お客様よりお客様の家づくりに熱心であろう

標記を基本理念として掲げ発展を続ける工務店が浜松にある。一条工務店だ。今朝の日経6面の“活かす企業人”に一条工務店宮地剛社長が「顧客のために考え抜く」熱い人材に”と題して求める人材像について述べられている。以前、“「おもてなし経営」を実践する都田建設(http://jasipa.jp/blog-entry/7041)”で紹介した都田建設も浜松だが、気風として浜松には「お客様のために」との気風があるのだろうか?

1978年創業の木造注文住宅メーカーで、2011年度の販売戸数が8596個で木造住宅メーカーでは全国2位の企業。グループ売上も2400億円以上。宮路社長は「株式公開もせず、宣伝活動にも注力してこなかったため、一般の方にはなじみが薄いかもしれない」と言われるが、その中でこの業績を上げられるのは、それなりの理由があるのだろう。

「お客様よりお客様の家づくりに熱心であろう」との理念のもと、「住まいの性能の差は、暮らしの差」と考え、家の性能を追い求め続けている。まずは、実現困難と言われた戸建て住宅の免震化に、普及可能な性能とコストで1999年に成功し、この「免震住宅」の受注実績は、主要住宅メーカーにおけるシェア8割強と圧倒的な地位を確保している。さらには、省エネ住宅としての断熱性能は国の基準値の約4倍。太陽光発電も、初期支出をゼロにし、搭載費用を入居後の発電による売電益で賄う「夢発電システム」を用意し、現在搭載率は88%強と業界トップ。この夢発電システムはさらに進化していると言う。

このように発展をし続けるための求める人材は、「自らのミッションに対し、しぶとくとことんやり抜く“熱い人”」と言う。「たとえお客様が“それでいい“とおっしゃっても、疑問が少しでもあればよしとせず、お客様の為に、納得でき、満足できるまで”考え抜く“人材とも言える」と。さらに続けて「当社では”とりあえず頑張る“というのは目標になりません。目標と期日はあくまで具体的かつ明確に定め、その実現に向け自ら行動する。そのための支援は決して惜しみません」と言う。そのため、入社歴などに応じた画一的な教育ではなく、個人ごとの習熟度に応じた「テーラーメイド型研修制度」を用意。ITを駆使して課題解決の進捗を個別にチェックするそうだ。自分で受けたいプログラムを選び、順番にこなす「スタンプラリー型」の制度もあるとか。

ジョンソン・エンド・ジョンソンなど外資系の経営に携わってこられた、新将命(あたらしまさみ)氏は「人の採用、不採用の決定時、心がけているのは、価値観が共有できそうな人か、もう一つは目に光があるかどうかが決め手」と言う。「目に光」とは、目を見れば熱き人材かどうか、問題意識を持ち、意欲がある人かどうかという事。「目は口ほどにものを言い」どころか「目は口よりもものを言い」だと言っています。

「お客様視点」で物事を考え、「お客様のため」を思って情熱を燃やし、妥協しない人材を求めるのは、IT業界でも同じである。

顧客の期待値を下げるIT営業

昨年5月に諏訪良武氏の「サービスサイエンス」を紹介し、お客様の事前期待を把握し、そして期待を上回る実績を出すことによって、お客様を繋ぎとめることが出来ると言った(サービスに関する“事前期待”についてhttp://jasipa.jp/blog-entry/6387)。その中で、「お客様の期待はやればやるほどキリがなく高まっていく。サービス会社は常にサービスレベルを上げていかねばならないが、それでは会社はつぶれる」、だから「お客様の事前期待のマネージメントが必要」と紹介した。

10月16日のITproで次の表題の記事に目が止まった。『顧客の期待値を下げる“IT営業”、「満足の科学」のススメ(by 日経コンピュータ玄忠雄)http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20121012/429499/』。玄氏も、「顧客満足度を高める上で。顧客から期待が過剰に高まっている状態は危険だ」と言い、ネットコマースの斎藤氏(IT営業のコンサルタント)の「顧客の期待値をあらかじめ下げることこそ、IT営業の仕事だ」との発言を紹介している。もちろん、競合他社がいる進行中の商談で、顧客の期待値を下げる営業活動は実のところ難しい。まずは、自社が可能なことに正直になり、受注が欲しいがための安請負などをしないと言う姿勢が必要との主張である。

顧客企業の担当者に、自社の提案の欠点や自社では対応できない点など、過剰な期待を抑制するためのネガティブ情報を伝えることも重要。前向きな提案ばかりよりも、正直に、お客様のことを真剣に考えている心情を理解してもらえれば、提案者に対する信頼感も増すのではなかろうか。顧客の期待値を適正に保ち、これに応え続けることが顧客の満足を生み、信頼につながる。ユーザー企業との継続的な関係維持のため、改めて満足の仕組みを科学してみてはいかがかとの玄氏の提言である。

私も、過去SEを統括する役割を担っていたが、ほとんどのバースト案件は、売上を重視する営業が無理をしてとってきたものだった。結局受注時お客様にいいことを言って、結果失敗すれば、その顧客を失うばかりではなく、自社にも大きな打撃を与えることになる。玄氏の提言にあるように、「お客様の事前期待のマネージメント」に関して、科学してみることも重要ではなかろうか。

博多の歴女(白駒妃登美さん)講演会のご案内

今年の2月に、当ブログでも紹介しました、博多の歴女白駒妃登美さんが、東京で講演会を開かれます。「11月度致知読者の集い」ですが、致知会員以外でも申し込めます。

過去の当ブログ:①「歴女が語る日本人の生き方」http://jasipa.jp/blog-entry/7270②幸せの種は歴史にある?!http://jasipa.jp/blog-entry/7303

【日時】2012年11月17日(土)
14時00分~16時
【講師】白駒妃登美氏(ことほぎ代表取締役)
【演題】歴史が教える日本人の生き方
【場所】京王プラザホテル南館4階「錦」
(東京都新宿区西新宿2-2-1)
※会費3000円(上記「販売価格」)は、当日会場受付にてお支払いください。
申し込みは「致知出版社ゴームページ」よりhttp://shop.chichi.co.jp/item_detail.command?item_cd=M1211

しらこま・ひとみさんとは――

埼玉県生まれ、福岡県在住。慶應義塾大学経済学部 卒業。大手航空会社に国際線の客室 乗務員として7年半勤務し、退社後、2児の母親となる。現在は「結婚コンサルタント マゼンダ」として福岡で活動中。 独自の視点をもつ歴女ぶりに注目されてから東京・福岡・大阪等で歴史講座を行う。ひすいこたろう氏との共著に『人生に悩んだら「日本史」に聞こう~幸せの種は歴史の中にある』(祥伝社)。

過去のブログ②は上記共著本に関してのブログである。紆余曲折を経ながら(子宮がんも経験)、人の生き方の神髄に行き着き、それがひすいこたろう氏との出会いを生み、今の姿がある。歴史上の人物を通して日本人の特性、生き方を説く白駒さんの東京での講演はめったになく、私にとっては待ちに待った機会である。前日は姫路で「新日鉄広畑システム部門OB会」があり、ゴルフと懇親会があるが、翌日講演会に間に合うように帰るつもりである。

冲中一郎