顧客の期待値を下げるIT営業

昨年5月に諏訪良武氏の「サービスサイエンス」を紹介し、お客様の事前期待を把握し、そして期待を上回る実績を出すことによって、お客様を繋ぎとめることが出来ると言った(サービスに関する“事前期待”についてhttp://jasipa.jp/blog-entry/6387)。その中で、「お客様の期待はやればやるほどキリがなく高まっていく。サービス会社は常にサービスレベルを上げていかねばならないが、それでは会社はつぶれる」、だから「お客様の事前期待のマネージメントが必要」と紹介した。

10月16日のITproで次の表題の記事に目が止まった。『顧客の期待値を下げる“IT営業”、「満足の科学」のススメ(by 日経コンピュータ玄忠雄)http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20121012/429499/』。玄氏も、「顧客満足度を高める上で。顧客から期待が過剰に高まっている状態は危険だ」と言い、ネットコマースの斎藤氏(IT営業のコンサルタント)の「顧客の期待値をあらかじめ下げることこそ、IT営業の仕事だ」との発言を紹介している。もちろん、競合他社がいる進行中の商談で、顧客の期待値を下げる営業活動は実のところ難しい。まずは、自社が可能なことに正直になり、受注が欲しいがための安請負などをしないと言う姿勢が必要との主張である。

顧客企業の担当者に、自社の提案の欠点や自社では対応できない点など、過剰な期待を抑制するためのネガティブ情報を伝えることも重要。前向きな提案ばかりよりも、正直に、お客様のことを真剣に考えている心情を理解してもらえれば、提案者に対する信頼感も増すのではなかろうか。顧客の期待値を適正に保ち、これに応え続けることが顧客の満足を生み、信頼につながる。ユーザー企業との継続的な関係維持のため、改めて満足の仕組みを科学してみてはいかがかとの玄氏の提言である。

私も、過去SEを統括する役割を担っていたが、ほとんどのバースト案件は、売上を重視する営業が無理をしてとってきたものだった。結局受注時お客様にいいことを言って、結果失敗すれば、その顧客を失うばかりではなく、自社にも大きな打撃を与えることになる。玄氏の提言にあるように、「お客様の事前期待のマネージメント」に関して、科学してみることも重要ではなかろうか。

博多の歴女(白駒妃登美さん)講演会のご案内

今年の2月に、当ブログでも紹介しました、博多の歴女白駒妃登美さんが、東京で講演会を開かれます。「11月度致知読者の集い」ですが、致知会員以外でも申し込めます。

過去の当ブログ:①「歴女が語る日本人の生き方」http://jasipa.jp/blog-entry/7270②幸せの種は歴史にある?!http://jasipa.jp/blog-entry/7303

【日時】2012年11月17日(土)
14時00分~16時
【講師】白駒妃登美氏(ことほぎ代表取締役)
【演題】歴史が教える日本人の生き方
【場所】京王プラザホテル南館4階「錦」
(東京都新宿区西新宿2-2-1)
※会費3000円(上記「販売価格」)は、当日会場受付にてお支払いください。
申し込みは「致知出版社ゴームページ」よりhttp://shop.chichi.co.jp/item_detail.command?item_cd=M1211

しらこま・ひとみさんとは――

埼玉県生まれ、福岡県在住。慶應義塾大学経済学部 卒業。大手航空会社に国際線の客室 乗務員として7年半勤務し、退社後、2児の母親となる。現在は「結婚コンサルタント マゼンダ」として福岡で活動中。 独自の視点をもつ歴女ぶりに注目されてから東京・福岡・大阪等で歴史講座を行う。ひすいこたろう氏との共著に『人生に悩んだら「日本史」に聞こう~幸せの種は歴史の中にある』(祥伝社)。

過去のブログ②は上記共著本に関してのブログである。紆余曲折を経ながら(子宮がんも経験)、人の生き方の神髄に行き着き、それがひすいこたろう氏との出会いを生み、今の姿がある。歴史上の人物を通して日本人の特性、生き方を説く白駒さんの東京での講演はめったになく、私にとっては待ちに待った機会である。前日は姫路で「新日鉄広畑システム部門OB会」があり、ゴルフと懇親会があるが、翌日講演会に間に合うように帰るつもりである。

愛知のスーパーにもこんなサービスが!

愛知県豊橋市の「一期家一笑(いちごやいちえ)」という食品スーパーがある。朝日新聞10月8日の4面に「スーパー密着路線」という特集記事があり、その中で紹介されている。記事のリード文には「徹底した地域密着路線で黒字経営を続ける食品スーパー」として紹介され、「消費者の心をつかむのは、客を名前で呼んだり、配達先で電球を変えたりといった‘お金に代えがたいサービス’」で、全国の地域スーパーの希望の星として注目を集めているそうだ。

客と店員の大半は店から500㍍圏内に住むご近所さん。「あら、田中さん、いらっしゃい。この間のナスはどうだった」、このような会話が店員とお客の間で交わされる。10年前に近隣に大手スーパーが進出、立て続けに近隣のスーパー3社が閉店に追い込まれた。「一期家一笑」の杉浦店長は悩んだ末にたどり着いたのが「地域になくてはならないスーパーにあること」だった。近所付き合いを深めるために、年中、子供料理教室や餅つき大会などの行事を開催、店員は7割の来店客の顔と名前を覚えるまでになったと言う。5年前から力を入れているのが高齢者向け宅配。そして配達時のモットーは「ついでの頼まれごとも大切にする」。電球や電池の交換、段ボールの回収などもやる。「将来は冷蔵庫の中身まで把握し、食生活の助言をすること」と言い切る。

生き残りをかけて、大手スーパーは規模拡大路線をとる。しかし地域の中小スーパーは、規模ではなく付加価値を追い求める。「一期家一笑」の他にも、100種類の惣菜で有名な仙台の「主婦の店さいち」や、産直青果が売りの東京多摩地区の「福島屋」も黒字経営を続けている。

今年の2月に当ブログで紹介した町田市の「電化のヤマグチ」も地域密着型で成功した事例だ(http://jasipa.jp/blog-entry/7295)。別のブログで紹介した日産プリンスの営業マンも同じような考え方でトップ営業となった(http://jasipa.jp/blog-entry/7882)。

IT業界も、ますます競争が激しくなること必至である。我々中小ベンダーは、大規模ベンダー以上に、お客様に対する付加価値で差別化していくことが求められる。お客様のニーズの把握、お客様への接し方など、異業種の情報も参考になる。

冲中一郎