自慢の友達「書道家黒田賢一君」

27日の朝日新聞夕刊に恒例の書道展の紹介が7面全面に掲載されていた。「第57回現代書道二十人展」(1月2日~8日)だ。いつもお正月に上野松坂屋本館で開催されているが、私の記憶ではこれまで百人展だったように思うが、今年は二十人展になっていた。その中に、小・中学同級生の「黒田賢一君」の名前があり、作品も紹介されている。大阪や東京での書道展でも毎年登場しているが、彼の話は、2~3年前にも、NSDの社内向けブログにも掲載したことがある。かな文字では、日本でもトップクラスの書道家との評判だ。

小学校時代、村の公民館で、お寺の坊さんに習字を習いに行っていた仲間であり、またお互いの家で遊んだ友人でもある。そんな彼が、今では書道家のトップになっている。故郷自慢でもあり、私としても自慢の友達だ。中学・高校では書道と縁が切れていたが、市役所に勤めた後、何か教養をということで書道を習うことにしたそうだ。師事した先生も良かったと思うが、21歳で日展入賞というから凄いと思う(習い始めて2~3年で!)。私の結婚披露宴(25歳)で、ご列席の皆さんの席に置く「名前」を書くのを、彼に頼んだが、快く引き受けてくれ、今でも新郎・新婦用に書いてもらったものは記念に保存している(三角形のマッチ箱に書いてもらった)。

同じ場所で、同じ坊さんに、一緒に習っていた仲間が、日本の書道家のトップに、一方私は会社でも「悪筆」で有名なほどに。当時の同級生でも、彼がこんなに有名人になるとは誰も思っていなかったと思う(賢ちゃん、ゴメン)。師事した先生も良かったと思うが、彼の「素直さ(先生を信じる)」や、「集中力」、「実行力」などが今の彼を作り上げたのではないかと思う。兵庫県文化賞受賞時(H15年)の彼の紹介文の一部だ。

「もう、この頃は取りつかれたようにかな文字に夢中になっていました。かな文字というと、女性的というかナヨナヨとしたイメージがありますね。普通かなは曲線ですが、私は強さのある直線が主体の、いわば男性的なかな文字を書きたかったんです。そんな強さがあるかな古筆の関戸本古今集、一条摂政集から知り得るものをすべて学ぼうとしました。古筆を自分の体に覚えこませるのが『型』だとすると、それをいったん捨て去り、そこに自分の血が加わって作品からしみじみと匂いがにじみでるようになったのが『形』ではないかと私は思っています」線情を直線化し、流麗ですっきりとした余白美を追求する「大字かな」を中心とした作品の数々で、黒田さんは現代的で明快な動きを持つ独特の世界を完成させました。「書は線質と余白の芸術と言われます。池大雅は『描かない白を描くために一番苦労する』と言っていますが、私も省略と白、つまり余白が美しい作品が一番良い作品だと思いますね」書という芸術への深く熱い思いは、ときに哲学的で難解とも思える含蓄の多い言葉となって、黒田さんの口から次々と飛び出してきます。しかし、黒田さんの口調はどこまでも気さくで穏やか。温かな人柄がじんわりとこちらに伝わってきます。

「男性的なカナ」をとの思いを持って、取りつかれたように夢中になってやった。「今を真剣に、大事に生きる」との基本を実行できた彼は、併せ持った人間力で運をも引き寄せたと言える。

書に興味ある人は是非、行ってやってください。

あなたはなぜITエンジニアなんですか?

昨日(26日)のITpro Enterprize記事の中で表題の記事に目が止まった。日経SYSTEMSの池上俊也記者(日経SYSTEMS創刊以来の担当を離れる際、最後の特集として書いたもの)の記事である (http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20121225/446381/?ml)。

今の仕事にやりがいや喜びを持つためには「志」が必要で、多忙の中でも是非とも「ITエンジニアという職業の意義や目的・目標」を考えてみることの提言だ。池上氏は、ITエンジニアと言うのは魅力が多いと言う。その理由を3つ挙げる。

  • 1.ITが生活・社会・企業のインフラとなっている今、それを支えていると言う使命感や充実感はITエンジニアでないと得られない。
  • 2.職種や専門分野は多岐にわたり、多様性が求められるだけに活躍するチャンスに溢れている。
  • 3.周りをあっと驚かすような価値を、他の業種・職種ではそう簡単に生み出せない。

