感動や行動を促す源とは?

メルマガなどのインターネット記事で、幸運や感動に出会う源の話があった。一つは、脳科学者茂木健一郎氏の「偶然の幸運は、楽観的な人に訪れる(President Online)」(http://president.jp/articles/-/9758?utm_source=0625)。もう一つは、以前時々ブログにもUPした感動プロデューサー平野秀典氏のメルマガ「腑に落とす感動」(6月25日)。

茂木氏は、「人間の脳は、もともと楽観的に出来ている。楽観的なくらいがちょうどよく、そのような状態で初めて十全に機能する」と言う。「あとどのくらい生きるか」とか、「宝くじに当たる確率は?」などの質問にどう見ても楽観的な答えが返ってくることが多い。それだけ脳はずうずうしい。それは生きる上で必要だから「脳内の楽観回路」は進化してきたそうだ。不確実性に満ちた世の中で不安や恐怖に捉われ悲観的になっていたのでは、行動することが出来ない(フロージングと言う)。行動しなければ、思わぬ発見や、偶然の幸運(セレンディビティ)に出会うこともできない。成功するために大切なのは、「根拠のない自信」と、「それを裏付ける努力」と茂木氏は言う。自信を持つのに根拠などいらない。出来ると最初から分かっているのならば、あえてチャレンジする意味もない。すべてのイノベーションの出発は「できる」という「根拠のない自信」を持つ点にある。感情や気分を生み出す脳の古い部位は、理性を司る脳の新しい部位よりも、むしろ先を行く。まずは感情が生れて、それを理性が整理し、追随する。楽観的に行動してこそ人生は面白くなる。

一方平野氏は「知っているだけで腑に落としている人が少ないから、夢や願望を実現している人が少ない」と言う。「頭」よりも「心」よりももっと深い「腑」に落とした時に生まれる感動こそが人生を変える作用点になる。知っていることと腹落ちすることの違いは、自分の感覚から検証してみた結果、「知る」は「好奇心」が刺激されますが「腑に落ちる」は「感情」が刺激される。知ったら実践してみる。すると、知と体験が調和して何らかの感情が生まれる。 嬉しいや楽しい、ワクワクやウキウキ、といった理屈を超えたプラスの感情が、知と体験が調和していることを教えてくれ、「生きている実感」を味わうことが出来る。そこから、感動という感情が生まれ、人生の満喫度がプラス方向へ向き始めると平野氏は言う。「感動こそ、人生を創る土台」というのが感動プロデューサー平野氏の主張だ。

インターネットの普及で知を獲得する機会は大幅に増えた。知識過剰気味の中で、知を行動に移すことが感動に繋がり、幸せにつながるとの両氏の主張には耳を傾ける価値があると思う。知は行動が伴って初めて花開く可能性が出てくる。

奈落に叩き落された人の言葉に感動!

今年の2月のブログでも紹介(http://jasipa.jp/blog-entry/8483)した「命の授業」講演家腰塚勇人氏の言葉が、最近FcaeBookで紹介された。前回のブログでは別の言葉を紹介していたが、この言葉もすばらしいと思うので伝えたい。

「いつも笑顔でいよう」
「いつも感謝をしよう」
「周りの人々の幸せを願おう」

毎日の小さな幸せに気付けるようになる

自分が如何にまわりの人たちから
助けていただいているかが実感できる

中学校の体育教師の時にスキー事故で首から下が全く動かない重症に会う。勝ち気な性格で、人には絶対負けない「常勝」が信条で、人の助けを受けるなんて毛頭考えていなかった。入院先でも看護婦の言葉にカチンと来て睨みつけたりしていた。ある時、看護婦の涙ながらの自分を思ってくれる言葉に一晩泣きとおした翌朝、見舞いの花を見て、「花のように生きたい」と。生き方を「常勝」から「常笑」に、顔は動くから「笑顔」に、口も動くから「ありがとう」と言おう。心も使えるから「周りの人が1日元気に笑顔で過ごせるよう」に祈ろうって。自分が如何にまわりの人たちから助けて頂いているかが実感できるようになった。

スキー事故にあったのが2002年、今は教職も辞し、自分の経験を周囲の人に伝え元気を与えることが出来ればと、2010年ごろから「命の授業」と称して全国を回られている。これまで約400回実施し、15万人近くの方々にお話されたとの事だ。腰塚氏は「今が一番幸せ」と言う。

五体満足な自分も、今生かされている不思議を実感し、周りの人のお蔭と思う心を持っていきたいと切に思う。会社勤めでも、同じ心をもってすれば、プロジェクトもすべてうまくいくと思うがいかが?結果、皆が幸せになれる。

不格好経営(南場智子)

こんな表題の本の広告が新聞に載っていた。何とも標題が意味深で早速買って読んだ(日本経済新聞社発行、2013.6.10)。1昨年、ご主人の病気(ガン)が理由で、突然社長を退任したことでも驚いたが、マッキンゼーでコンサルタントとして順調に出世階段を上っていた南場氏が、突然1999年(36歳)に起業し、2012年には2000億円の売り上げをあげる大会社に成長したその経営の実態のすさまじさにも驚いた。まえがきにも「読者が一緒に“DNA号”に乗ってジェットコースターのような展開をともに体験できるよう、事実をそのまま伝えることを重視した」と書かれているが、まさにジェットコースター経営の実態がよくわかる。

ニアショアに出していたシステム開発が、報告では順調と聞いていたがふたを開けると何もできていなかったとか、たびたび大きな危機に直面するなど南場氏が「わが社の歴史はひどい!世間さまにここまでアホをさらけ出していいのだろうかと思うほど、ひどい」危機がたびたび登場する。しかし、その失敗をバネに、より強い体質にしていく。先の例では、「システム開発を他人に任せているのではだめ」と超優秀なプログラマーを捜しだし社員にする。

「優秀な人を集めて、任せる」ことで人を育成していく。創業時から一貫して、どんな人手不足のときでも、人材の質には絶対に妥協せず、すごい!と思える人、尊敬できる人を徹底的に南場氏自身が口説き落とす(現社長の守安氏もオラクル出身だ)。そんな人と一緒にいると自身の気持ちも高揚し、怠惰な自分も最高に頑張れると言う。マッキンゼーの同僚2人を口説き落として立ち上げたが、直ぐ仲間を増やしたくて、二人に要求したのは「自分より優秀な人」。いつ正社員になったか分からないが、現取締役の川崎氏はDeNAに出入りしている時にモバオクや、後に大ヒットのモバゲーなどを作った天才アルバイトだったとか。優秀な人間にとてつもなく大きな勝負が出来るという選択肢を与える。

南場氏はビジネス書も読まない(結果論だから)。MBA資格はとったが、必要ない。コンサル経験は邪魔になるのでunlearning(学習消去)していると言う。が、日頃は優秀な部下に任せつつ、いざとなったら社長としての意思決定をする。その際「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ことが重要との考え方だ。そのために、リーダーに最も求められるのは「胆力」だと言う。南場氏は、写真で見る雰囲気からも、社員とは喧々諤々の議論もしながら、叱咤する時は思いっきり叱咤し、褒めるときは褒める人ではないかと思う。裏のない、正直な方だから、部下も思いっきり社長とぶつかる。しかし、信頼関係が凄いのだと思う。そうしながらDeNA社員としてのオーナーシップ精神を養い、自ら成長する。離職率も低いが、出戻りも多いとある。

この本は、一気に読めた。私にはこんなことは出来っこないが、ベンチャー成長企業のすさまじさと、その成功要因を垣間見ることが出来た。やはり南場氏は普通の人ではない。

冲中一郎