他社や人の言う事、することが気になる。他社がいいところにビルを借りたり、たくさんの人を採用して成長したりしたら、それをまねて大失敗することが往々にして起こる。」と松下幸之助は言う。「自分の事は自分は自分が一番知っている」とよく言うが、自分の考えや行いがはたして独善ではなく、道理にかなっているのかどうか、社会的に正しいかどうか、人情の機微に適したものかどうかを評価する段になると別。人間というのは、どうしても自分中心に、自己本位に物事を考えがちで、他人から見たらずいぶんおかしいことでも一生懸命に考え、それを正しいと信じている場合が多いのではなかろうかと記事編集者は指摘する。しかし、自己観照を自ら実施するのも限界がある。「みずから自己観照するということは、よほどの達人、名人ともならなければできない。けれども、自分というものはどんな格好をしているか、どんな長所や短所があるかということは、自分の友人なり、自分の先輩なりに観照してもらったならば、私は良くわかると思うんです」と松下幸之助氏はある講演会で言っている。

本田宗一郎氏には藤澤武夫氏という相棒、井深大氏には盛田昭夫氏という相棒がいたというのは、理想的な経営スタイルと思える。稲盛氏は、第二電電を起こす決断をしたとき、「動機善なりや、私心なかりしか」と自問自答したと聞く。経営者、リーダーは常に謙虚に自分を振り返り、素直に耳を貸す姿勢が、経営の安定化に必須と言う事だろう。

今回の号には、小林陽太郎氏や、齋藤孝氏などの記事もある。追々紹介したい。

プロを目指そう!

今日(10.23)の日経ビジネスオンラインメールに『「プロじゃなかった・・・」リストラで運転手になったミドルの重い一言(http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20121019/238300/?mlp)』(by河合薫)というのがあった。中国へ進出した企業が現地の会社を管理するために、中国語がしゃべれる日本人社員を中国に派遣した。生産管理など仕事を教える仕事だったが、中国人社員は覚えも良く、日本語も含めてすぐ身に付けた。そのため、中国語がしゃべれる意味合いがなくなり日本に呼び戻されたが、席が無くリストラの運命に会い、生活のために運転手になった人の話。河合氏がそのタクシーに乗って聞いた話で、最後に運転手がポロリと「営業も、生産管理もプロじゃなかったので・・・」と言ったのが印象に残ったそうだ。河合氏曰く「グローバル化は、一部の人と企業にしか利益をもたらさない。グローバル化が進めば、中流層の仕事は低コストで雇えるアジアなどの外国人に奪われる。グローバリゼーションの名の下に始まった、労働のダンピング劇。求め続けられる人だけが生き残り、そうでない人は淘汰される。強い者が残り、弱い者が食い尽くされる。」と。

アジアへの進出の悲劇とでも言うのだろうか?日本国内のみの事業も厳しく、アジアに進出すれば、コスト競争で厳しい現実がある。となると、先進国での経験を活かして、プロフェッショナル性を磨くしかない。河合氏は「天才!成功する人々の法則(byマルコム・グッドウェル)」の「1万時間ものトレーニングの積み重ねが天才を生む(Ten Thousand hours is the magic numbers of greatness)」の言葉を紹介し、さらにパフォーマンス向上のための計画的努力を薦め、「1万時間に及ぶ計画的訓練(deliberate practice)」をすれば、誰もが秀でた能力を身に付けることが出来るとしたフロリダ州立大学のダーク・エリクソン教授の説も掲載している。1万時間というと10年近い時間軸となる。

「自分がどうありたい」との何らかの目標を持って、意志力(grit)で継続的に努力することによって、なくてはならない人材になる。グローバル化が必然の将来に向けて、特に若い人たちは、日本人の資質を活かしたプロになる道を今から目指してほしい。

冲中一郎