この主張の正当性はともかく、ITエンジニアをやっている今、このような認識をした上で、如何に個々人が「志」をもつかが重要になってくる。池上記者が、業界を代表するITエンジニアの志を取材して回った結果、トップエンジニアの志とは下記のようなものだったと言う。

  • ●ITで世界を変えたい
  • ●みんなと達成感を味わいたい
  • ●どこでも通用意する私でありたい
  • ●多くの人の助けになりたい
  • ●最新技術に挑戦し続けたい
  • ●プロジェクトで自分を高めたい
  • ●価値あるアーキテクチャを生み出したい

トップエンジニアは、このような志を心に刻み、行動に移しているのだろう。皆さん元気で前向きで。多忙なはずなのに、それを多忙と感じない。むしろ自分に与えられたチャンスと捉え、活躍する舞台がドンドン広がる。そのため、多くの人が彼らの基に集まり、協力する。従って成果はどんどん上がる。まさに志がエネルギーとなって、正のスパイラルを創りだしている。

2012年はもうすぐ終わり、新たな年を迎える。年の初めに、「志」について考えてみては如何だろうか?今の仕事に喜びとやりがいをもつために、そして自分の人生を有意義なものにするために・・・。

東日本大震災の時、「無私の経営力」を発揮した企業

11月に『日本型「無私」の経営力~震災復興胃に挑む七つの現場(グロービス大学院田久保善彦著、光文社新書)』と言う本が出版された。一過性の話ではなく、ストック情報として後世にも伝えたい話としてグロービス大学院在学中の生徒と一緒に取材を重ね本の出版に至ったそうだ。

搭載企業は下記7社(本の「はじめに」より)。

  • ヤマトホールディングス㈱:現地での物流支援活動や、荷物1個につき10円で合計140億円を超える寄付を実施(2011年度)。当ブログでも「クロネコヤマトのDNA」で紹介(http://jasipa.jp/blog-entry/7953)。
  • 富士フィルム㈱:津波で海水を被った写真を洗浄する技術の開発と、大規模な戦場ボランティア活動を実施。加えて関連会社が地域の除染活動に貢献。
  • 富士通㈱:被災地域へパソコンやクラウドシステムを提供し、NPOと連携したプロジェクトを展開。在宅医療システムを構築。
  • ㈱東邦銀行:被災直後から迅速に払い戻しを行い、他の金融機関との協力関係をいち早く構築。
  • ㈱みちのりホールディングス(岩手県北バスグループ、福島交通グループ):原発周辺地域から住民を移送し、ホテルを避難所として開放。観光を通じた復興を目指し、ボランティアツアーを実施。
  • ㈱八木澤商店:全社員の雇用を維持するとともに、「地域全体経営」を構想。
  • 一般財団法人KIBOW:産官学のリーダーが発足させて震災支援活動。被災地のトップや有志達を集めたイベントを数多く開催。「夜明け市場」など、被災地での新たな取り組みの発足につなげる。

『「利益より地域や顧客に対する愛情」(皆さんのお蔭で今がある。恩返しする時と)、リーダー又は現場の強い責任感・使命感(すべてを無くした方々にとって唯一の思い出としての写真を、写真の会社としての責務として取り戻すべき)、様々な形で発揮されたリーダーシップ、従業員の会社を思う心、企業理念の浸透、普段からの経営と現場の相互理解と信頼,自社が社会に提供している価値の理解など様々な要素が影響しあいながら、本当にすばらしい活動が各地でなされた』と著者は、あとがきで言う。著者が言う「無私の経営力」は、上記要素が日頃から備わっていることを言うのだろう。

東邦銀行では、本人確認なくても10万円以下の払い出しを可能とした。頭取の「“事故を起こさない”ことよりも“被災者の役にたつこと”を優先せよ」との指示があり、スムースに実施できたと言う。被災者との信頼関係も日頃から出来ていることもあり、残高以上の払い出しを受けた分もすべて回収できたと言う。銀行の真心が、被災者の心にも通じたのだと思う。すばらしい日本の美質と言え、後世にも言い伝えられる話だと思う。

このような社会貢献活動の結果、自分の会社の社会へ提供する真の価値・使命をあらためて認識(宅配便が社会に必須のインフラ、写真の持つ意義など)でき、従業員の会社に対する愛情・思いが強まり、CSR活動の重要性を会社としてもあらためて感じることとなったと言う。

冲中一郎